いきもの通信 Vol.543[東京タヌキ探検隊!・今日の事件]皇居外苑タヌキ事件 

Vol. 543(2012/6/10)

[東京タヌキ探検隊!・今日の事件]皇居外苑タヌキ事件

さて、今年もタヌキ事件の季節になりました。タヌキ事件はたいていどれも大したことはないのですが、「いきもの通信」では事件の記録の意味も兼ねて、なるべく取り上げるようにします。

2012年5月31日、午前10時過ぎ、皇居外苑の祝田橋付近でタヌキが目撃されました。皇居外苑とは皇居の東南側の「皇居前広場」として知られる場所です。
タヌキは、お堀の外側の歩道の植え込み、内堀通りに接した場所にいたようです。通報を受けた丸の内署の警察官が来たところ、タヌキは石垣の隙間に逃げ込みました。

皇居外苑は環境省皇居外苑管理事務所が管理しています。お堀の両側の石垣も皇居外苑の管轄下になるようで、タヌキが逃げ込んだ場所も含まれます。そのため、今回のタヌキの扱いは警察ではなく同管理事務所にバトンタッチされたようです。今回のタヌキは前日も目撃されていたとのことです。
こういう事件が起こるたびに言っていることですが、そもそも野生のタヌキの扱いは警察の仕事ではありません。法律的にもタヌキを捕獲する必要はまったくありません。

そのタヌキですが、首輪をしているのです。この首輪は調査用の発信器とのことで、誰かがタヌキ調査をしていることを示しています。報道では皇居外苑管理事務所がタヌキ調査をしていた、となっていますが、それは初耳です。皇居吹上御苑(皇居の「本体」)、東御苑でのタヌキ調査は宮内庁と国立科学博物館が共同で行っていたはずですが、それとは違うのでしょうか? 私は皇居でのタヌキ調査には無関係ですのでこの辺りの現状についてはまったく知りません。が、どの報道でも「外苑管理事務所が調査」となっていますので、その通りなのでしょう。
この発信器は、電波を発信するようになっており、アンテナを使ってその位置を探ることができます(最近はGPS発信器の場合もあるかもしれません)。野生動物調査では一般的な物で、テレビの動物番組などでご覧になった方もいるのではないでしょうか。発信器自体は小さな物ですが、確実に動物の体に固定しなければならないので、タヌキ大の動物ならば首輪として装着するのが普通です。
ニュースの写真・映像では首輪の確認が難しいですが、一部の映像では首輪をはっきり確認できます。

今回のタヌキは、まず捕獲されようとしました。タヌキが隠れた場所の出入口に箱ワナを設置して捕まえようとしました。ニュース画像の中に、石垣に箱状の物をくっつけているものがありますが、それが箱ワナです。
調査中のタヌキならば、捕獲せずに放置しておいた方がいいはずです。もしかしたら、発信器の電池が切れているので、首輪を回収したかったのかもしれません。
映像を見ると、タヌキが隠れた石垣は、水面に近い位置で、地面からはずっと下です。タヌキがどうやってそこまで降りていったのか、報道では述べられていません。タヌキは垂直に近い石垣を降りるような器用なことはできません。一度水中に飛び込んだのでしょうか?
タヌキは箱ワナには入る様子はなく、皇居外苑管理事務所もすぐに方針を切り替えたようで、その日の内に石垣を登るための木の板を斜め上方に向けて(スロープ状に)設置しました。これもニュースの写真・映像で確認できます。

今回のタヌキについて、報道の中には「体長30cm」とするものがありましたが、これは小さすぎる数値です。映像からは、このタヌキが成獣であるのは明らかです。毛並みは冬毛から夏毛に切り替わる途中で、ぼさぼさした感じです。
幼獣ならばまだ生後1ヶ月前後のはずで、大きさも明らかに小さいし、やっと巣から出てこれるかどうかという段階です。
人間の目視による計測能力はあまりあてにならないものなのです。

このタヌキ、その後どうなったかは続報がないため不明です。
皇居にタヌキがいるということは、今では謎でもなんでもなく、確かな事実です。もはや「日本の常識」でしょう。皇居の自然環境は複数のタヌキ(おそらくは数十頭レベル)を養えるだけの許容量があるのです。
とはいえ、皇居前広場一帯は植物が少ないためタヌキにとってはちょっと暮らしにくいはずです。そのため、今回のタヌキは皇居前広場に生息しているのではなく、吹上御苑または東御苑方面から出てきてさまよっていたタヌキなのではないかと推測されます。それを確かめるには発信器による調査の結果が待たれます。
マスコミの続報を期待したいのですが、残念ながらそこまではやってくれないでしょうね。


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