20世紀の最後の10年間で世間一般に広がった言葉に「環境問題」という言葉があります。環境の保全への関心が高まってきたことは良いことなのですが、「環境問題」はあまりにも漠然とした言葉であるため、有名な割にはあまり理解されていませんし、知識も普及していません。
「環境問題」にはどのような事がらが含まれているのか、手元にある「環境六法(平成12年版)」(中央法規)からキーワードを拾ってみました。
地球温暖化、気候変動、オゾン層、有害廃棄物、海洋汚染、石油代替エネルギー、大気汚染、自動車排出ガス、窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素、悪臭、騒音、水質汚濁、下水道、土壌汚染、農薬、廃棄物、ダイオキシン、リサイクル、再生資源、化学物質、公害、鳥獣保護、種の保存、飼育動物の保護、森林
「環境問題」はこれだけではありませんが、代表的なものはこのようなものでしょう。実に多岐にわたるジャンルを含んでいることがわかると思います。よく「環境問題に取り組みます!」と言っている政治家(立候補者を含む)がいますが、これらすべてに精通しているとは思えないこともしばしばです。
上記キーワードの内、動物に関係するものは赤字で示した項目です。環境問題の中では動物はそのほんの一部分でしかありません。「動物問題」=「環境問題」ではないのです。
そう、このホームページは環境問題のホームページではありませんし、私は動物専門家ですが、環境専門家ではありません。そして、私は熱心なエコライフ推進者でもありません(ペットボトル回収ぐらいは協力しています)。
「環境」というと動物あるいは植物や自然環境のことを思い浮かべる方も多いでしょうが、間接的には関係あるとはいえ、直接的な関わりは意外と少ないものなのです。「環境問題」とは非常に広範なものなのです。そしてそれを1人でカバーするのはなかなか大変なことなのです。それでもこれからの時代に「環境問題」は無視できるものではありません。では、この広大な事がらをどうとらえていけば良いのでしょうか。例えば、ゴミ問題やリサイクル、エネルギー消費節約など身近な問題を通して考えていくのは良い方法でしょう。
私自身が「環境問題」にどのようにアプローチしているのかというと、だいたい想像がつくでしょうが、「動物問題を通して環境問題を考える」という方法です。これは「動物が暮らしやすい環境は人間も暮らしやすい環境である」と言い換えることができます。ここで誤解してほしくないのは、これが「原始的な生活をしよう」という意味ではないことです。この「いきもの通信」でも何度も取り上げてきましたが、どんな都会にも多数の動物が生息しているのです。動物が生息しているということはたいていの場合、食物としての「植物」と飲料・繁殖場所・捕食場所としての「水場」が存在することを意味します。例えば東京には緑が少ないと言われ、実際そうではあるのですが、その限られた条件下でも動物たちが生きていけるだけの「植物」「水」が確かに存在するのです。つまりそんな動物たちを守るには、「植物」「水」をも同時に守らなければならないことになります。そうすると次には水質汚濁や土壌汚染も視野に入ってきます。さらには気候変動や二酸化炭素の問題へと展開していくこともあるでしょう。こういったことは結果的には人間の生活の質にもかかわってくることなのです。これが「動物が暮らしやすい環境は人間も暮らしやすい環境である」ということなのです。
このように「動物」から視点を広げることにより、「環境問題」へのアプローチの幅も広がります。これでも「環境問題」全体をカバーすることはできないのですが、ひとつのアプローチ方法としては悪くないものだと私は思います。「環境問題」という言葉は、良く使われるものではあるものの、非常にあいまいでとらえどころの無いものでもあります。「環境問題」への足がかりとなるようなものを何かひとつでも持っていれば、もっと関心を持てるようになるのではないでしょうか。「動物問題」はその足がかりのひとつなのです。