Vol. 539(2012/3/11)

[今日の勉強]デジタル新聞をスクラップする

私は動物関連の新聞記事をスクラップしています。そのスクラップはこの「いきもの通信」や東京タヌキ探検隊!にいかされています。日常からの情報収集は大切です。スクラップした記事はスキャナで読み込んでJPEG画像として蓄積してきました。このスキャンの作業はけっこう面倒なものなんですよね。
朝日新聞は昨年5月からパソコンやiPhone、iPadなどで新聞を購読できるサービスを開始しました。その時はちょうどiPad2を買おうとしていたところでもあり、これからは紙の新聞を読まなくてもすむ時代になるかもしれないと思いました。また、デジタル版の記事を保存すればスクラップの代わりになると考えました。そこで、すぐにデジタル版の購読も始めました。
結局のところ、今でも新聞は相変わらず「紙」で読んでいます。紙の夕刊の記事はデジタル版では翌日の朝刊でないと読めないという時間差問題があるためです。また、デジタル版と紙面では記事本数が違うかもしれないんじゃないか、という不安もあります。まだ今の段階では「紙」の方が安心して読めるのです。

デジタル版の開始当初はデジタル版と紙面とで採用された記事が異なっていたことがありました。特に、展開の速い事件ではそういうことがよくあったようです。現在でもまれにデジタル版に掲載されていない記事があることに気付きます。実を言うと、紙の新聞も全国どこでも同じ内容ではありません。地域によって掲載される内容は異なります。特に社会面はそうです。また、同じ地域であっても、流通時刻の都合などのために「版」が異なる新聞が混在することになります。新聞の紙面の上方に「14版」などと記されていることで異なる版があることが確認できるでしょう。そのため、紙の新聞でも版によって掲載記事が違ってくることは普通にあるのです。
朝日新聞は土曜日に別刷り「be」が付いてきますが、これも当初はデジタル版がありませんでした。しばらくしてからデジタルでも読めるようになったので、この「be」だけはiPad2で読んでいます。「be」は記事が固定されているので、電子版と紙面との食い違いがほぼ無いからです。
2012年になってからはデジタル版で全国の地域面の記事も読めるようになりました。ただし、紙面をそのまま画像で表示するだけのもので、読みやすいとは言えません。しかもパソコン版だけの機能です。全国一斉にデジタルで作業できる環境が整っていないためにこのような半端なことになっていると推測しますが、いつかは他の記事体裁に合わせてほしいものです。地域面は全部読んでいるとさすがに時間がかかるので、関東地方のみスクラップにして、関西と九州は主にタヌキ関連(野生食肉目動物)の記事のみスクラップ、ということにしています。
2012年2月現在は、電子版と紙面(東京版)の間の不一致は非常に少なくなっています。サービス開始当初に比べるとずいぶんと改善されました。

デジタル版の記事はパソコンでも読めますので、データを保存することも可能です。これならスクラップの代用もできます。
どういう形式で保存すればいいのか検討した結果、いろいろなデバイスで表示することができ、テキストデータとしても利用できるPDF形式が最も使いやすいと判断しました。ありがたいことにデジタル版の記事にはそれぞれ「印刷」ボタンがあり、それをクリックすると余計なナビゲーションや広告が除外された印刷専用のレイアウトを印刷することができます。それをPDF形式で保存するのです(当初は「印刷」ボタンはなく、WEBページをまるごとPDF保存せざるをえなかった)。
最初のうちはデジタル版に掲載されていない記事がそこそこあり、スキャナーを使わざるをえませんでしたが、それも徐々に減少し、現在ではスキャンしなければならない紙面記事は月に10本以下ぐらいにまで減少しました。おかげでスキャナーの使用頻度がかなり少なくなりました。

これまで、スクラップはジャンル毎に分類してフォルダの中に入れていました。その分類法は次の記事で書いています。

Vol. 244(2004/11/7) [今日の事件]動物事件学への招待/その2 より現実的な分類方法

デジタル版ではこの方法はやめ、日付ごとにスクラップしています。重要なキーワードはファイル名に入っているので、ジャンル毎に分類しなくてもファイルを探す時に困ることはありません。

朝日新聞デジタル版は私にとってはもう十分に役立っています。また、サービス内容も、iPadなどのアプリも少しずつ改善されてきています。いずれは紙の新聞が不要になる日が来るかもしれません(ただ、デジタル版には新聞広告がほとんど無い、折り込み広告が無い(笑)という大きな欠陥があるので、本当に紙が不要になるのはずっと先のことかもしれません)。


朝日新聞にはデジタル版のみに掲載され、紙面には掲載されないコラムがあります。デジタル版向けの特別サービス、というところでしょう。その中で私が楽しみにしているのが、海洋生物研究家の倉谷うららさんの「海洋生物・ながぐつ日誌」です(月2回のペースで掲載)。海の生き物というと魚が主役ですが、倉谷さんがとりあげるのは魚ではなく無脊椎動物です。海の無脊椎動物はほとんどの人にとっては無縁なもの、私でさえ「名前は知っているけれど」…という世界です。ほとんど知られていない生物の話をわかりやすく親しみやすい文章で紹介するこのコラムは、「朝日新聞デジタル版を購読して得したなあ」と思わせるに値するものです。
(元編集者である私が文章をほめるなんて珍しいですよ。倉谷さんの文章は、話題のチョイス、一般の読者にもわかりやすい書き方、文章の流れの良さ、科学的に的確な表現といった点を評価できます。)
倉谷さんは「海洋生物研究家」という肩書きであることから、大学や研究所に勤める「プロ」の研究者ではありません。しかし、経歴やコラムの内容から専門教育を受けた人であるのは明らかです。一部のメディアでは「フジツボのマニア」と紹介されたりしたようですが、とんでもない! この人は素人ではなく、明らかに「科学の目」を持っています。倉谷さんのような面白い人材がプロとしての活動の場が与えられていないのは非常に残念なことです。


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