いきもの通信 Vol.555[今日の事件]広島市でクロバネキノコバエ大発生 

Vol. 555(2012/12/9)

[今日の事件]広島市でクロバネキノコバエ大発生

クロバネキノコバエというと、害虫駆除業界ではよく知られた昆虫です。メジャーではないものの遭遇する確率は高い方の部類です。一方で、一般にはほとんど知られていない昆虫です。Wikipediaでさえ載っていないほどのマイナーっぷりです(2012年12月現在)。

先日、そのクロバネキノコバエについてネット検索で調べ物をしていると、今年2012年に広島県の広島市、府中町でクロバネキノコバエが大発生していたようです。

広島市ホームページ「クロバネキノコバエについて」

ちょっと古いニュースになってしまいましたが、今回はそのクロバネキノコバエについて取り上げます。


クロバネキノコバエは、「ハエ」とつくことからもわかるように、「双翅目」つまりハエやカの仲間です。では、ハエか、それともカなのかというと、分類上はカの仲間になります。「ハエ」という名前にもかかわらず(笑)(これはトリビアですので覚えるほどの重要なことではありません)。

似た名前の「キノコバエ」というグループがありますが、クロバネキノコバエと同じカの仲間ではあるものの別グループです。形態も生態も似ていますが同一ではないので注意してください。

なお、クロバネキノコバエもキノコバエも正確には「クロバネキノコバエ科」「キノコバエ科」というグループのことであり、それぞれ複数の種が含まれています。

クロバネキノコバエの特徴は、幼虫が土の中に生息するということです。朽ち木に生息することもあります。これはつまり、屋外では普通に生息している昆虫であることを意味します。

名前にある「キノコ」とは、キノコの傘(子実体)のことではなく、地中に広がっている菌糸のことです。つまり、クロバネキノコバエやキノコバエの幼虫は地中の菌糸を食べて成長するのです。ただし、クロバネキノコバエに限って言うと、幼虫は菌糸だけを食べているわけではなく、動植物の腐食物あるいはその他の有機物なども栄養としているらしい…というのが私の推測です(発生状況からの推測)。菌糸だけに依存しているわけではないようです。

クロバネキノコバエは困ったことに屋内で繁殖することもあります。例えば、鉢植えの土です。オフィス内にクロバネキノコバエが現れたならば、第一に疑うべきは観葉植物(の鉢の土)で、対策はそれらの植物を鉢ごと撤去することです。

一般家庭でも、室内の鉢植えには注意しなければなりません。また、昆虫の飼育ケースの土で繁殖することもあります。カブトムシやスズムシなどを飼っている方は注意してください。クワガタムシの幼虫を育てている方は菌糸ビンを使っていることがあるでしょうが、そこでも繁殖することがあります。

クロバネキノコバエは体長が数mm以下で、肉眼ではクロバネキノコバエかそうでないかを判別することは困難です。プロの場合は実体顕微鏡で判別しています。あるいは、観察の経験があるならば少なくとも5倍のルーペがあれば判別することは可能です。いずれにせよ素人にはその昆虫の名前を知ることすら難しく、資料も非常に少なく、問題解決を難しくしています。相談をするならば、害虫駆除業者または自治体の衛生害虫・衛生を扱っている部署になります。その昆虫の死体をできるだけ多く集めて、ビニール袋などに入れて渡せばその正体を調べてくれるでしょう。

最後にクロバネキノコバエの対策を紹介します。

成虫、つまり羽があって飛んでいるクロバネキノコバエならば、市販のハエ用エアゾール剤で十分です。おそらくゴキブリ用でも効くでしょう。

クロバネキノコバエが屋内で発生しているのか、屋外から来たのかも見極めましょう。屋内の場合、土に注目して探してください。特定の鉢のまわりに死体がたくさん落ちている場合、そこが一番あやしいことになります。が、クロバネキノコバエは明るい場所に集まる性質もあります。別の場所から飛んできた可能性も考慮してください。一番いい解決方法は、鉢植えなどを全部屋外に出してしまうことです。屋外に出せない場合は土をすべて取り換えるぐらいはしなければなりません。

クロバネキノコバエが屋外から来る場合、その対策はまず不可能です。なぜなら土はどこにでもある普遍的なものだからです。周囲を樹木に囲まれたような場所では手の打ちようがありません。こればかりはあきらめるしかありません。

殺虫剤の中には、吊り下げ型のものや設置型のものがあります。これらの商品はすべての昆虫に効果があるわけではありません。製品には対応している昆虫の名前が記載されていますので、購入前に必ずチェックしてください。そして残念なことですが、そのような製品でクロバネキノコバエに対応しているものはまずないはずです。ひょっとしたら少しは効果があるかもしれませんが、被害を食い止めることができるほどではありません。


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