最近、科学雑誌が流行りません。ここ数年で科学系の雑誌が次々と消えていきました。内容が高度な専門誌は別として、一般向けの科学雑誌は事実上「Newton」だけしかないといっていいでしょう。他には「ナショナル・ジオグラフィック」があるぐらいでしょうか。
動物雑誌はさらに流行りません。え?、本屋にはたくさん並んでいるって? それは動物雑誌ではなくて「ペット雑誌」です。確かにペット雑誌は大繁盛しているようです。しかし、私が言う動物雑誌とは、「野生動物を主に取り上げる」雑誌のことです。私が連載を書いている雑誌「リラティオ」はペット動物あり、野性動物ありで、私の定義する「動物雑誌」とは少々違うのですが、それよりも扱っている書店がまだまだ少ないのが残念です。
さてそれでは、現在どんな動物雑誌があるのかというと……これが、無い!、のです。科学雑誌の中で取り上げられる動物の記事も多いとはいえません。「Newton」誌は人気のあるトピックにかたよる傾向が明らかにあるのですが、動物関連記事はかなり少ないと思います。
インターネット上でも野生動物を専門的に扱ったもので、かつ、頻繁に更新されているものはほとんどないのではと思います。この「いきもの通信」はその意味では「合格」と言えそうです(自画自賛(笑))。
動物雑誌が無くて困るのは、最新の情報が得にくいことです。雑誌が無いため、情報の多くは新聞に頼ることになるのですが、新聞記事というものは専門家が取材・執筆しているのではないため、トピックの取捨選択や記事内容で必ずしも満足できるものではありません。もうちょっとしっかりした専門誌があればなあ、というのは私の切実な思いです。なぜ動物雑誌がきわめて少ないのか。その理由は「もうからないから」の一言に尽きます。つまり読者数が非常に少ないのです。日本人はやはり動物に興味を持っていないのではないか、と私は疑っています。多種多様な娯楽や趣味が氾濫している現在の日本では、動物なんか見向きもされません。最近の娯楽や趣味は、物欲や達成感、他人よりも先を行っているという優越感を満足させるという要素を持っています。ペットがはやる理由も同じことであると思われます(チョコエッグが人気なのも同じ理由でしょう)。ところが、野生動物を相手にする場合、彼らを触ることできないどころか、接近することすらできません(接近すら本来は好ましくない)。他の娯楽・趣味に比べて、きわめて禁欲的なのです。これでは大流行するはずもありません。興味を持つ人が少ない、つまり雑誌を買う人も少ない(そして広告主も集まらない)、その結果、雑誌はもうからない、という構造になっているのです。
しかし、何らかの媒体(メディア)がなければ動物のことを世の中に伝えることもできません。メディアが無いと情報も伝わらず、ますます動物離れが進むでしょう。そうならないためにも、やはりメディアは必要なのです。この「いきもの通信」もそういう自覚をもってやっています。ただ、読者も少しずつ増えているとはいえ、その影響力はマスコミにはかないません。もっと多くの人の目に触れるメディアが必要であることもわかっています。
それならば雑誌を作ろう!、という気持ちも無いわけではありません。今は無理でも、いずれやってみたいと思っています。それまではこの「いきもの通信」を細々とでも継続し、動物のことを伝え、より多くの人に関心を持ってもらうよう努力するぞ、と決意する21世紀冒頭であるのでした。