[ON THE NEWS]
1999年3月29日、愛知県赤羽根町に母子と見られる2頭のクジラがうちあげられた。母は発見された時、既に死亡。弱っていた子は愛知県美浜町の南知多ビーチランドに引き取られたが、4月1日死亡した。母クジラは海岸で保管されていた時に何者かによって体の一部が切り取られた。このクジラはオウギハクジラ類らしい。
(SOURCE:朝日新聞(東京版)1999年3月30日、31日、4月2日)[EXPLANATION]
何となく面白そうそうだな、と初回の話題として取りあげてみましたが、調べてびっくり、いきなり珍種の登場です。Mesoplodn(オウギハクジラ属/アカボウクジラ科)はクジラ目(クジラ、イルカ)の中でも、目撃例、標本、生息数などが少なく、非常に謎が多い種類です。十数種類が同定されていますが、学名の付いていない種がいますし、未発見の種類もいると推測されています。
今回捕獲されたクジラの種名がはっきりしないのもそのためです。新聞写真と手元の資料から推測すると、コブハクジラ(Mesoplodon densirostris)ではないかと思われますが、素人判断ですので信用しないでください。
哺乳類はよく研究されている種類で、現在では新種が発見されることはほとんどないのですが、一生を海ですごすクジラ目の中にはこのMesoplodonのような謎がまだ残されています。人間は陸上世界をほぼ制覇しました。しかし、海はほとんどが未知の領域。私たちの知らない動物が無数に存在する世界なのです。(REFERENCE:完璧版クジラとイルカの図鑑/著:マーク・カーワディーン/発行:日本ヴォーグ社)
(REFERENCE:海の哺乳類 FAO種同定ガイド/原書刊行:国際連合食糧農業機関(FAO)/発行:NTT出版)