動物問題や自然環境問題のことを考えていて時々思うのは、なぜこういったことが広く感心を持たれないのだろうか、ということです。以前より理解されるようにはなっていますが、それでもなかなかこちらの考えが伝わらないことは多いものです。
で、あれこれ考えて思いついたのは「これって福祉の世界と同じかも」ということでした。以下、思いつくままにつらつらと。
・広大なジャンル
動物問題・自然環境問題はカバーする範囲がとにかく広いです。動物に限っても、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、魚類、昆虫、その他多数の生物がいます。生物全体では、これらの動物の他に植物や菌類、その他の微生物やウィルスも加わります。生物以外でも、水質、土壌、化学物質、気象というジャンルがありますし、当然、政治的な問題もからんできます。
福祉もやはり広大な領域を持ちます。メインは医療と介護なのでしょうが、医療だけでも内科、外科、…と数多く、介護も在宅とか施設内とか、共同住宅のようなものとかありますし、予防とかリハビリとかもありますね。対象となるのも病気の人だけでなく、子ども、障害児者、高齢者とさまざまです。医療・介護以外にも、生活困窮者への支援も福祉の領域です。そういえば、年金なんかも福祉の領域なんでしょうか?
どちらもひとりの人間が全部を理解するのはかなり困難な世界です。つまり、全体像をつかみにくいということでもあり、なかなか理解されないということでもあります。・いまだ誤解も多い
全体像をつかみにくいということは、時に誤った定説を産むこともあります。福祉なら「親の世話は子どもが家でやるべきだ」。自然保護なら「動物にはエサを与えよう」。こういった誤解は一見もっともらしいため、それを論破するには苦労します。
・直接関係がないと関心が薄い
福祉の世界でよく聞かれるのが「自分が、あるいは身近な人が困った状況になって初めて問題に気づいた」というものです。自然保護でも、遠い遠い国の動物が大変だ!といってもなかなか関心は持てないでしょう。
問題が身近に感じられないと関心を持てない、というのは当たり前とはいえ、真剣に取り組んでいる人にとってはつらいものです。・地域密着型
「身近でないと関心を持てない」ということは、それに取り組む側にもいえることで、福祉団体とか自然保護団体というものも、地域密着型が多いものです。福祉団体の場合は、地方自治体の管轄に関係があるのかもしれませんが。ただ、地域密着は悪いことばかりではありません。その地域の慣習とか人的関係とかありますから、それをふまえての活動の方が効率もいいでしょう。自然保護の場合は、やはり地元が一番よくわかっているはずですし、日常的に監視できるのですから、地域密着は理にかなっています。
しかし、これはまた、全国的な広がりにつながりにくいということでもあります。・ビジネス的利益追求とは縁遠い
福祉も自然保護も、(金銭的)利益追求を求める世界ではありません。福祉は健康な生活を、自然保護は豊かな自然環境を希求するものです。
介護保険の導入前後に、ビジネス的アプローチが見られましたが、それでがっぽりもうかっている人なんていないのではないでしょうか。
自然保護の場合も、自然を守るよりも壊す方が金銭的にもうかるらしく、今日もあちこちで自然は壊され続けています。・政治的利権とも縁遠い
金銭に縁遠いということは、政治家もあまり関心を持ってくれないということでもあります(笑)。いや〜、政治の世界ってわかりやすいですね〜。そして、このことはつまり、政治的な発言力も弱いということです。(厚生労働省が強いのは、金回りの良い医療業界が配下だからだろうか。でも、末端の小さな声が届いているようには見えないんですよね。)
福祉の方が人間生活に直結するだけにまだ関心は高いのですが、自然保護は直接的利害が見えにくいものですから政治的立場はかなり弱いものです。そういえば、環境省の予算額を調べてみたんですが、環境省ってすっごく貧乏なんですね。うーん、これでいいのか?
こういう風に、福祉と自然保護は似ている所が多いよなあと思ったわけで、福祉の世界のことが自然環境問題などでも参考になるかもしれません。
今回はまとまりのない話になりましたが、こうやってまわりを眺めてみるのも悪くはないかなあ、と思うのです。それに、こういった発想がいつかどこかで何かのヒントになるかもしれません。