Vol. 38(2000/3/19)

[今日のいきもの]カワセミ

いつの間にか都会の鳥

和名:カワセミ
学名:Alcedo atthis
分類:ブッポウソウ目カワセミ科

[EXPLANATION]
むふふふふ。ぐはははは。
いきなり下品な笑い方で失礼しました。でもそれぐらいうれしいのです。撮れましたよ、やっと。カワセミが。

場所は石神井公園(東京都練馬区)。しかも同じ日に2回も。いずれも5m以内という至近距離まで接近でき、300mmのレンズで十分にとらえることができました。上の写真はトリミングをしていません(逆光気味なのがちょっと残念)。前にも書いたのですが、300mmの望遠レンズは野鳥撮影には性能不足で、特にカワセミは「遠い」「小さい」の二重の障害があって、私自身も撮影は極めて難しいだろうと思っていました。でも接近できるものなんですねえ。
とまあ、自慢話はこれくらいにして、カワセミそのものの話をしましょう。

カワセミは青(グリーンに見えることも)とオレンジの美しい羽を持つ鳥です。スズメと同じくらいの大きさしかない、小さな鳥です。カワセミはとても美しく、また、どこにでもいるわけではないので、自然の写真を撮る人たちにとっては1つの目標ともなっている鳥です。水辺に特大の超望遠レンズをつけたカメラを設置している人たちがいれば、間違いなくカワセミ狙いでしょう。
カワセミの生態で有名なのは、水中にダイビングして魚を捕ることです(その飛び込む瞬間がシャッターチャンスだったりするわけです)。水辺にカワセミがいるならば、そのカワセミはすぐ下の水の中にいる魚を狙っているということです。じっと観察していれば、ダイビングの瞬間を見ることもできるでしょう。

さて、このカワセミですが、小さく目立たないし群れることもないため、あまり目撃されることもありません。また、「カワセミは清流にしかいない」という誤解もあったりして、都会には縁のない鳥だと思われているようです。
ところがどっこい。上の写真は東京都練馬区で撮影しました。実は東京都23区内には他にもカワセミを見ることができる場所が何カ所もあります。私が目撃した場所としては、石神井公園(練馬区)、水元公園(葛飾区)、新宿御苑(新宿区/渋谷区)、明治神宮・北池(渋谷区)があります。また、23区内ではありませんが、玉川上水(三鷹市と杉並区との境界付近)でも目撃されているようです。カワセミは条件さえ整っていれば都会でも普通に見られる鳥なのです。
実際、私自身がカワセミを見てきて、その生息場所にはいくつかの共通点があることもわかってきました。

・魚のいる水辺
魚がエサですから、これは必須条件です。魚はカワセミが飲み込めるくらいの小魚でなければなりません。間違ってもニシキゴイを食べたりはしません(当然)。水は流水・止水を問いません。私が目撃した場所はだいたい止水です。水の面積は広いほどいいようです。エサを捕る場所は何カ所も持っているようで、「ここなら絶対に見れる」という場所は特定しにくいようです。
水の透明度は極端に汚れていなければ大丈夫です。もちろん汚水が流れこまない場所が望ましいのは当然です。少々透明度が悪いぐらいでもカワセミの視力なら問題ないようです。

・水の上にカワセミがとまれる場所がある
これはエサを狙う場所として必要です。水面に張り出した木の枝、アシ、あるいは人工物など何でも利用するようです。アシは細いのですが、カワセミは体が小さく軽いので、折れたりはしません。
カワセミがとまる高さは水面から1m前後が多いように思います。高くても2mまででしょう。すばやく水面に降下するためにはそれ以上の高さでは間に合いません。また、あまり水面に近すぎると魚から見えてしまうので、水面すれすれにいることもないようです。カワセミを探すときにはこれぐらいの高さの所を探すようにするといいでしょう。

・緑が多い場所
私がカワセミを目撃した場所は車が乗り入れられない場所で、とても静かな環境です。カワセミは静かな場所が好きなのかな、とも思いましたが、車道から20mも離れていないところで目撃したこともありますから、騒音は関係ないとも考えられます。
むしろ、林や森などの緑のある場所を好むように思われます。そういう場所は当然、静かなのですから。さきほどの「車道に近い場所」もまわりは木々がたくさんある場所でした。寝場所、あるいは営巣場所としてそういう環境が必要なのかもしれません。

こういう条件から考えてみると、東京都23区内にはカワセミがいる場所は他にもたくさんありそうです。皇居とそれに隣接する日比谷公園にはカワセミがいると聞きます。不忍池、小石川植物園、善福寺公園あたりには確実にいそうですね。また、多摩川、隅田川、荒川などの流域にもいるでしょう。

カワセミについてのもうひとつの誤解は、「カワセミは夏の鳥」というものです。確かに派手な体色は夏っぽいですし、水に飛び込むなんていかにも夏じゃあないですか。しかし実際は1年中見られる鳥なのです。カワセミは渡り鳥ではないのですから、よく考えれば当然のことなのですが。
ただし、カワセミを観察するなら断然冬に限ります。なぜかというと、冬は草が枯れ、木の葉が落ちて見通しが非常に良くなるからなのです(これは鳥一般にもあてはまる)。カワセミは派手な色なのですが、青々と茂った木の葉の中にいると発見はまず不可能です。ああ見えてもカムフラージュの機能はちゃんとあるのです。もっとも、このカムフラージュは枯れ木・枯れ枝でも有効で、たとえ冬でもカワセミを発見することはやはり難しいのですが。

3月はまだ新緑が現れていない季節です。今ならまだカワセミを見つけやすい時期。一度チャレンジしてみてはいかがでしょう。
(なお、カワセミ探索には双眼鏡が必須です!)


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