いきもの通信 Vol.557[東京タヌキ探検隊!]タヌキ、ハクビシン、アライグマ、その分類的関係 

Vol. 557(2013/2/24)

[東京タヌキ探検隊!]タヌキ、ハクビシン、アライグマ、その分類的関係

東京タヌキ探検隊!の研究対象はもちろんタヌキですが、それ以外の動物も扱っています。対象となる動物を並べてみると、タヌキ、ハクビシン、アライグマ、ニホンアナグマ(アナグマ)、キツネ、ジャワマングース、チョウセンイタチ、ニホンイタチ
となります。
これらの動物は体型も体格も似ている動物です。特にタヌキ、ハクビシン、アライグマ、アナグマはよく混同されます。外見が似ているということは、分類上でも近いということでしょうか。今回はこれらの動物の分類上の位置づけを見ていくことにしましょう。

これらの動物はすべて哺乳類であり、その中の「食肉目(しょくにくもく)」というグループに分類されます。
食肉目の動物の共通の特徴は、
 犬歯が発達していること
 4足歩行であること
 ツメがとがっていること(平爪や蹄(ひづめ)ではない)
です。これでだいたいの姿をイメージすることができるでしょうか。
具体的に代表的な動物の名前を挙げてみましょう(ちなみに全種類を挙げると270種以上になります)。

イヌ科 タヌキキツネ、オオカミ(イヌ)、ジャッカル、リカオン
クマ科 ツキノワグマ、ヒグマ、ホッキョクグマ、ジャイアントパンダ
アライグマ科 アライグマ、ハナグマ
レッサーパンダ科? レッサーパンダ(1種のみ)
イタチ科 チョウセンイタチニホンイタチ、オコジョ、テン、ミンク、アナグマ、スカンク、カワウソ、ラッコ
ジャコウネコ科 ハクビシン
マングース科 ジャワマングース、スリカータ(ミーアキャット)
ハイエナ科 ブチハイエナ
ネコ科 イエネコ、オオヤマネコ、ライオン、ヒョウ、トラ、チーター
アシカ科 アシカ、オットセイ、トド、オタリア
セイウチ科 セイウチ(1種のみ)
アザラシ科 ゴマフアザラシ、モンクアザラシ、ゾウアザラシ

「科」は「目」の下の分類です。
赤字は東京タヌキ探検隊!が対象としている動物です。

アシカ科、セイウチ科、アザラシ科は4足歩行とは言い難いのですが、骨格的にはちゃんとした4本脚です。アシカ科はああ見えてちゃんと4足歩行しています。これらは陸上生活していた食肉目から分岐して進化した動物であることははっきりわかっています。が、これらは海にすむ食肉目ですので今回の話からは除外することにしましょう。

陸上にすむ食肉目に話を戻しますと、東京タヌキ探検隊!の調査研究の対象である動物は科の分類では見事にばらけていることがわかります。外見が似ているからといって分類上でも近いかというと、それほどでもない、ということになります。
タヌキがイヌ科だということに驚く方もいるかもしれませんが、タヌキの顔はよく見るとイヌ顔です。イヌ科の特徴は「鼻(口吻)が長い」ということなのです。また、夏毛のタヌキはまさにイヌそのものの姿をしています。キツネもイヌ科です。つまりタヌキとキツネとイヌとオオカミは分類上はとても近い関係なのです。
アナグマは太った体格をしていますが、ああ見えてもイタチの仲間です。カワウソやラッコもイタチ科です。イタチ科は種類が多く60種以上もいます。食肉目の中では最も成功したグループと言えます。
ジャコウネコ科は「ネコ」と名前がついていますがネコ科とは別物で、マングース科に近い動物です。以前はジャコウネコ科とマングース科はひとつにまとめられていたほどです。ジャコウネコ科は日本にはハクビシンだけが生息しているのでなじみがあまりない動物かもしれません。
東京タヌキ探検隊!の研究対象にはクマ科、ネコ科が含まれていません。クマ科は体が段違いに大きいのでタヌキなどとは明らかに違う動物です。それに、クマは研究者も多いので私がでしゃばる必要もありません。
ネコ科は、日本に生息している野生ネコ類がツシマヤマネコ、イリオモテヤマネコだけしかいません。これらは生息地が限定されていますので、私がわざわざ調べる必要もありません。それに、これらの動物にも研究者がいますしね。

東京タヌキ探検隊!がなぜタヌキ以外の動物も対象にしているのかというと、「誤認が多いから」というのが最大の理由です。タヌキ、ハクビシン、アライグマを誤認する、あるいは名前がわからない、という例は珍しくありません。動物に詳しい人なら「識別なんて簡単だ!」と言うでしょうが、みんながみんな動物の判別に詳しいわけではありません。そこで、東京タヌキ探検隊!ではホームページにわざわざ判別するためのページを設けています。実はこのページがホームページ内では最も多く閲覧されているページだったりします。このページを見れば大半の謎は解明するようですし、それでもわからない場合は動物の姿形、行動の様子から私が判断しています。
タヌキ以外を対象にしている理由のもうひとつは、「タヌキと比較するため」です。タヌキとハクビシンはどう違うのでしょうか。例えば分布は同じなのでしょうか。食べるものは違うのでしょうか。行動する場所に違いがあるのでしょうか。こういったことを比較することで、それぞれの動物の特徴をさらにはっきりとさせることができるのではないかと考えたのです。現在、タヌキとハクビシンについては情報量も多いためいろいろな比較ができるようになっています(毎年の報告書をご覧ください。分布の違い、行動場所の違いなどがわかるでしょう)。その他のアライグマなどについては情報数がまだまだ少ないために比較分析はできませんが、今後の情報の蓄積で成果が得られるようになるかもしれません。

タヌキ以外も対象にしようと考えたのは2006年頃からですが、正式に対象としたのは2008年からです。その理由は、タヌキの目撃情報の中に明らかにタヌキではない動物が混じっていたからです。タヌキは屋根に登ったりはしませんし、電線を歩いたりもしません。それはタヌキではない動物、ハクビシンであるのは明らかでした。ハクビシンの目撃情報は多くはないものの、無視できるような数ではありませんでした。それならばタヌキ以外の目撃情報も集めようと考えたのでした。それぞれの目撃情報を集めれば生態などの違いが明らかになるかもしれないと当時から考えていたのです。
ハクビシンを対象に加えるならば、他にも加えておくべき動物がいます。アライグマは既に鎌倉市で繁殖しており、東京都内に本格的に進出するのも時間の問題でした。今の内から情報収集しておけば将来役に立つだろうと予想されました。タヌキと外見が似ているアナグマも当然対象にすべき動物です。生態が似ているキツネも対象にすることにしました。アナグマとキツネはもう23区内に生息していないと推測されていました。イタチとマングースについては「大きさが近いから」という理由で対象にしています。どちらもハクビシンとの誤認が多そうだ、ということもあります。

なぜタヌキは都会生活に適応できたのでしょうか。アナグマとキツネはどこまで郊外に行けば生息しているのでしょうか。タヌキ以外の動物を調べて比較することでタヌキそのものを理解できるようになる、と私は最初から確信していました。そしてこの考えは間違っていなかったようです。部分的にでも成果は出ましたし、調査研究の枝葉も大きく広がったからです。


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