Vol. 19(1999/9/19)

[今日のいきもの]アオスジアゲハ

アオスジアゲハはどこにいる?

[EXPLANATION]
和名:
アオスジアゲハ
分類:鱗翅目アゲハチョウ科
学名:Graphium sarpedon

アオスジアゲハはイラストのように黒い翅(はね)にエメラルドグリーンの模様が並ぶとても美しいチョウです。このチョウ、関東に住んでいる方ならばおそらく誰でも目にしたことがあると思います。なにしろ、私もアオスジアゲハを渋谷のハチ公前で見たことがあるぐらいですから。このことからもわかるように、このアオスジアゲハは大都会でも普通に見ることができるチョウなのです。私がざっと見たところ、アゲハ(ナミアゲハ)、クロアゲハ、アオスジアゲハは東京都心でも比較的よく見かけるアゲハチョウです。しかし、それでもアオスジアゲハを見たことがない人がいたとしても不思議ではないかもしれません。というのは、このアオスジアゲハ、比較的高いところを飛んでいるからです。高度3mから樹木の先端ぐらいまでを飛ぶことが多いようです。そのため、意外と人の目につきにくいのです。

私は福岡市で生まれ育ちました。私の記憶ではアオスジアゲハを福岡で見たことは1度もなかったように思います。当時そのようなことに興味がなかったことを差し引いても、アオスジアゲハが身近にいたようにも思えません。一方、東京では住宅地でも都心でも比較的よく見ることができるチョウです。図鑑で調べてみたところ、アオスジアゲハの分布は「本州〜八重山」となっています。なぜ福岡では見かけなかったのか? 考えられるのは植物分布の違いです。アオスジアゲハの幼虫はクス科の植物を好みます。関東ではクスは街路樹などとして住宅地や都心にも植えられているためアオスジアゲハもよく見かける。一方、福岡ではクスは少ないためアオスジアゲハも少ないのではないか——というのが私の仮説です。この仮説を検証するには実際に福岡で植物を調べてみればわかりそうです。が、残念なことに私は植物にはあまり詳しくないのです。これでは検証のしようもありません。

動物の生活は植物に依存しています。たとえ肉食動物でも、エサとなる草食動物がいるからこそ生きていけるのであって、植物に間接的に依存しています。だから動物を理解するには植物の理解も欠かせません。
チョウを捕獲する場合、チョウを追っかけ回すよりも、チョウが好む植物で待ち伏せした方が効率良くつかまえられます。私もこれからは植物の勉強もしていかなければならないな……と、捕虫網を持ってチョウを追いかけながら思ったのでした。

参考文献:海野和男「ポケット図鑑 昆虫」(成美堂出版)


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