Vol. 146(2002/10/20)

[今日の勉強]ネコは室内で飼いましょう?!

今回はVol. 143の続きです。
国(環境省)による「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」によれば「ネコは室内飼いをしましょう」ということになっています。「そんなの当たり前!」と思う人もいるでしょうし、「外に出してもいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。これがイヌならば、少なくとも家の敷地から勝手に外に出ないように飼うのがはば100%の常識なのですが、ネコの場合は人によって飼い方のイメージがばらばらのようです。
そこで、ネコの生活様式を人間との関わりが大きい方から並べて整理してみることにしましょう。

●室内飼い

ネコが家の中だけで生活するスタイル。ペルシャやシャム、アメショー(アメリカン・ショートヘア)といったブランド猫はほぼすべてがこの飼い方をされている。これは、外で見かけるブランド猫が非常に少ないことからも想像できる。ただ、何らかの理由で屋外で生活するブランド猫もゼロではなく、私が住んでいる高円寺近辺でも何度か目撃したことがある。
室内だけで一生を暮らすのはあまり良くないと思う人もいるかもしれないが、室内飼いのネコは外に出たがらなくなることが多いようだ。また、血統が重要視されるブランド猫ならば外でふらふらしてニホンネコとの雑種ができるよりも、室内飼いできちんと計画繁殖させた方がいいはずである。逆に、ニホンネコにとってもブランド猫との雑種は好ましくないのではないだろうか。

●半野良

主に特定の家で寝食をしているが、外にも出かける生活スタイル。下記の「餌付け猫」との区別は難しいが、「首輪をしている」=「飼い主が所有権を主張している」ということを定義としておこう。昔ながらのニホンネコの飼い方であると言えるだろう。
放任主義には是非があるのだが、首輪を装着しているということは飼い主が責任を負うことを宣言していることでもあるので、まだましな方だろう。
最近は近所付き合いも難しくなってきたため、半野良の自由な行動はあまり歓迎されない傾向があるかもしれない。できれば室内飼いへの移行をおすすめしたい。

●餌付けネコ(人間の管理下)

特定・不特定の人から直接食べ物を与えられている屋外生活スタイル。ポイントは「直接」ということ。私たちが普段「野良猫」と呼んでいるのはこのタイプが多いと思われる。あなたが食べ物をやろうとしても見向きもしないかもしれないが、特定の人からだけ食べ物をもらうネコも多い。ネコの性格もいろいろで、誰にでもなれなれしいやつもいれば、そうでないやつもいるということなのだ。このタイプのネコは定義に幅がありすぎるのでイメージがつかみにくいかもしれない。
食べ物の量や家族・友好関係などもよく把握されているような場合は「地域猫」とも呼ばれることがある。これはこれでひとつの理想的なモデルではあると思うが、地域住民の理解と協力は欠かせない。

●餌付けネコ(人間の管理下にない)

生ゴミなど食べる、あるいは小動物(ペットを含む)を食べるなど人間と顔を合わせないように食料を得ている生活スタイル。ポイントは人間との接触が「間接」であるということ、人間の生活圏で生活しているということ。これもいわゆる「野良猫」になる。
ネコというのは古代エジプトで家畜化されて以来、人間と生活することを運命づけられた動物であり、人間から完全に切り離された生き方はかなり難しい。人間から直接食べ物をもらわなくても、人間社会の中で食べ物を得ているということは間接的に「餌付け」していることと同じことなのである。

●野生猫

人家から離れた山間地などで生活するスタイル。このような例は少ないと思うが、山原(やんばる=沖縄島北部)でヤンバルクイナを食べたり、西表島ではイリオモテヤマネコに感染症をうつしたりしているといわれている(参照)。
ネコの中にもこういうワイルドなやつもたまにいる。が、何か問題が起こった時に駆除するのが最も難しいのがこのグループだろう。
法律的には「ノネコ」と呼ばれるのがこのタイプ。

以上のように生活スタイルを分類してきましたが、このように生活のバリエーションが多い動物というのは珍しいかもしれません。野生動物というものは特定の環境でしか生きられませんし、飼育動物も標準的な飼い方というものがあるのが一般的です。ネコはかなり特殊な動物といえるかもしれません。
社会的な迷惑となる生活スタイルは、野生動物に影響を与える可能性がある「野生猫」とフンや鳴き声で近所迷惑になる「餌付けネコ」です。野生猫は餌付けネコから移行してくるものが多いだろうことを考えると、人間の管理下にない餌付けネコというのはなるべく減らしていきたいところです。やはりネコというのは人間によって作られた飼育動物・家畜動物であり、その暮らしには人間が積極的に関わるべきなのです。そう考えると、室内飼いというのは最も責任ある飼い方と言えるのではないでしょうか。国の方針も間違ったものとは言えないでしょう。
管理下の餌付けネコも悪くはありませんが、この場合はかなりよくコントロールする必要があります。食べ物の量の管理、健康状態のチェック、必要があるなら去勢・不妊手術をさせるなど積極的に手をかけてあげましょう。最も無責任なのは、(適正量も考えずに)エサだけ与える人です。ネコに責任を持てない人はネコにエサを与えるのはやめましょう。


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