完全図解 虫の飼い方全書
[DATA]
編著:東陽出版編集部内 動物飼育事典編纂委員会
発行:東陽出版
価格:1500円
初版発行日:1999年3月21日
ISBN4-88593-188-6[SUMMARY]主要な虫の飼い方を網羅
さまざまな昆虫(昆虫以外も若干含む)の飼い方を紹介している。採集の方法も紹介されている。以下、目次より取り上げられている昆虫を列記すると…
[野原にいる虫]チョウ、バッタ、キリギリス科、コオロギ科、カマキリ、カメムシ、ハチ、テントウムシ、ハンミョウ
[樹木にいる虫]クワガタムシ、カブトムシ、コガネムシ、カミキリムシ、セミ、アリジゴク
[家のまわりにいる虫]アリ、ガガンボ、ガ、カイコガ、ゴキブリ、ゾウムシ、ハサミムシ、クモ、カタツムリ
[水辺・水中にいる虫]トンボ、ヤゴ、ホタル、アメンボ、水生カメムシ、水生甲虫類
[付録]エサの繁殖(ハエ、ボウフラ、アリマキ、ミミズ、タニシ、ゾウリムシ)[COMMENT]ゴキブリを飼おう
前回、飼育本をとりあげたので、今回も続けて飼育本を紹介します。
この本は1年前に出版されているのですが、その当時から注目していました。昆虫の飼育の本を見る場合に私が注目しているポイントがあります。それは、
「ゴキブリの飼い方が載っているか」
ということです。ゴキブリを飼いたがるような人は普通いないでしょう。しかし、ゴキブリは飼育がそれほど難しくはありません。飼育には適した種類だとも言えます。本書のように「全書」を名乗るくらいならば、ゴキブリの飼い方は当然載っているべきなのです。そして、本書にはずばりそれが載っているのです。これだけで気に入ってしまいました。
(ゴキブリにはいろいろな種類がいて、その中には「これなら飼ってみたいなあ」と私自身思う種類もいます。外国では実際、ゴキブリをペットにしている例もあるようです。ゴキブリについてはVol.2で「ゴキブリ大全」という本を紹介しています。)本書の面白いところ(無茶なところ、とも言えるかもしれない)は、普通では考えられないような飼育についても紹介されていることです。
例えば、セミ(成虫)の飼育。まさか、とは思いましたがちゃんと載っています。う〜む。確かに飼い方としては間違ってないんだけど…(詳細は本書をご覧ください)。一応「飼育箱で飼うのは難しい」と書いてますがね。
この調子は本書全体に貫かれていて、この他にもセミ(幼虫!)の採集・飼育、トンボ(成虫)の飼育、ハチの飼育(飼いやすい種類だけを紹介しています)、カメムシの飼育、ハエ・カの飼育(これらは動物食の昆虫のエサとして必要になる)などなど、普通は飼おうとも思わないような昆虫の飼育方法を紹介しています。
また、採集方法も同時に載っていますし、ゴキブリについては駆除の方法も載っているなど、親切な内容になっています。さて、非常に面白い本書なんですが、編集的に見てみるとどうもぱっとしない感じがしてしまいます(私自身が編集の仕事をしていたので気になるのです)。表紙は地味だし、装丁も普通。文章は少々こなれていなくて読みにくい箇所も多い(それほどひどいというわけではなく、「、」(読点)が多すぎる印象がある)。イラストも精密なわけではない(実用的には問題ないが)。レイアウトもわかりにくい。もうちょっと編集を工夫してほしいところなんですが、内容の面白さが欠点を帳消しにしているので、トータルとしてはこれでもうOKですがね。
ところで、本書の編著者は出版社内の委員会だということですが、要するに社員の手作り出版っていうことなんでしょうかね? 内容の充実度からいって、相当の飼育好きがそろっているとしか思えません。ちょっと不思議な印象のある本です。