Vol. 21(1999/10/3)

[今日の観察]わははカラスと八百屋カラス

今回から登場する「今日の観察」では、私自身が実際に観察・見聞したことを紹介していきたいと思います。


カラスはとても賢い動物としてよく知られています。鳴き声も、ハシブトガラスがハシボソガラスの真似をしたり、あるいはその逆のことがあることが知られています。さらに、カラスは「カーカー」あるいは「グアーグアー」以外の鳴き方もするということをご存じでしょうか。

つい先日、9月30日のことでした。私は用事があって、JR高円寺駅北側近くの路地を歩いていました。すると、上の方から「わはは、わはは、わはは…」と笑い声が聞こえるのです。見上げるとビルの屋上でカラスが鳴いているではありませんか。こ、これが噂の「わははガラス」なのか……。どう聞いても「わはは、わはは」と鳴いているのです。
実は以前からプロ・ナチュラリストの佐々木洋氏から「高円寺には『わははガラス』がいるよ」と聞いてはいたのです。その目撃場所に私も何度か行ってみたのですが、結局一度も見ることができませんでした。そのカラスが高円寺駅あたりに生息しているのは明らかなのですが、この周辺はカラスが多く目的のカラスを特定するのは困難です。今回、偶然ながらもようやく「わははガラス」を発見することができたのでした。次回はぜひビデオカメラで撮影しようと思っています。

カラスの鳴き声について、もう1つの例を。
場所は東京都葛飾区の水元公園の北端。実際にカラスがいたのは水路の向こうでしたので、正確には埼玉県三郷市というべきかもしれませんが。あれは今年の2月の夕方、水元公園の自然観察会に行った後、そろそろ家に帰ろうとしていた時のことでした。水路の向こうでカラスがさかんに鳴いています。それも「カーカー」と鳴くのではない、奇妙な鳴き方なのです。何かの言葉に聞こえるなあ…何だろうなあ…と考えていて気がつきました。このカラス、「やおやー」と鳴いているのです。正確には「あおあー」と鳴いているのですが、イントネーションといい雰囲気といい、本当に「八百屋」と言っているように聞こえるのです。この時はビデオカメラを持参していましたので、このカラスの鳴き声を収録することができました。

「わははガラス」や「八百屋ガラス」はいつどこでこのような鳴き方を習得したのでしょうか。どのカラスもこのような鳴き方ができるわけではないようですが、時々奇妙な鳴き方をするカラスは少数ながら確かに存在するようです。このようなカラスは実は「音楽家のカラス」なのかもしれないなと私は想像するのでした。


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