[ON THE NEWS]
宮崎県の高天ヶ原神社の生きた「ご神体」である、頭が2つある白ヘビが、埼玉県の高天ヶ原神社関東別院で公開される。
(SOURCE:朝日新聞(東京版)1999年8月7日)[EXPLANATION]
頭が2つあるといえば、動物文学(?)の傑作、ドリトル先生の物語にそういう動物が登場しますし、「ケルベロス」といえば神話上の複数の頭を持つ犬(だったか?)、あるいは「双頭の鷲」という紋章もありましたっけ。いずれにせよ「頭が2つ」というのは想像上の産物と思われる方も多いでしょう。
さて、その双頭のヘビが実際に公開されるというのが今回の記事。断言できますが、この双頭のヘビは偽物でもまがい物でありません。このヘビは本当に頭が2つあるホンモノなのです。実は、ヘビの双頭というのは珍しくはありません。いや、確かに非常に珍しいのですが、他の動物に比べるとかなり出現率が高いようです。世の中には爬虫類・両生類を好んで飼育する人が意外と多く(嫌いな人には想像もできないかもしれませんが、これは本当)、アメリカ合衆国では業者や愛好家が集まる大トレーディング・マーケットも開催されたりします。そういうところでは話題作りのためか双頭のヘビが展示されることがあります。もちろん、そのヘビも商品の1つで、とんでもない高い値札が付くことになります。近所の裏山を捜索しても双頭のヘビは見つからないでしょうが、全世界的に見ると、毎年どこかで発見されているのは確実と私は予想しています。
頭が2つになるのは一種の遺伝的な変異(奇形)です。たいていの動物の場合、このような変異は短命をもたらすのですが、ヘビは短命の例外なのか、出現率が高いせいなのかよく報告されています。変異の一種というと、「アルビノ」というものもあります。体表(皮膚)の色素が異常を起こして白くなる(黄色になったり別の模様が出たりすることもある)ことで、爬虫類や両生類ではかなりよく見られます。「白蛇」がその代表例です。この場合、ふつう目も赤目になります(今回の記事のヘビも白くて赤目だという)。どうも爬虫類や両生類は遺伝的な変異が発生しやすく、また、変異があっても生存に影響が無いことが多いようです。なぜ変異が多いのかはわかりませんが、初めて水中から陸に上がった生物であるための進化的な特徴が残っているのかもしれません。
変異が多いという事は、人工的な影響で変異を引き起こしやすいということでもあります。「環境ホルモン」に関して、いろいろな生物への影響が報告されていますが、工場からの化学物質でワニのオスの性器がメス化したという報告もあります(手元に詳細がないため、この記述は正確でないかもしれない)。脊椎動物の中でも人工的な化学物質の影響を受けやすい爬虫類・両生類は環境破壊の指標ともなるのです。このような影響は爬虫類・両生類の生存に大きくかかわるだけでなく、人間自身にも影響を与える可能性が高いと言えます。爬虫類・両生類を守ることは人間の生活を守ることでもあるのです。