いきもの通信 Vol.559 [今日のいきもの]冬のカ 

Vol. 559(2013/3/17)

[今日のいきもの]冬のカ

2013年3月6日の朝日新聞(東京版)に「冬なのにカに刺される、なぜ冬にカがいるのか」という記事が掲載されていました。この記事はちょっと説明不足に思えましたので、私があらためて解説しましょう。

冬にもカがいる、というのは都市部ではそれほど珍しいことではなくなっています。ただし、どんな種類のカでも冬にいるというわけではありません。冬に現れるのは「チカイエカ」という種類です。これはアカイエカの亜種とされていますが、お互いの区別はかなり難しいです。外見はどちらも「茶色のカ」です。
夏に草むらなどによくでるのはシマカの仲間で、こちらは「白黒模様のカ」と言えばわかりやすいでしょう。
チカイエカは他のカに比べて低温でも活動できます。そのため冬でもある程度の気温が保たれている屋内なら生息が可能なのです。

カの幼虫は「ボウフラ」と呼ばれることはよく知られています。ボウフラは水中で生活します。つまり水がなければ生きていけません。チカイエカも水があるから繁殖しているのです。その繁殖場所はどこかというと、例えばビルの地下駐車場です。特に機械式(2段構造)の駐車場の場合、下の段に地下水、雨水がたまりやすいものです。その水でチカイエカが繁殖するのです。
あるいは、地下階の湧水槽、雨水槽といった場所(マンホールの下)でも繁殖します。こういった槽は密閉されているようですが、カはちょっとした隙間、例えばマンホールの縁の隙間から出入りすることができます。
地下のチカイエカはエレベーターに乗って上階に運ばれます。マンションでは通路が外気にさらされていることが多いので、エレベーターから先に移動するのはやや難しくなります。オフィスビルは全体が密閉されているので、エレベーターの先の事務所内にも簡単に移動することができます。チカイエカはオフィスビルで問題になる可能性が高いと言えます。
朝日新聞の記事ではマンションでの被害が紹介されていましたが、そのマンションがどういう構造、環境なのか興味があるところです。

記事では地下鉄でも繁殖していることが書かれています。地下鉄のトンネルは、地下水が壁面からしみ出てきて床面にたまる箇所があります。そういう場所は何ヶ所もあるはずで、長い長いトンネルを歩いてすべての水たまりを点検・殺虫剤散布するというのはかなり大変な手間のかかる仕事です。
記事では「東京メトロは年2回、トンネルなどに殺虫剤を散布」と書いてありますが、それではちょっと頻度が少ないようにも思えます。カがいない場所ならばそれでもいいのですが、カが繁殖しているならばもっと頻度は多くしなければならないでしょう。

ところで、カというと吸血です。カが人間や哺乳類の血を吸うのは、産卵のための栄養として利用するためです(ですから吸血するのはメスです)。しかし、地下駐車場にはそんなに人や動物がいるわけではありません。マンホールの中は確実に無人、無哺乳類です。なぜそんな環境で繁殖できるのでしょうか。
カが産卵するためには吸血が必要ですが、チカイエカの場合は吸血しなくても1回産卵ができます。周囲に吸血対象がいなくても繁殖できるのはそのためなのです。まあ、だとしても成長・産卵にはそれなりの栄養が必要なはずで、それをどうやって得ているのかは謎の部分があります。

冬のカはエアゾールなどの殺虫剤でも対処できますが、根本的には建物の地下の繁殖場所で退治することが必要です。これは害虫駆除業者に調べてもらい、駆除してもらうのが最善です。
チカイエカは屋外から来ることはありません(冬ならなおさらです)。ベランダで蚊取り線香をたいても意味はありませんのでご注意ください。


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