いきもの通信 Vol.556 [今日のいきもの]セミという不思議な昆虫 

Vol. 556(2012/12/23)

[今日のいきもの]セミという不思議な昆虫

映画情報誌「ピクトアップ」(2013年2月号、#80)に宮本が登場しています。宮本が映画に出たわけではありません。同誌の連載記事「松ケントーク」で俳優の松山ケンイチ氏(つまり今年の大河ドラマ「平清盛」主役)と対談したのです。その内容のほとんどはセミについてです。なぜセミなのかは雑誌を読んでいただくか、ネット検索で調べていただくとして、そのセミについて対談記事では十分に書かれていないことを今回はあらためて書きます。セミについてよく考えてみると、昆虫の中でも独特な存在だということに気づきます。


まず、セミは昆虫の中でも最大音量で鳴きます。鳴く虫はたくさんいますが、その音量が最も大きいのはセミです。あの小さな体からどうやって大音量を出しているのでしょうか。
おおざっぱな例えだと、それはバイオリンに近い仕組みと言えます。バイオリンのボディ(胴体部分)は簡単に言ってしまうとただの「木の箱」にすぎません。しかし、ボディは弦の振動を共鳴させて音量を大きくする働きがあります。ボディがなければ貧相な音しか出せないでしょう。
セミの腹部にも「共鳴室」という空洞があります。筋肉の細かい振動が共鳴室を通過することで大音量になるのです。
セミの中にはツクツクホウシのようにメロディーを奏でる種類もいます。音の長短や音高は腹の動かし方によって変化させています。ツクツクホウシは特に「音楽的な」昆虫だと言えると思います。

セミのもうひとつの特徴は、昆虫の中では異常に長寿ということです。
昆虫の寿命は大半が1年以内です。長くても数年というところでしょう。ある種の小型のハエなどは卵から成虫になり死ぬまでわずか数週間というものもいます。ところがアブラゼミは5〜7年の寿命があります。アメリカには「13年セミ」「17年セミ」といった種類もいます。セミは異常なほどの長寿の昆虫なのです。
さらに特異なのは、その一生のほとんどが幼虫の期間であるということです。成虫になってから死ぬまではせいぜい数週間です。卵を産めば成虫の仕事は終わりです。これはつまり「セミには老後が無い」とも言えます。「セミには年金問題はない」ということでもあります。
昆虫は全般に幼虫の期間が長いものですが、その中でもセミは幼虫の期間が極端に長い昆虫です。

では、セミの幼虫の時には地中で何をしているのでしょう?
セミの幼虫は地中ならどこでもいいのではなく、樹木の根にしがみついて樹液を吸っています。暗い地中でじっとしがみついているのだろうか、と想像してしまいますが、樹液が出やすい場所、出にくい場所というのはあるでしょうから、ある特定の部分に幼虫が集結している可能性はありそうです。そうすると、幼虫が押し合いへし合いしているのかもしれず、地中とはいえ実は結構にぎやかなのかもしれません。
「ちょっと、押すなよ!」
「そこどきなさいよ!」
とか、地面の下でもめていたりして…。

1本の木の下にはどれぐらいのセミの幼虫がいるのでしょうか。アブラゼミで考えてみましょう。
夏の終わりにサクラの木を見上げると、1本の木に10〜20個もの抜け殻がぶら下がっていることがあります。ということは、その年はそれだけの数の幼虫が羽化したと考えていいでしょう。アブラゼミの幼虫の期間は5〜7年なので、平均で6年としましょう。すると、20個×6年=120頭もの幼虫が地下の根にぶら下がっていると推計できるわけです。1本の木に100頭以上! 地中はずいぶんと混雑しているのです。大木だとさらに数倍は見込めるので、ちょっとした地下マンションのようなものです。

セミの幼虫というと、何年も地下でさびしくじっとしていると思われがちですが、実際は意外とにぎやかにひしめき合って生活しているのかもしれません。


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