Vol. 570(2013/9/22)

[今日の勉強]動物のための労働基準法

ここ数年、ネコカフェなるものが増えてきました。飲食店(喫茶店)でネコを飼っていて、お客とネコがふれあえるという、ネコ好きがもだえ喜びそうなお店です。イヌカフェというのもあるそうですし、ウサギとかヤギとかもあったりで、とにかく何でもかんでもやってみよう、と思いつく人々は後をたたないようです。

ネコカフェの主役はネコですが、ネコも労働者と考えると長時間労働はいけませんし、深夜勤務や残業も避けねばなりません。しかし、労働基準法などの労働関係の法律は人間のためのものであって動物には適応されません。では、ネコちゃんたちは搾取されるばかりなのか!というとそんなことはなく、ちゃんと法律で守られています。
その法律が「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)です。動物愛護法はネコカフェ専用の法律ではなく、飼育動物全般を対象としています。例えば、動物虐待禁止とか、危険動物の飼育とか、そういったことが含まれますが、特に「動物取扱業」について多く割かれています。動物取扱業とは主にペット店のことですが、他にもペットホテル、ペットレンタル、訓練場、動物園なども含まれます。そして、「動物との触れ合いの機会の提供を含む」(第十条)とあるようにネコカフェなど動物カフェも含まれます。

動物の勤務時間については第八条四で「犬又はねこの展示を行う場合には、午前八時から午後八時までの間において行うこと。」と定められています。 無制限に動物を働かせられるわけではないのです。それでも12時間労働というのはきついお仕事ですね。実際には動物の疲労のことも考えると人間並みの8時間労働にすべきでしょう。途中の休憩時間ももちろん与えられるべきです。
「犬又はねこ」に限定されているのがちょっと引っかかりますが、フクロウのような夜行性の動物のことが考慮されているのかもしれません。他の動物であっても、常識的に長時間労働は勧められるものではありません。

勤務条件は労働時間だけではありません。
「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」では飼育施設の設備についても定められています。第三条2(具体例は第二条2で示されている)では次のような設備が必要とされています。


イ ケージ等(動物の飼養又は保管のために使用するおり、かご、水槽等の設備をいう。以下同じ。)
ロ 照明設備(営業時間が日中のみである等当該設備の必要のない飼養施設を除く。)
ハ 給水設備
ニ 排水設備
ホ 洗浄設備(飼養施設、設備、動物等を洗浄するための洗浄槽等をいう。以下同じ。)
ヘ 消毒設備(飼養施設、設備等を消毒するための消毒薬噴霧装置等をいう。以下同じ。)
ト 汚物、残さ等の廃棄物の集積設備
チ 動物の死体の一時保管場所
リ 餌の保管設備
ヌ 清掃設備
ル 空調設備(屋外施設を除く。)
ヲ 遮光のため又は風雨を遮るための設備(ケージ等がすべて屋内にある等当該設備の必要のない場合を除く。)
ワ 訓練場(飼養施設において訓練を行う訓練業(動物の訓練を業として行うことをいう。)を営もうとする者に限る。)


他にも、脱走防止措置やケージの仕様についても定められています。
これらはペット店を主に想定したものですが、動物カフェでもこれと同等の設備が必要になるのは当然です。
必要なのは設備だけではありません。動物取扱業ではお店ごとに「動物取扱責任者」が必要になります。これは都道府県の研修を受講しなければなりません。
こういった決まりごとによって動物たちの職場環境の水準が保たれているのです。

動物カフェ開業にはもうひとつ重要なハードルがあります。カフェ=飲食店は食品衛生法にも従わねばなりません。飲食店でまず求められるのは清潔さです。しかしネコなど動物が店内にいるということは、毛やフン尿だとかも店内で発生するおそれがあり、清潔と両立することが難しくなります。これにどう対応するかははっきりと定められておらず、各保健所の指導に従うことになります。

ネコカフェというのは「喫茶店でネコを放し飼いすればOK」というような簡単なものではなく、上記のようなさまざまな要件が必要となります。自分も開店してみたいという方がいるでしょうが、入念な事前調査を行うことをお勧めします。


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