先日、テレビの昼の情報番組で、「ハロー」としゃべるカラスが紹介されていました。このホームページでも以前、「わははガラス」「やおやガラス」を紹介しましたが、しゃべるカラスというのは各地で報告例があります。私が知っているものを並べると、
「わはは」「やおや」「あわわ」「オーライ」「まった」「ハロー」「おはよ」「あきこ」「おちゃだよ」「おきろよ」
といったものがあります(一部は佐々木洋・著の「カラスの思惑」(株式会社広美)より)。
これらの言葉を眺めていると、どうやらカラスには発音できる音と発音できない音がありそうなことがわかります。そこで、発音関係のホームページをいろいろ調べてみました。発音できる、できないの違いをその仕組みから分析すると、確かにある法則があるようです。
まずは子音から見てみましょう。
◆か行、が行 口の奥を使った破裂音 発音可能
そもそも「カーカー」と鳴くのだから、発音可能。
◆さ行、ざ行 歯茎を使った摩擦音 発音不可能
鳥には歯がない。つまり、さ行・ざ行は発音できないことになる。
◆た行、だ行 舌と歯を使った破裂音 発音可能?
「まった」の発音ができるところをみると、不可能ではないようだ。
◆な行(+「ん」) 舌と歯を使った鼻音 発音不可能
鳥の場合、鼻の穴はくちばしに開いた穴のようなものなので、人間のような大きな鼻腔空間があるわけではない(種類によっては管状の鼻管を持つものもいる)。よって鼻音の発音は不可能、またはかなり難しいと思われる(実際は可能かもしれない。ま行参照)。
◆は行 のどを使った摩擦音(日本語の場合、「ふ」は唇を使った摩擦音) 発音可能
いくつかの例があり、発音はできる。「わははガラス」は確かに「は」を発音していました。ただし、唇を使う「ふ」については発音できないと思われます(ば行、ぱ行参照)。
◆ば行、ぱ行 唇を使った破裂音 発音不可能
鳥には唇がないので、発音できない。
◆ま行 両唇・鼻音 発音可能?
「な」では鼻音は難しいと書いたが、「ま」行は「まった」のように発音例がある。「ま」行の発音はなんとかできるのかもしれない。
◆や行、ら行、わ行 半母音(「ら」については異説あり) 発音可能
これらは多くの例があり、発音がかなり容易な音だと思われる。
次は母印の場合を見てみましょう。
上記の発音例を分析してみると、「あ」「う」「お」は発音可能だが、「い」が少なく、「え」がないことがわかります。
「い・え」は舌を前の方に出しての発音であり、それが関係しているのではと思われます。カラスは文字通り「舌足らず」なのかもしれません。
これらを50音表にまとめると、発音できる・できないを一覧することができます。以下の表では青は「発音可能」、緑は「発音可能だがやや難しい」、赤は「発音不可能」を表しています。
あ い う え お か き く け こ が ぎ ぐ げ ご さ し す せ そ ざ じ ず ぜ ぞ た ち つ て と だ ぢ づ で ど な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ ば び ぶ べ ぼ ま み む め も ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ や ゆ よ ら り る れ ろ わ ん この表を使えば、カラスがしゃべれそうな言葉がわかるわけです。例えば、「やっほー」「かっこー」「はい」「やあ」「おっはー」「あやや」といった言葉は発音可能とみていいでしょう。
これを読んで興味をもたれた方は、変な鳴き方のカラスに出会ったら、何と言っているのか注意して聞いてみてください。カラスは「カーカー」とばかり鳴くわけではないのです。
また、「しゃべるカラス」といううわさ話があったとして、それが真実かどうか判定できる目安になるでしょう。まあ、カラスを徹底的に訓練すればかなりしゃべれるようになるのかもしれませんが、普通のカラスがしゃべれる範囲は上記のもの程度だと考えていいでしょう。
追記
2003年12月14日放映の「どうぶつ奇想天外」で、「こんにちは」「おかあさん」「へーくしょん」としゃべる例が紹介されていました。「さ」行を発音できていますね。そして、「な」行、「ん」もしゃべってる。「え」段の発音もありますね。このカラスは人間にかなりなついています。訓練すればかなりしゃべれるのかもしれませんね。