Vol. 10(1999/7/11)

[OPINION]自然はそこにある

「自然観察」というと、山や海などに遠出しなければいけないと考えている人がいます。「だって近所には自然がないから」…そうでしょうか?

都会の住宅地でもスズメ、カラス、ドバトはいつでも見られるでしょう。よく注意して観察すればヒヨドリ、キジバト、シジュウカラ、ツバメ、メジロといった鳥も見つかるはずです。昆虫もたくさんいるでしょう。夏になればチョウやセミやバッタが、秋の夜にはコオロギなどの鳴く虫がいます。
もしそこが大都会のど真ん中だとしても、自然はあります。例えば私は新宿に極めて近いところでコゲラ(キツツキ)やオナガも見たことがあります。渋谷の駅前でアオスジアゲハがひらひらと飛ぶのを見たことがあります。「都会には自然がない」ということはありません。確かに生息しづらい面もありますが、そこには確かに野生の動物たちがいるのです。そして、野生動物がいるということは、それらを支える植物もあるということになります。「都会の自然は貧弱」かもしれませんが、「自然が無い」というのは正しくはありません。新宿副都心で自然観察することも可能だと私は確信しています。
自然は遠くに存在するものではありません。今、目の前にある風景、それが自然なのです。例えそこが高層ビルの林立する大都会でも、あちこちに緑地があるはずです。そして、そこには野生動物たちも間違いなく生息しているのです。

ここまで「いきもの通信」を読まれた方は何となく気付かれたかもしれませんが、ここでのテーマの一つは「隣接動物」(人間生活に非常に近い所に生息する動物。私の造語)です。「都市動物」もこれに含まれますが、「隣接動物」は都市以外の場所まで含むのでもう少し広い意味になります。いずれにせよ人間のそばにいる動物、ということですね。どこかのジャングルや山奥に行かなければ見ることのできない稀少な動物の話もしないわけではないのですが、もっと身近な動物を取りあげていきたいと思います。


「いきもの通信」も10回目を迎えました。今回は事件や本から離れて一般的なお話でしたが、このような話は10回の区切りごとに書いていく予定です。

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