Vol. 43(2000/4/30)

[今日の観察]ハイブリッド・カモ観察報告

「ハイブリッド」とは「交雑」という意味です。本来は「種」が異なれば、その間に子供は生まれないはずなのですが、その「種」の定義も現実的には不明瞭な部分があり、人間が直接介入しない自然界でも交雑の例は少なくありません。
カモ類は身近にいる動物の中でも交雑が起こりやすい動物で、各地でいろいろな交雑個体が報告されています。今回は、1999年〜2000年春の期間に私が目撃・撮影した「ハイブリッド・カモ」を紹介しようと思います。
最初に、マガモ、カルガモの本来の姿を写真で確認しておいてください。※ごめんなさい、マガモ(メス)の写真が間違ってました。これはオナガガモのメスです。写真はちゃんと撮っているのにどこで間違えたかなあ。

ではまず、写真Aから。
え? 普通のマガモに見えるって? いやいやよく見てください。胴体の模様がかなり違っています。また、体格もマガモより一回り大きく、アヒルの血統が入っているようです。このカモはこの1羽だけではなく、同じような模様のカモが数羽と野良アヒル(といっても微妙にマガモの血統が入っているようだ)1羽で一緒に行動しています。多分、家族なんでしょうね。
東京都石神井公園で撮影。

次の写真Bも同じく石神井公園です。うう〜ん。野良アヒルなんですけどねえ、なんでしょうねえ、このブチ模様は…。どう血統が混じればこういう模様が出てくるのでしょうか。私はこのアヒルを「ブッチ・カモ」と名付けました。このアヒルは他数羽の野良アヒルと一緒に行動しています(写真Aとは別の群れ)。

次は写真C。これまた「?」なカモ、いや、アヒル?です。体色がかなり白く、体格もやや大きいのでアヒルの血統が濃いようです。羽の色は茶色が混じっていて、一見してアヒルではないことはよくわかります。マガモの群れと一緒にいました。
東京都水元公園で撮影。

次、写真D。ぶっ。ぶぶぶっ。と吹き出しちゃいそうなやつです。ベースはマガモです。が、頭は半分カルガモ。後頭部の緑色はマガモ(オス)なのですが、まるではげているようにも見えてしまいます。
東京都水元公園で撮影。

最後に写真E。ぎゃっ。な、なんですか、あれは?? 新種?じゃないよねえ…。と本当に思ってしまいました。くちばしの色から推測するとマガモ(オス)の血統のようですが、ここまで判然としない模様になってしまっているのも珍しいです。マガモの群れと一緒にいました。
福岡市大濠公園で撮影。

この他にも、あやしいカモを各所で目撃していますが、写真を撮ってないので割愛します。一見マガモに見えても、よ〜く模様を見てみると通常のマガモの模様とは違う個体を発見したこともありました。
あちこちでもっと丁寧に探せば、ハイブリッドの事例はたくさん見つかると思います。それぐらいカモの交雑は簡単に、そして頻繁に起こっていることなのです。
特に、今回紹介したように、マガモ〜カルガモ〜アヒル間の交雑はよく見られるものです。そもそもアヒルはマガモを家畜化したものですので、交雑は起こって当然のものです。また、マガモもカルガモも分類上は同じAnas属で、非常に近い種なのです。このAnas属には他にもオナガガモ、コガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモなどが含まれており、これらとの交雑もあり得ない話ではなさそうです。本来の、「種」の定義では、種が異なれば交雑は不可能なはずなのですが、実際はカモのようにその障壁が低い場合もあるのです。
ちなみに、オシドリはAix属、キンクロハジロ、ホシハジロ、スズガモはAythya属なので、これらとの交雑は無さそうです。


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