以前、「夜の散歩者」の話を書きましたが、今回はその続き、都会の野生動物編です。
コウモリ
都会でも簡単に見ることができる「夜の野生動物」の代表はアブラコウモリでしょう。その観察は初級者レベルの難易度です。まず夕方、日没時刻の前後が観察にちょうどいい時間です。まだ空が明るいので、コウモリのシルエットをすぐに見つけることができます。場所は、池や川など水のあるところ。そういう場所は食べ物になる蚊のような昆虫が多いため、コウモリも集まるのです。こういう場所は空に障害物がないので、コウモリにとっても飛びやすい場所です。昆虫がいる場所なら、街灯がある、人が少ない公園などでも見ることができるかもしれません。
日没後、そのよう場所で空を見上げると、意外と素早く、しかしひらひらと飛翔する小さな動物がいるでしょう。これがアブラコウモリです。観察はとても簡単なので、近くにそれらしい場所があれば試しに行ってみてはいかがでしょうか。
つい最近、最寄りのJR駅前で夕方、上を見てみると、アブラコウモリが数匹飛んでいるのを発見しました。確かに小さいながらも噴水池があるのですが、こんな所にまでもいるとは驚きでした。アズマヒキガエル
アズマヒキガエル、またはヒキガエル、ガマとも呼ばれるカエルです。アズマヒキガエルはそうしょっちゅうお目にかかれる種類ではありませんが、都会でもばったりでくわす可能性があります。しかも道路上で。私はこれまで2回アズマヒキガエルを夜見ましたが、1回目は住宅街の狭い路地、2回目は公園内の道、とかなり目立つ場所にいました。しかも1回目の方は、近くに水場がない場所です。カエルというと水がなければ生きていけないように思われるかもしれません。実際、卵〜オタマジャクシの期間は水は必須のものです(国外では水無しでも大丈夫な種類がいる)。しかし、大人になってしまうと水をあまり必要としなくなる種類もいます。アズマヒキガエルはまさにそういう種類なのです。ですから水場の無い住宅街でもでくわす可能性は意外と高いのです。
ただ、数が多いわけでもなく、いつどこに現れるか予測不可能ですので、簡単に観察できるものではありません。夜に見かけることが多いのは偶然ではなく、夜行性だからです。昼でも雨の後に活動することがあるそうです。
このアズマヒキガエル、実際にでくわすとその大きさにびっくりするかもしれません。なにしろ10cm以上あるのですから。しかも、背中からは粘液を出すのであまり触りたくない相手です。それでもでくわすことは珍しいでしょうから、じっくり観察してあげてください。ゴキブリ
あれは一昨年の秋のことだったでしょうか。ある夜、私は近所の住宅街の道路を歩いていました。人通りの少ない、暗い道でした。突然、視界の片隅に小さな動物がちょろちょろ走っていくのが見えました。大きさと動きから瞬間的に「あっ! ゴキブリ!」とすぐにわかりました。「そうかそうか、ゴキブリはこうやって生息範囲を広げていってるんだ」と感心したものです。その翌日の夜。前日の場所から少し離れた、やはり住宅街の道路でまたも目撃したのです。ゴキブリを。自分の動物発見能力が向上してるんだなあ〜、とひとり納得していた私ですが、2日連続で見かけるというのは尋常ではないような気もします。「これは天変地異の前兆かも……」と思ったりしたのでした。ですが、それからしばらくたっても地震も何も起こりませんでした。2日連続というのはただの偶然だったわけです。
その後、夜の道路でゴキブリを見かけることはほとんどありません。よほど注意していないと発見は難しいでしょうね。ネズミ
あれは昨年の冬。ある夜、私は自転車に乗って家に帰るところでした。住宅街の狭い道路を走っていると、突然、小動物が自転車のすぐ左前方を走っていく姿が見えました。「おおっ! こ、これは巨大ゴキブリか!?」と一瞬喜んだ私ですが(笑)、細長い尾がひょろっと伸びていたのですぐにネズミだとわかりました。数秒ほどの間、自転車とネズミはほぼ同じ速度で道路を並走していったのですが、突然ネズミが右に進路を変えて、自転車の前に飛び出してきました。ぱっとブレーキをかけたので、ネズミをひくことはありませんでしたが、かなりびっくりしました。ネズミはどこかの住宅に消えていったようでした。
都会で最も多い野生哺乳類はネズミです。種類はクマネズミ、ドブネズミの2種がほとんどです。これら2種は大きさもほぼ同じなので、ぱっと見たときに区別するのは難しいかもしれません。じっくり見れば区別はできるのですが、夜道での判別は困難です。普通はネズミにお目にかかる機会は少ないので、都会にそんなにたくさんいることが信じてもらえないかもしれません。しかし、ある特定の業種の人なら知っているはずです。都会にネズミが多いことを。普段見えないところにネズミたちは確かに住んでいるのです。そして、時には街の道路を走っていく姿を見ることができるのです。ちなみにネズミは必ずしも夜行性というわけではなく、私が目撃した例は昼間の方が多いです。都市ネズミについての参考図書はこちら
→Vol. 12(1999/7/25) [今日の本]ネズミに襲われる都市
都会でも夜に行動する動物はいます。動物には昼行性も夜行性もいるわけですから、これはそれほど不思議なことではありません。よく観察すればもっといろいろな動物がいるでしょう。目撃することが少ないのは、夜は暗いからとかあまり外を出歩かないからというだけでなく、私たちがその存在に気づいてないからなのです。