Vol. 596(2017/4/30)

[今日のテレビ]けものフレンズ

(以下の文章は2017年4月30日時点のものです。)

この冬、「けものフレンズ」というアニメ番組が話題になりました。放送期間中にNHKで取り上げられたほどで、最終的には今年2017年1月〜3月の深夜アニメの中で最も成功した作品となりました。
実は私もこの番組を最終回まで見ており、ゲーム版もプレイしていたので何か書かずにはいられない、というわけです。

けものフレンズプロジェクト 公式サイト


けものフレンズはもともとはスマホゲームでした。このゲームは2015年3月からサービスが始まり2016年12月に終了しました(つまりテレビ放映前にゲームは終了しています)。
登場するのは美少女化した動物たち「フレンズ」(1人でもなぜか複数形のようです)。なぜ動物が人間化したのかその仕組みははっきりとは説明されていません。動物が人の姿になるというのはアニメやマンガでは以前からある「様式」ですし、最近では軍艦や刀までも擬人化されるぐらいですから今さら珍しいものではありません。
ゲームはフレンズたちでチームを作って、謎の存在セルリアンを倒していくアクションゲームです。アクションといってもプレーヤーはタイミング良くスキル(技)を発生させるぐらいなので難易度は低い方だと思います。

私がこのゲームを気に入ったのは、キャラクターデザインが秀逸だったからです。
このような動物キャラクターもの(ゲームに限らずマンガ、アニメも)を私が評価する時の基準は「タヌキが正しく描かれているか」です。東京タヌキ探検隊!隊長として当然の基準です。たいていのタヌキキャラは「間違ったタヌキ」になってしまっており、とても評価できるものではありませんでした。
ところが、けものフレンズでは「正しいタヌキ」になっているではありませんか。顔の模様、耳の形、尾の色、四肢が黒い、うむ、ちゃんとタヌキになっているよ! 近年稀に見るすばらしいデザインです。

「けものフレンズ タヌキ」で画像検索する

他の動物も外見的特徴をおさえており、なるほどなるほどと納得できるものでした(中にはちょっと違うぞと思うものもありましたが)。
ということもあり、ゲーム版はサービス終了までやり続けていました。ただ全キャラクターをゲットできなかったのが残念でした…。あと10種ぐらいだったのに…。

ストーリーは主人公とガイドのミライさんとサーバル他のフレンズたちがジャパリパークのあちこちを旅するというものでした。ゲーム版でもサーバルは主役の扱いで、トラブルメーカーとして大活躍でした。基本的に明るく楽しいストーリーで、敵であるセルリアンも時にはユーモラスな存在でした。

このゲームでは登場キャラクターが非常に多いのも特徴です。確か350種前後もあったかと記憶しています。ただ、チョイスに偏りがあるのが難点といえば難点でした。特に食肉目(ネコ目)ネコ科が優遇されすぎでした。その反面、齧歯目(ネズミ目)、ウサギ目、霊長目(サル目)、モグラ類などはあまり選ばれていないなど不遇な扱いもありました。
フレンズは1キャラクターが動物分類上の1種に対応している、というわけではないのもちょっとどうかと思われました。
ライオンの仲間だけでも
 ライオン
 バーバリライオン(亜種)
 ケープライオン(亜種)
 トランスバールライオン(亜種)
 マサイライオン(亜種)
 ホワイトライオン(突然変異)
が登場します(あれ?インドライオン(亜種)はいないの?)。

トラでも
 トラ
 アモイトラ(亜種)
 アムールトラ(亜種)
 ホワイトタイガー(突然変異)
 マルタタイガー(突然変異)
 ゴールデンタビータイガー(突然変異)
といった具合で、ちょっと優遇しすぎです。
そういえばオオカミもやたら仲間が多かったです。

さらには白虎、朱雀、九尾のキツネ、隠神刑部など伝説上の動物まで登場してきて、ちょっと収拾がつかない様相になっていったのでした。このあたり、もうちょっと計画的に、交通整理しながらチョイスすべきだったのでは?と思います。

さて、けものフレンズにはマンガ版もありますが、私はまったく見ていませんので説明省略。ゲーム版とは設定が少し異なるようです。
ゲーム版、マンガ版、テレビ版ではフレンズたちの頭身が違っているのも面白いところです。これはメディアの特徴を踏まえると当然のことかもしれません。例えば画面が小さいスマホ向けには、顔が大きくなるような頭身の低いキャラクターデザインが向いている、ということです。

けものフレンズのテレビアニメ化の話はかなり前からあったように記憶していますが、私はあまり期待していませんでした。ゲームはまったく話題にもならず、テレビアニメも成功するとは思えませんでした。また、ゲームを原作にする場合、設定をいろいろいじらなければならず、ゲームプレイヤーを納得させるのが難しいものです。私も、ゲームを楽しんだから、まあ、アニメも最後までつきあうか、という感じでした。ゲーム版も終了し、アニメも終わればけものフレンズもお終いになるわけですから最後まで見届けようと思ったのです。


2017年1月、いよいよテレビアニメが始まりました。
第1話を見ての感想は微妙なものでした。出会いあり、冒険あり、バトルありの展開ですが、大げさな演出はなく、淡々とした印象でした。ただ、ゲーム版とは明らかに設定が異なっており、主人公は記憶喪失、ラッキービーストって何者? いったいどういう状況かわからない謎を残して第1話は終了しました。うーん、まあ、来週も見るか。
このテレビ版は3DCGで製作されていることはすぐにわかりました。普通のアニメのようにベタ塗りっぽく処理していますが、まあこれは誰でも気付くことです。モデリングはよくできている…けど、動きがちょっと気になるカットもあるかな…。
(後から見直してみると、意外と細かい仕草もしていたりすることがわかりますが。)
(オープニングの中で登場するジャパリバスのタイヤが回転していないことには最初から気付いていました。これにはがっかり(苦笑)。BD版では修正されたようです。)

第1話を見て次週以降は見なかった視聴者は多かったようです。深夜アニメは他にもたくさんありますから、面白くなければ切り捨ててしまうのは当然の判断です。
第2話以降もゆるゆると物語は進んでいきますが、劇的な展開があるわけでもありません。逆に言うと安心して見られる番組ということですが。

ところが2月中旬頃から番組の外で妙な動きが始まります。
2月15日、NHKテレビ「ニュースチェック11」で、けものフレンズの影響で動物園に行ったという投稿がSNS上で増えたことが紹介されました。放映中の民放アニメがNHKで取り上げられることがびっくりです。この頃にはネット上ではけものフレンズの話題がかなり増えていたようです。
特に「すごーい」「わーい」「君は○○が得意なフレンズなんだね」といった番組中の独特の言い回しが流行しました。
また、人類滅亡を示唆するようなセリフや状況が紛れ込んでいることから、人類滅亡後の世界を描いているのでは?といった解釈もネット上でにぎわっていました。
一方、俳優の星野源が担当するラジオ番組でオープニング曲をかけたこともあってか、この曲も大人気になりました。 私からすると、なんでこんな方向で盛り上がるのだろう?と不思議に思うばかりでした。まあ、動物モノの人気が出るのはいいことなのですが。

ちなみに、ゲーム版からつきあってきた者としては、このテレビ版が鬱展開(登場人物が次々と死に、悲劇的な結末を迎える)や終末モノ(人類が滅亡する、あるいは滅亡後のストーリー)になることはありえないことははっきりしていました。当然エロ展開もありえません。変な方向に進む心配はまったくしていませんでした。むしろ、こんなファミリー向け番組をなんで深夜にやってるんだろう?と思ったぐらいです。
ゲーム版とテレビ版では、登場するキャラクターの性格が違うので、ちょっととまどう感じもありましたが、時代や設定が違っていますのでこれは当然のことでしょう。その違いも楽しむべきポイントと考えればいいわけです。
例えば、ハシビロコウはゲーム版では「デカ(刑事)長」でした。なにしろ何時間でもじっと立っていられるのだから張り込みには最適、しかも強面。まさにデカっぽいフレンズです。テレビ版では衝撃の発言をするものの、目立たない立ち位置なのが残念でした(それでも人気キャラのようです)。
ツチノコはゲーム版では貫録ある親分肌でした。しかも目からビームを放つという強力技を持つキャラで人気もあったはずです。テレビ版ではなんだか挙動不審で頼りないフレンズになっていました。マーゲイはゲーム版ではツンデレ、テレビ版ではアイドル(PPP)マニアとかなり違った感じになっています。
アライさん(アライグマ)とフェネックはゲーム版もテレビ版もほぼ同じです。主人公一行と別行動で旅をするいう役回りも同じでした。
博士(アフリカオオコノハズク)と助手(ワシミミズク)もゲーム版とほぼ同じですね。
ゲーム版ではサーバルへのツッコミ役だったカラカルが、テレビ版ではついに登場せず。
ペンギンアイドルユニット「PPP」はゲーム版では4人、テレビ版では5人になっていました。

そうこうするうちに3月も終わり、テレビ版は続編への期待を持たせて番組終了となりました。終わってみると(深夜アニメとしては)大ヒットという結果。これを1月時点で予想できた人はいなかったでしょう。
セルリアンとは?なぜ動物が美少女化したのか?などといった謎はゲーム版でもテレビ版でも結局説明されませんでした。多分、製作スタッフもあまり深く考えていなかったんじゃないかと思います。考えたらいろいろ破綻しそうですしね(^_^;)。
ゲーム版のセルリアンは微生物の形態を模倣していましたし、フレンズの形態を模倣したセルリアンまで現れました。ですので何らかの設定はあったようですが、テレビ版のセルリアンはそんな感じでもありませんでした。

なぜアニメがこんなに人気が出たのか、ネットやマスメディアではいろいろな論が出ていますが、私にはさっぱり理由がわかりません。脚本や作画などが飛び抜けて優れていたというわけではありません。他の同時期の深夜アニメ作品が不出来だったわけでもありません。本当に不思議な現象と言うしかありません。

なお、アニメ版のヒットの最大の貢献者は監督の「たつき」氏であるのは間違いありませんが、ここでは詳細は省略します。詳しくはネット検索して調べてみてください。


さて、けものフレンズはこの後も人気が持続するでしょうか?
元々のゲーム開発会社はやる気があるようには見えません。ゲーム、マンガ、アニメと多メディアで展開するならもうちょっとうまく連携をとるべきでした。アニメ開始の前にゲームが終了するなんて、普通はありえないですよ(そんなに人気がなかったのでしょうかね?)。
完全復活ではなくても、ネットワークに依存しないスタンドアローンでいいのでゲームを復活してほしいです。このままではゲーム版は黒歴史になってしまいます! ゲーム版サーバルの活躍をもう一度!

けものフレンズはグッズ展開が非常に少ないのも残念でした。これはゲーム版の頃からそうでした。まあ、それほど話題になっているわけでもないのにグッズを作ったところで在庫の山になってしまうのは当然の結末なので、踏み切れないのも仕方ありませんが。ただ、キャラクターたちは魅力があるし、ここまで話題になったのだからどんどんグッズは出してほしいところです。
4月末現在、続々とグッズが発売、発売予定となっています。夏ごろまでにはけもフレグッズが店頭に大増殖する予感が…。
とりあえず「ねんどろいど サーバル」は買いだ(もちろん予約済み(笑))。

番組の外への効果を期待する向きもあるでしょう。
いろいろな動物が出てくるから教育効果があるのでは? 動物に関心を持ってもらえるのでは?といった期待です。
ただ多分、それほど効果はないだろうなとは思います。そもそも深夜枠は「大きなお友達」向けの番組です。つまりマーケットの規模が大きいわけではありません。子ども向け、家庭向けにはあらためて戦略を立て直した方がいいのでは、と思います。新しいアニメ番組は次から次へと作られているわけですから、それに対抗してどうやって関心を持続させるかが大問題になるでしょう。

タイアップ効果が期待できるのは動物園です。せっかくのチャンスを有効に使えるかどうか、企画力が問われます。さっそく東武動物公園では4月下旬からコラボ企画が始まりました。各動物の飼育場所にフレンズのパネルが展示されたり、アライさんの園内放送があるとのことです。オリジナル缶バッチもあるのか! それはいいかも…。他の動物園も続いてほしいものです。最初の日曜日は大勢のフレンズが、じゃなくてファンが訪れてどったんばったん大騒ぎだったとか。
また、他の動物園でも同じようなタイアップ企画が行われるとのことです。
なお、人気のサーバルはどこの動物園にもいるわけではないので前もって調べておくことをお勧めします。他にも気になる動物がいれば調べておきましょう。

番組で動物に興味を持った人が多くても、動物園訪問(つまり聖地巡礼)よりも先の段階に進むことは難しいでしょう。その先の段階は、本物の野生動物を見るために海外に行くか、動物学研究そのものの領域になってしまいます。これはさすがにハードルが高すぎです。それでも動物への理解という基盤が広がることは期待したいです。

え? 東京タヌキ探検隊!はどうするの、って? まあ、何かしてみたいのではありますが…(キャライラストの使用料って高いのかなあ…?)。現時点では、けものフレンズのおかげでホームページへのアクセスが増えたということもありません。テレビ版ではタヌキやハクビシンは登場しませんでしたしね。アライグマは主要キャラクターの1人ではありましたが、東京タヌキ探検隊!としては外来動物を特別に取り上げるというのはやりにくいことです。
ちなみにアブラコウモリはゲーム版にもテレビ版にも登場しませんので東京コウモリ探検隊!はなにもやることがありません。アブラコウモリのフレンズも作ってくれませんかね。


番組が終わった後のの4月時点でもけものフレンズ関係の動きは続いています。

テレビ朝日「ミュージックステーション」ではオープニング曲「ようこそジャパリパークへ」が歌われました。(ちなみにアニメはテレビ東京等で放映されましたので別の系列で取り上げられたということになります。)

NHKではサーバルを取り上げたテレビ番組「ダーウィンが来た!」を深夜に再放送しました。この放送はなんと2007年12月16日、つまり10年前に放映されたものでした。
これには前段があります。3月、ネット動画にけものフレンズの映像とダーウィンが来た!の音声をミックスした偽番組がアップロードされました。別々の番組のはずなのに見事な編集の結果、まるで本当のテレビ番組のようになっており、話題になりました。NHKが再放送を決めたのもこのネット動画の影響があったからに違いありません。
このネット動画は4月末時点でも削除されていませんので、興味がある方は検索してみてください。

新宿マルイアネックスでは4月にけものフレンズの期間限定ショップが開催されたのですが、大人気であっという間に商品が売り切れ、店の棚が空っぽになるという事態になってしまいました。

テレビ版のBDは「書籍の付録がBD」(つまり書店流通、本屋で売っている)という珍しい形式で、価格も安めになっています(書店流通では値引きされないという販売側のメリットがあります)。4月下旬には第1巻と第2巻の合計が12万部を突破したことが発表されました。アニメとしてはかなりの大ヒットと言える数字です。

そしてまさかの舞台化も発表されました。公演は6月です。
さらに、新作ゲームの予定も発表されました。
とどまるところを知らない勢い、いったいどこまで展開していくのか、まったく先が読めません。私もこの動きを追いかけていこうと思います。

※アニメ第1話はニコニコ動画で無料公開しています。テレビでも再放送するんじゃないかとの噂です。

※アニメ版についてはWikipediaで妙に細かい解説が既に掲載されています。


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