カラスもびっくり! バイオカイト
[DATA]
著:伊藤利朗(いとう・としお)
発行:講談社(ブルーバックスB1355)
価格:1400円
初版発行日:2001年12月20日
ISBN4-06-257355-5
[SUMMARY]航空力学的な新発明の凧 バイオカイトとは同書の著者が発明した新しいタイプの凧のこと。その形状が鳥や昆虫のものが多いため「バイオ」という名が付けられた。微風でもよくあがるという高性能の凧である。
本書ではその製作方法、飛行原理を詳しく紹介している。付属のCD-ROMにはさまざまなバイオカイトの型紙データが収録されており、キットに印刷できるようになっている。
バイオカイトのキットはバイオカイトのホームページで購入できる。
[COMMENT]本当に鳥はやってくるか? このバイオカイトは「バイオ」という名はついているものの、生物的なのはその外観だけで、仕組みは純粋に航空力学的なものです。それをなぜ、この「いきもの通信」で取り上げるのかというと、鳥型のバイオカイトをあげると本物のカラスやトビがバイオカイトを攻撃してくるというのです。へええ、本当かな、本当ならどんなものかな、と思った私はさっそくホームページでバイオカイトのキットを購入したのでした。キットの制作過程については省略します(そう難しいものではありません)。
実際にバイオカイトをあげてみた結果は次のようになりました。
まず、水元公園(葛飾区)の芝生広場。ここは十分に広くて、風も一定して吹くいい所です。カラスのねぐらもすぐそばにあります。ここでは「ナミアゲハ」を上げました。1時間ほど上げていましたが、特に鳥たちの反応はありませんでした。ユリカモメが近くを通過しましたが、偵察に来たのか偶然の通りすがりだったのかはわかりません。やはり鳥型ではないので興味がないのでしょうか。
次に、代々木公園(渋谷区)で上げてみました。ここの池はカラスの公衆浴場ですし、隣の明治神宮は都内最大級のカラスのねぐらです。今回上げるのは「トビ」。カラスの攻撃が期待できます。ところがこの日はほとんど無風。時折いい風が吹くのですが、風向が変わったり突然無風になったりとなかなか安定しません。十分にバイオカイトを上げることができませんでした。カラスたちももちろん無反応でした。代わりに、木の下に置いていた私の荷物にカラスがやって来て中をあけようとしていました(笑)。
ということで、現在のところ鳥類が攻撃してくるという現場にはまだ遭遇していません。また近いうちに試してみたいと思います。その時は改めてこの「いきもの通信」で紹介します。さて、本書の紹介もしておきましょう。本書の内容はバイオカイトの作り方と飛行原理の解説がほとんどで、動物学的な話はまったくありませんのでご注意ください。航空力学の話は専門的なもので、実は飛行機好きの私には面白いものでしたが、興味のない人には少々つらいかもしれません。ただ、ここを我慢して読めば実際に上げる時にはちょっとは役に立つでしょう。
うーん、「いきもの通信」的にはあまり書くことのない本ですよね(笑)。困った困った。
ではバイオカイトについての感想も書きましょう。
私のバイオカイトはホームページで購入したキットを組み立てたものです。バイオカイトは非常に軽く、材料も特殊なものを使っています。機体の紙は一見すると障子紙のようですが、手ではやぶれないほど強く、また非常に軽いものです。バイオカイトは糸も特殊です。凧というと普通は太い凧糸なのですが、バイオカイトの場合は非常に細い糸を使います。あまりに細いので屋外では見失ってしまうほどです(これには困りました)。これだけ細いと強度が心配なのですが、バイオカイトはそれも計算して作ってあります。このミシン糸はバイオカイトを支えるのに十分な強度を持っています。実際に上げてみても糸が切れるような感じはまったくありませんでした。
バイオカイトを実際に上げてみるとその性能の良さには驚かされます。普通、凧あげといえば凧を引っぱるようにして猛然と走らなければいけないのですが、バイオカイトはある程度の風があればまったく走らなくてもするすると上がっていくのです。これはとても不思議、そしてとても気持ちいいものです。ただ、糸目の位置調整や機体のねじれの補正をある程度しなければならないので、慣れないとすぐには上げられないかもしれません。私もまだ試行錯誤中です。最初のうちは風が一定して吹いている場所で上げる方が楽だと思います。
困るのは凧あげができるほど十分に広い場所が近くにないことです。学校のグラウンド程度では狭いと思います。どこかいい場所がないかと地図を眺めたりもしています。最後にバイオカイトの購入や製作のヒントをまとめておきます。参考にしてください。
バイオカイトのヒント ◆買う
・http://www.biokite.com/
ここでキットを購入できます。最初は印刷済みのキットを買うのが無難でしょう。
・ホームページでは「中級者向け」となっている「ナミアゲハ」ですが、初めての私でもあげることはできました。いきなり「上級者向け」は難しいかもしれませんが、「中級者向け」でもそれほど問題ないでしょう。
チョウ型は小さめで、2つ折りするとA4サイズほどになります。トビ、アホウドリは幅がチョウ型の2倍にもなります。
・糸も特殊なものを使います。ホームページでいっしょに買っておきましょう。髪の毛のように細いので大丈夫?と思ってしまいますが大丈夫です。
・現時点では未発売ですが、リールもほしいところです。◆作る
・木工用ボンドで大丈夫か?と思ってしまいますが、これで十分しっかり接着できます。
・木工用ボンドが乾く時間が必要ですので完成までにはちょっと時間がかかります。半日もあれば完成できます。
・シートの残りは破れの補修、バランス調整のしっぽとして使いますので、捨てずにとっておきましょう。
・骨は左右同じ長さに切りましょう。それほど厳密な必要はありませんが、左右対称に作っておいた方が後々の調整もやりやすいでしょう。◆取扱説明書について
・バイオカイトのキットに付属の取扱説明書は少々わかりづらいところがありますのでご注意ください。
・取扱説明書「6罫書き」で「印刷面を内側にして折り曲げ」とありますが、これは「外側にして折り曲げ」だと思います。そうでないと印刷が隠れてしまいますから。
・取扱説明書「7罫書き線の入れ方」ですが、キットに同梱の罫書きサンプル紙に従った方が簡単です。
・取扱説明書「9補強シート」は「8骨の取り付け方」の前にやっておきましょう。うっかり「9」を忘れてしまうからです。
最初に破れるのはこの補強シートの部分ですので、この補強シートは多めに張る方がいいかもしれません。
・取扱説明書「11糸目部品の取り付け方」ですが、本「カラスもびっくり!バイオカイト」p64と少々異なっています。「トビ」の場合は本に合わせた方が良さそうです。「ナミアゲハ」では取扱説明書通りで大丈夫でした。
・取扱説明書「13尾翼」は必要ないかもしれません。私はこれをやっていません。実際に飛ばす時につけても遅くはありません。◆上げる
・何かと調整しなければならないので、工具類、シートの残りなども持っていきましょう。
・従来の凧より性能がいいとはいえ、無風の場合や風向が変りやすい場合はうまくあがりません。ある程度の風が一定して吹く河原や海岸であげるのが望ましいといえます。
・バイオカイトはとても軽いので(そして飛行性能も良いので)、簡単に風に飛ばされてしまいます。最初にバイオカイトと糸をつないでおきましょう。つないだ箇所はメンディングテープでとめておくとなお安心です。
・糸目の位置が重要です。糸目をずらしながら試してみて何度も調整しなければなりません。
・糸を出す時はゆっくり出します。
・落ちそうな時は急いで糸を巻きます。これで揚力を回復できます。