Vol. 574(2014/3/30)

[東京タヌキ探検隊!]東京都23区のアナグマの状況

皆さん、お久しぶりです。
ながらく「いきもの通信」をお休みしていましたが、やめてしまったわけではありません。昨年(2013年)末からいろいろと忙しく、書く暇が取れなかったのでした。

11月は東京コウモリ探検隊!の報告書の作成、
12月は第5回ニコニコ学会β「研究してみたマッドネス」の準備、
1月は東京タヌキ探検隊!の報告書の作成、
2月、3月は電子書籍の執筆(現時点では未完了)、

と何かしらやっていたのです。
それもようやく終わりそうですので、「いきもの通信」もぼちぼち再開することにします。
電子書籍についてはまたあらためて紹介します。


2014年1月28日放映に放映されたNHK総合テレビ「ダーウィンが来た!」では東京都三鷹市の国際基督教大学(ICU)に生息するアナグマが取り上げられました。
この番組に宮本が登場すると思われた方もいたようですが、残念、私は関係ありませんでした。

もっとも、ICU近辺にアナグマがいるらしいことは以前から知っていました。
その目撃情報はあいまいなものでしたが、ICUはかなり広い林があること、また、西側に野川が接しておりその段丘はアナグマにとって巣穴を掘りやすそうな地形であることなどから、アナグマが生息しているのは確実だろうと推測できました。
三鷹市周辺や東京都23区ではアナグマの確実な目撃情報はなく、ここが東京都心に最も近いアナグマ生息地であると私はずっと思っていました。

東京タヌキ探検隊!が集めたアナグマの目撃情報は全体でも非常に少なく、武蔵野台地でのアナグマの生息情報も長い間これ以外にありませんでした。

ところがその状況が変わってしまいました。
2013年の報告書で報告した通り、2013年1月に大田区からアナグマの目撃情報がありました。目撃者はその動物をハクビシンと思っていたのですが、写真を確認するとアナグマだったのです。

実はそれ以前にもアナグマの目撃情報はありました。しかし、外見や状況からアナグマだと断定することが難しい例ばかりでした。この大田区の目撃情報は証拠写真がある確実なものです。証拠写真はないものの、他のいくつかの例でも地形的にアナグマが生息できそうな場所があります。

私の見解としては、東京都23区内にアナグマが生息しているのは間違いなさそうです。しかし、その頭数や生態はまったくわかりません。もしかしたら絶滅寸前なのかもしれません。
アナグマは日本全体で見れば絶滅の心配はありません。ですが、都会に孤立しているのかもしれないアナグマはどうすべきなのでしょうか?
実態を把握するためにも本格的な調査研究が必要です。

最初の報告から1年以上も経ちましたが、23区のアナグマについての調査の進展はありません。
私(宮本)自身が調査を行うことができればいいのですが、宮本にはそのためのリソース(時間、費用)がありません。目の前に非常に重要な研究対象がいることがわかっているのに、自分では調査研究ができないのはとても残念なことです。
もし、きちんとした科学的調査を行う申し出があれば、私は協力したいと考えています。

この大田区のアナグマについては、2013年10月にNHK「ダーウィンが来た!」の番組スタッフから問い合わせのメールがありました。1月の番組で短時間の紹介がしたいとのことでした。
まだちゃんとした調査研究が行われていない段階なので、具体的な場所がわからないようにしてほしい、と私は返答しました。番組側はいろいろ検討したようですが、結局は取り上げないことになりました。

宮本がNHKと仲が悪いことを知っている人がいるかもしれませんが、今回の件についてはそれとは関係ありません(宮本はすべての取材を拒否しているのではありません)。
ただ、いずれにしても今の段階でテレビ局の無制限な撮影を私は許しません。まず最初にやるべきはきちんとした調査研究です。それはテレビ局の手柄にしてはいけません。
また、テレビ局が撮影したものはテレビ局の著作物になってしまうため、研究目的などでの使用が極めて難しくなってしまうという問題点があります。テレビ局が関わるとかえって調査研究を遅らせることにもなりかねないのです。


[いきもの通信 HOME]