Vol. 76(2001/1/28)

[今日の観察]補足・カラス対策

EXTRA 03の補足として、カラス対策についてQ&A形式にまとめてみました。ゴミ夜間回収についての補足です。雑誌「リラティオ」の記事を先にご覧になることをおすすめします(でないと文脈がわからないでしょう)。

夜間回収以外のカラス対策について

Q:ゴミ袋にネットをかければカラス被害は防げるのではないでしょうか?

A:ネット程度では効果が不十分です。カラスがネットをくちばしで持ち上げて、ゴミ袋をひっぱり出すところを実際に見たことがあります。また、ネットの目が粗いとその隙間からくちばしを突っ込んだりもするようです。こういったことを防ぐには、ネットに重りをつけたり(カラスが持ち上げられないほど重く!)、目が細かいネットを使用するようにしなければならないでしょう。
ネット使用にはもうひとつ問題があります。それは、普及と住民の協力です。現在、東京都区部ではネットは「希望者に貸し出す」ということになっており、積極的に配布する姿勢ではありません。これでは効果を期待できません。また、ネット配布後も、住民がネットをきちんとゴミ袋にかけるよう、常々気をつけなければなりません。
ネットはコスト的には安上がりかもしれませんが、数百万以上の人間の努力に依存せざるを得ないため、効果に確信が持てないという不安があるのです。

Q:ゴミの量を減らせばカラスも来なくなるのでは?

A:カラスの食糧となる生ゴミを減らす、これは確かにいい方法です。しかし、本当に生ゴミを減らすことができるでしょうか? 減らすといっても、数%程度では効果はありません。現在の生ゴミの量はカラスを養うだけの量をはるかに上回っていると思われます。ですから、カラス対策として効果を上げるには生ゴミを半分あるいはそれ以下にしなければならないでしょう。この方法もまた全住民の努力に依存するために効果を期待できないのです。

Q:リサイクルを推進すればゴミを減らせるのでは?

A:リサイクルの対象となるのはどのようなものでしょうか。新聞紙、ペットボトル、ビン、缶……。残念ながら生ゴミは含まれません。つまり、リサイクルを推進してもカラスにとっては何も影響はないのです。

夜間回収について

Q:夜間回収をするとカラスが夜活動するようになるのでは?

A:カラスは昼行性なのでその心配はありません……と言いたいのですが、そうは言い切れないのが難しいところです。私が住む杉並区高円寺では、夜カラスが鳴く声を時々聞きます。しかも、鳴きながらその声が大きくなったり小さくなったりすることがあり、どうも飛んでいることもあるようなのです。カラスがみんな夜行性になるとは思えないのですが、こればかりはやってみないとわかりません。
ところで、鳥は「鳥目」というのはまったくの誤解です。鳥は一般に日の出から日の入りの時間帯に活動し、夜は寝ているためにそのように思われているだけで、鳥はとても視力が良く、夜でも問題なくものを見ることができます。

Q:空腹になったカラスが人を襲うようになるのでは?

A:これはまったくの誤解です。ここはカラスの気持ちになって考えてみましょう。
そもそも、カラスが人間に攻撃するのは(1)卵やヒナを守ろうとするとき(2)悪質ないたずらをされたときに限られています。それ以外の理由で攻撃するとは考えられません。それに腹が減ったらまず食べ物を探そうとするわけで、わざわざ人間を逆恨みして攻撃しても何の利益も無いのです。

Q:空腹になったカラスが小型の野鳥を襲うようになるのでは?

A:この可能性はあります。ある程度の犠牲は仕方がないとしても(動物性の食糧は必要なので)、これをできるだけ回避するには、小鳥のような小動物以外の食糧が豊富になければなりません。そこで、植物性の食糧つまり木の実が十分にある季節に夜間回収を開始するのが良いと思われます。

Q:夜間回収によって、餓死するカラスもでてくるのではないでしょうか。

A:この可能性は否定できません。都市に見切りをつけて周辺部へと移動することを期待したいのですが、中には都市に固執するカラスや要領の悪いカラスがいるかもしれません。しかしこれは自然環境の中での淘汰であり、狩猟などによる人為的な減少とは区別した方がいいでしょう

Q:夜間回収を始める時期はいつが適切でしょうか?

A:既に述べましたが、自然環境中に木の実などが豊富にあり、当面の食糧に困らない秋に開始するのが良いと考えられます。具体的には9〜10月頃が適当かと考えられます。


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