Vol. 13(1999/8/1)

[今日の事件]東京都、ゴミの早朝回収を試行

都会のカラス退治は成功するのか?

[ON THE NEWS]
東京都は8月から繁華街をモデル地区に指定し、ゴミを午前8時までに回収する「早朝収集」を試行する方針を固めた。街の美観、交通渋滞の緩和、カラス対策が主な目的となる。
(SOURCE:朝日新聞夕刊(東京版)1999年7月30日)

[EXPLANATION]
私は生まれも育ちも福岡市です。10年前東京に来た時、まず驚いたのは、「ゴミを昼間回収するんだ!」ということでした。え?そんなの常識ですって? それは東京の常識です。福岡市ではゴミは深夜に回収するものでした。夕方になると、町内に何ヶ所かあるゴミ集積所にゴミを出し、深夜にゴミ収集車がそれを回収してまわる、という方式です。東京ではゴミを出す場所もばらばらで、これにも驚きました。さて、東京に来てもうひとつ驚いた事があります。「なんでカラスがこんなに近くにたくさんいるんだ?」——おわかりだと思いますが、このゴミをねらってカラスが集まるのです。

東京ではしばしばカラスの被害が話題になります。そして、カラス撃退にいろいろな人がいろいろな方法を試しています。ですが、私には撃退方法は初めからわかっていました。
「ゴミを深夜回収すればいいのに。」
ほんとに、なぜ深夜回収しないんでしょう。深夜回収は福岡市の他にも大阪市のような大都市で実行されています。東京で不可能な理由はありません。では、なぜ実行しないのか? 私の結論はこうです。「ようするに、カラス対策の優先順位はきわめて低いんだろうな。」
あれほどマスコミを賑わせるカラス被害にもかかわらず、行政は本腰を入れようとしない。…結局、行政は住民の声を聞いていないんだな、と私は思うのでした。

と、いうところへ今回の方針です。早朝回収、なるほど少し前進です。ですが、カラス対策としては効果はどうでしょうか。カラスの行動パターンから推測される結果を考えてみましょう。
ケース1 カラスは早朝回収地区の外へ移動する
エサがなくなればエサのある場所へ移動する。当然の事です。早朝回収地区ではカラスが減ってめでたしめでたし。しかし、カラスは移動しただけですから被害の総量が減るわけではありません。

ケース2 カラスが早起きになる
こっちの方がありそうなケースです。今回の早朝回収は午前6〜8時の間に行うそうです。カラスの先回りをしようということですね。しかし、これがカラス対策になると担当者は本当に考えていたのでしょうか。鳥は基本的に日の出、日の入を基準に行動します。朝、日の出前にはほとんどの鳥が活動を始めます。カラスも同様。夏だと5時前から明るくなりはじめます。回収前にカラスが朝食を済ませることも可能です。では、日の出の遅い冬はどうなるか。カラスは回収前に食事をするために早起きするようになるかもしれません。え?鳥は「鳥目」だから夜は活動しないって? 残念でした、「鳥は鳥目」というのはウソなんです。フクロウでなくても、鳥は夜も目が見えます。実際、私が住む高円寺では夜中の2時〜3時でもカラスがカーカー鳴いている(声が移動していることもあるので、おそらく飛んでもいる)のを聞くことができます(さすがのカラスも深夜はたいてい眠っていますので、これは例外的ですが)。朝が少々早くなるぐらいはカラスにとって大したことではないでしょう。

さて、今回の早朝回収の試行の結果はどうなるでしょうか。私はカラス対策としては決定打にはならないのではないかと予想します。本当のカラス対策は「早朝」回収ではなくて、「深夜」回収なのです。


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