昆虫は地上に生息する動物の中では最も繁栄しているグループです。その体の特徴は「6本脚」であることで、これはすべての昆虫に共通する最大の特徴です。
しかし、4本脚のチョウというものがいるのです。写真をご覧ください。これはゴマダラチョウというチョウです。見ての通り、見えているのは脚が2本だけです。反対側にも脚は2本で、計4本しかありません。脚がとれたのでは?と思われるかもしれませんが、そうではありません。
種を明かしますと、このチョウはちゃんと6本の脚があるのです。前脚はたたんで胴体にぴったりとくっつけているため、4本にしか見えないのです。このたたんだ2本は実際使用することはないらしく、4本脚だけで生活できるようです。
4本脚のチョウはゴマダラチョウだけではありません。私が実際に確認したものではヒメアカタテハもそうです。この他にも本の写真で確認できたものではキタテハ、コノハチョウも4本脚でした。これらのチョウには何か共通点があるのでしょうか。実は、これらのチョウはどれも「タテハチョウ」の仲間(タテハチョウ科)なのです。タテハチョウすべてが4本脚なのか、一部だけなのかは私はわかりません。タテハチョウ以外はどうなのかもはっきりません。このようなことを調べた人はおそらくいないと思います。こうなると片っ端からチョウをつかまえて調べるしかありません。う〜ん、また今後の課題が増えてしまった…。
ちなみに、タテハチョウの仲間には、ルリタテハ、クジャクチョウ、ヒョウモンチョウ、オオムラサキ、イチモンジチョウ、ミスジチョウなどがいます。大きさはモンシロチョウあたりと同じぐらい。茶・黒系の派手な模様。羽の先がギザギザになっている。といったことが特徴ですが、これらに当てはまらない場合も多いので、図鑑で確認してください。さて、これらのチョウが4本脚でも生活できるのはなぜでしょう。
チョウの移動手段は飛翔であり、長距離を歩くことはありません。つまり、脚は着陸する時に何かにつかまる役割しか持たないのです。それならば、脚は4本あれば十分で、6本もある必要はないわけです。
長い長い時間がたてば、使わない2本の脚は退化して消えてしまうかもしれません。そうなると本当に4本脚の昆虫が出現するわけで、これは生物学的にも驚くべき大ニュースになるでしょう。ところで、4本脚のチョウについて、こういう話を聞いたことがあります。
ある小学生があるチョウの脚を数えて、脚が4本あると書いたそうです。それを見た先生は昆虫は6本脚に決まっているだろう、と訂正させようとしたとかいう話です。これ以上詳しいことは知らない話なのですが、自然観察でのポイントをついている話と言えるのではないでしょうか。小学生の観察眼は確かなものでした。先入観にとらわれず、見たものをありのままに記録することは大切なことです。先生の方は知識を優先させ、観察するという大切な行為をおろそかにしたため、この面白い事実を見落とすことになりました。先生も生徒といっしょになって、報告を実際に検証するぐらいはした方が良かったでしょう。そうすれば、実はやっぱり6本脚であること、しかし2本は使われていないことがわかったことでしょう。