Vol. 22(1999/10/10)

[今日のいきもの]ワニガメ

すぐ近くにいるかもしれない巨大ガメ

和名:ワニガメ
学名:Macroclemys temminckii
分類:カメ目カミツキガメ科

[EXPLANATION]
暑い季節もようやく終わりました。今年の夏もいろいろな動物が脱走して世間をにぎわせました。その中でもワニガメは脱走動物(正確には廃棄動物)の定番になっています。

ワニガメの最大の特徴は、ルアー(おとり)をつかって獲物を捕えるということです。ワニガメの舌は一部がミミズのような形になっており、口を開けてこれをひらひら動かすと魚が間違えて近づいて来るので、そこをパクリ!とやるのです。テレビなどでもよく紹介されていますのでご存じの方も多いかもしれません。ワニガメ本人はじっとしているだけで積極的にエサを食べに行動することはないようです。
ワニガメの名前の由来は、その顔がワニのようにごっついからだそうですが、そんなに似ているとは私には思えません。また、大怪獣ガメラのモデルとも言われていますが、そうなんですか?
ワニガメでもうひとつ忘れてはならないのはその大きさです。成長すると甲長80cmにもなります。世界最大のガラパゴスゾウガメは甲長130cmなのですが、甲長が50cmを超えればもう十分に大きい種類と言えるでしょう。甲長80cmというのは、海岸に産卵に上陸するアカウミガメやアオウミガメと同じぐらいの大きさです。

とまあ、このような理由のせいかどうか、ワニガメはマニアの間ではかなり人気が高いようなのです。しょっちゅう新聞沙汰にもなるのも、意外と多く飼育されているからなのですが、これにはもうひとつの事情があります。それは「飼育ワニガメは廃棄される可能性が非常に高い」ということです。
ワニガメは確かに人気があるのですが、
・あまり動かない(飼育しても飽きるらしい)
・大きくなりすぎる(水槽も大きいものが必要になる)
といった理由で手放す人が多いと見られるのです。で、どこに廃棄するのか? それはどこかの空き地だったり、池だったりして、運悪く見つかってしまったら警察沙汰、新聞沙汰になるというわけです。ワニガメは水中生活者ですし、自ら大移動する性質もありませんので、そのような屋外で見つかるワニガメは間違いなく「廃棄」されたものなのです。
警察沙汰になったワニガメは側溝や道路で発見されているようですが、ワニガメの性質からいうと、そのような所にいるのはかなり不自然です。と、いうことは本来の生息場所、例えば大きな公園の池などには廃棄されたワニガメが実はかなりいるのではないか、と推測できます。ワニガメは呼吸する時しか水面に上がってきませんので、その姿が目撃されることはほとんどないでしょう。大抵の人は気付きもしないと思われます。実は、とある池にワニガメが生息しているという情報をすでに1件得ており、そのうちビデオ撮影をしに行こうかと考えております。

この廃棄ワニガメ、先日は内閣でも話題になったそうで、さっそく対応の協議にはいったとか(1999年9月18日付 朝日新聞・東京版)。一体何を始めるのかは知りませんが、まずは実態調査をするべきでしょう。多分、驚くべき実態がわかるはずです。

ワニガメといえば、個人的な思い出もあります。何年か前、仕事でシカゴへ行った事があるのですが、ついでに市内のシェド水族館へ行きました。そこの水槽の1つに大きなワニガメがいました。水底でじっとしているだけで動こうとしません。説明板を読むと(もちろん英語)、「ワニガメは普段じっとしているが、数時間毎に呼吸のために水面に上がる」と書いてありました。
そこで、5分ほど水槽の前で待ってましたが、本当にぴくりとも動かないので、また後で見よう、と他の水槽を見て回ることにしました。約30分後、ワニガメの所に戻ってみると…あっ、体の向きが変わっている! きっと呼吸をしたんだな、とわかったので、それ以上ねばるのはあきらめたのでした。

なお、ワニガメの本来の生息地はアメリカ合衆国南部で、川や湖などの淡水域に主に生息します。特に稀少種でもないため、比較的多く流通しているようです。

(REFERENCE:爬虫類・両生類800種図鑑/発行:(株)ピーシーズ)


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