[東京コウモリ探検隊!]アブラコウモリは狭い空間を飛べるのか?
アブラコウモリについての説明では「空が開けた場所を飛ぶ」と普通書かれています。例えばWikipediaによると、「河川などの水面上や田畑・駐車場などのオープンスペース、あるいは街灯の近くなどを、ヒラヒラと不規則に飛び回り、飛翔昆虫を捕食する。」とあります。
これは事実であり、私自身の観察経験からも確認できます。
では、アブラコウモリは狭い場所を飛ぶことはないのでしょうか?
こういう疑問を持っていても、ではどうやって確認すればいいのか難しいところです。コウモリを捕まえてきて実験するわけにもいきません。
私は今年も東京都23区のアブラコウモリを探索していますが、その疑問を確認する機会が訪れました。
その日の探索場所は世田谷区を流れる丸子川でした。「川」と名がついていますが、江戸時代に掘削された人工の用水路(六郷用水の一部)です。そのため川幅はとても狭いです。
この時歩いたのは国道246号線から谷沢川合流点までの区間ですが、川幅は5mにもならないぐらいです。水路は深くなっていますが、これは洪水対策として掘りこまれたのでしょう。
こんなところにコウモリはいるのか? なんてことは実はその時は考えもしませんでした(笑)。アブラコウモリは普通に飛んでいたのですから。観察を続けているうちに、これはよく考えるとすごいことなのでは、と思ったのでした。
こんな狭い空間でもアブラコウモリは確かに普通に飛んでいました。開けた場所でなくても問題はなかったわけです。
この日は丸子川・谷沢川合流点から谷沢川をさかのぼりましたが、この谷沢川の下流も同じような狭い水路になっています。そこでもアブラコウモリは飛んでいました。
これらの川では、コウモリが水路の中をまっすぐ飛んでいく様子が確認できました。谷沢川では同じ固体が水路を行ったり来たりしていました。これはバットディテクターと肉眼で確認できました。
ところが同じ丸子川でも、谷沢川合流点から下流側ではアブラコウモリの数は非常に少なくなります。川幅は変わらないのですが、川底が浅くなっており、それが原因かもしれません。あるいは水質に変化があるのでしょうか。検証が必要です。
また、丸子川の最下流(田園調布四丁目交差点から下流)は開口部を半分以上ふさいだ「半暗渠」になっているようで、見かけは幅が2mにも満たない水路になってしまっています。さすがにそこにはアブラコウモリはいませんでした。
話は谷沢川にもどりますが、谷沢川をさかのぼると等々力渓谷に入ります。等々力渓谷は東京都23区でおそらくただひとつの深い谷間地形です(神田川のお茶の水付近も深い谷になっていますが、あれは人間が開削した人工地形です)。左右両岸は樹木が立ち並び、川の上空は樹木の枝葉で覆われています。等々力渓谷も一種の「狭い空間」と言えます。
では、こういう場所でもアブラコウモリは飛ぶのでしょうか。
もちろん、飛んでいました。人間の頭上近くを飛ぶこともあれば、樹冠近くや樹上を飛ぶこともありました。
狭い空間といっても川の上空にはそれなりの空間があります。丸子川に比べてもはるかに大きな空間ですので、ここを飛んでいるのは不思議ではありません。
以上のように、アブラコウモリは少々狭い空間でも飛んでいます。アブラコウモリ自体が小さいですから、狭くても楽々と飛べるようです。
ですのでアブラコウモリの観察では小さな水路も忘れずに調べましょう。
アブラコウモリは「空が開けた場所を飛ぶ」だけでなく、「狭い空間を飛ぶこともできる」ということも事典には記しておくべきでしょう。