Vol. 582(2014/7/27)

[今日のいきもの]東京・大手町でど根性ヒキガエルに出会った

コウモリ探索をしているとコウモリ以外の動物にも出くわします。サギ類(コサギ、ゴイサギ、アオサギなど)とカルガモが代表ですが、他にも遭遇する動物がいます。

2014年7月7日、この日は日本橋川を起点(神田川からの分岐点、JR水道橋駅付近)から下って行くコースを歩いていました。都会のど真ん中とも言えるルートですが、竹橋辺りまでコウモリを確認することができました。

大手町付近の日本橋川南岸は今年(2014年)4月に「大手町川端緑道」が完成したばかりです。昨年来た時は工事中で通れませんでしたので、初めて通る場所です。
緑道を歩いて行くと、経団連会館の北側辺りで路上に黒いカタマリがあるのに気付きました。その日は雨が降りそうな湿度の高い天気でした。こういう時に現れるのはアイツに違いありません。大きさといい、形状といい、アイツそのものではありませんか…。
そう、そいつはアズマヒキガエルだったのです。しかも大きいぞ。体長10cmはありそうです(成長した個体としては普通の大きさ)。
アズマヒキガエルは東京都23区で最も数が多いカエルです(多分)。他のカエルはめったに見ませんので多分、最多です。


次に、かっこいい構図の写真を。現場から東方向を見たもので、正面奥の道路は日比谷通り、左手に日本橋川、右手に経団連会館があります。



このアズマヒキガエル、日本橋川から来たのかというとそうではありません。日本橋川は3面コンクリート張りで、河岸は垂直の高い壁です。ここを登ってくることは不可能でしょう。
カエルというと水の中にいるイメージがありますが、アズマヒキガエルはあまり水に依存しないカエルです。卵からオタマジャクシの時期は水が必要ですが(これはほとんどカエルも同じです)、成体になれば少々水が少ない環境でも生きていくことができます。そのため、東京都23区の住宅地でも出くわすことが珍しくありません。今回の現場の場合、植え込みの中でも十分生きていくことが可能なのです。

では、このアズマヒキガエルはどこから来たのでしょうか?
可能性のひとつは、「どこかから運ばれてきた」ということです。
この緑道は数カ月前に完成したばかりですが、植栽はどこかから運ばれてきたはずです。アズマヒキガエルは冬眠する時は土の中に潜り込むことがあります。植物を運ぶ時に根を包む土といっしょにカエル君も運ばれてきた、という推理です。目が覚めたら全然知らないところに来ていてびっくりしたことでしょう。
もうひとつの可能性は、「皇居から来た」ということです。
発見地点から皇居内堀まではたった300mしかありません。アズマヒキガエルならこの距離を移動することは十分にありえることなのです。問題は、内堀通り(8車線もある!)をどうやって渡ってきたかです。真夜中に横断したとしても、自動車にひかれなかったのはかなりの強運ではないでしょうか。
Googleマップをさらによく見ると、内堀通りのすぐ外側に三井物産ビルの池(通称:カルガモ池)がありますね…。ここは確か、カルガモが子育てすることで有名な池ですよね。なるほど、アズマヒキガエルはここで繁殖しているのかもしれません。ということで、「カルガモ池から来た」が最有力説になりそうです。カルガモ池で繁殖しているならばこの近辺には数十頭ものアズマヒキガエルがひそんでいるかもしれません。

いずれにしてもこのカエルは大都会の中でサバイバルしている大冒険家と言っていいでしょう。私から「ど根性ヒキガエル」の称号を贈りたいと思います。

ちなみに「ど根性ガエル」とは、1972〜1974年に放映されたテレビアニメです。私が見たのはもちろん再放送ですよ!(笑) 昭和的なスラップスティックコメディーです。科学的にありえない!などと言ってはいけません。
作品の詳しい説明はWikipediaなどを読んでいただくとして、主人公ひろしのシャツの中にいた平面ガエル「ピョン吉」は大きさといい色といい、アズマヒキガエルとしか思えません。しかも主人公とピョン吉が出会ったのは石神井公園だとか(Wikipediaによる)。ますますアズマヒキガエル説が強くなります。
シャツにリアル・アズマヒキガエルがプリントされていたりしたらいいだろうなあ…と思う私なのでした(笑)。


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