Vol. 209(2004/2/8)

[今日の事件]動物園の動物の食費を寄付してもらう制度

それでもやっぱり動物園は必要

[ON THE NEWS]

東京都の上野動物園と多摩動物公園は、4月から「動物園サポーター制度」を始める。これは好きな動物を指定し、その動物のエサ代を寄付してもらう、という制度。このような制度は海外では広く行われているが、国内では到津(いとうづ)の森公園(北九州市)が導入しただけ。
上野動物園の場合、年間エサ代第1位はパンダ(約580万円)。ゾウは約280万円、ライオンは約90万円。全体では約1億2000万円になる。運営費は約20億円。
(SOURCE:2004年1月24日 朝日新聞(東京版)夕刊)

[EXPLANATION]

動物園というと、20〜30年も昔ならデートとか家族の娯楽とかで人気のある場所でした。バブル景気の頃からは、他にもいろいろな娯楽スポットが出現し、動物園や水族館の人気は低迷が続いています。動物を眺めるよりももっと楽しいことがいっぱいありますからね〜。
私立の施設は、あれやこれやとイベントを開催して入場者を確保しようとしていますが、公立の施設ではそういう商売力が不足しているので財政的にはかなりきついところが多いのではないでしょうか。公立は税金をあてにできるので、経営に緊張感が足りないのではないかと思います。
立地場所も良く、パンダがいる上野動物園は、公立動物園の中でもかなり恵まれている方だと思いますが、それでも運営費の半分は都の予算からもらっているそうです。こんな現状の中では、「動物園サポーター制度」というのも悪くないかもしれません。いや、経営努力の必要性を自覚するためにも導入すべき制度と言えるかもしれません。「公立の施設にそんなものを求めるのはおかしい!」という意見があるかもしれませんが、教育施設というよりも娯楽施設と見なされるのが動物園です。公共性という点ではどうしてもランクが低くなりがち、いつ切り捨てられるかもしれません。やはり自助努力は必要でしょう。

この制度で気になるのは、特定の動物に人気が集中しそうなことです。上野動物園の場合、ズバリ言うと、パンダに集中しそうです。まあ、パンダは食費も高いので悪い話ではないかもしれませんが…。続いて人気がありそうなのは、アジアゾウ、インドライオン、スマトラトラ、ペンギン3種…あとはキリンにホッキョクグマにゴリラに…。まあ、だいたい誰もが思いつきそうな動物ですね。こういう動物には寄付も多そうです。
だけど、私としましてはもっとマイナーなやつこそ応援したいですね。そこで、私が応援したい動物は何かというと、「マンドリル」と「ハシビロコウ」です。マンドリルとは、サルの仲間で、顔がとても強烈なやつです。特にオスの顔はインパクトがあって、初めて見ると「うおっ」とのけぞってしまうぐらいです。私は、マンドリルは男前な顔だと思ってますので大ファンです。もうひとつのハシビロコウは、ほとんど無名の動物ですが、コウノトリの仲間です(つまり鳥)。「ハシビロ」とは、「くちばしが広い」という意味。体の大きさはフラミンゴやダイサギと変わらないぐらい大きいので、そのくちばしの幅も広いのです。こんな奇妙なくちばしは他に見たことがありません。おそらく、世界一くちばしの幅が広いのではないでしょうか。

*マンドリルとハシビロコウが気になる方は、googleのイメージ検索で画像を探してみてください。

もっとも、非常に貧窮している現在の私では寄付金も出せないのが残念です(T_T)。誰か私の代わりに彼らに寄付してあげてください。
もっとマイナーな動物がいいという方には、「ドール」と「シュモクドリ」を推薦しておきます(これもどんな動物か気になる方はgoogleで調べてみてください)。

ただ一方で、そもそも動物園は必要なのか、という議論もあります。経営も苦しい。来る人も減っている。それに、動物を狭い所に閉じこめるのが動物にとって幸せなのか、という意見もあります。横浜のズーラシアのように生息環境を再現する展示ならばそれほど問題はないのですが、狭い場所に多数の動物を入れている劣悪な施設も存在します。そんな施設は徹底的に改善を求めねばなりません。
こういった動物園不要論に対しても、私は「やっぱり動物園はあった方がいい」と主張します。やはり「本物」を自分の目で見るという経験は他のもので代替できないことだからです。図鑑やテレビでは、動物の実際の大きさはわかりません。また、実物が目の前にあればそのフォルム(形態)の詳細をじっくり見ることができます。
もうひとつ、動物園にいる動物の種類も重要です。日本の場合、普通の生活の中で見ることができる動物(飼育動物を除く)は、鳥か昆虫がほとんどです。哺乳類や爬虫類、両生類もいることはいるのですが、そうしょっちゅうお目にかかれるわけでもありませんし、種類数も限られています。そして、動物園にいるのは普段はお目にかかれない哺乳類や爬虫類、両生類といった動物たちなのです。動物の世界の広がりを実感してもらうためにも動物園は必要なのです。

ということで、今日の結論は「動物園へ行こう!」ということになるわけなんですが、「行っても面白くないし〜」という人も多いでしょうね。確かに、漫然と歩いているだけでは得られるものも少ないでしょう。動物園側も解説展示・解説員の充実に努めていますが、まだまだ満足できるレベルではないでしょう。動物の面白さ・不思議さなどをお客さんに伝える努力が動物園には今求められているのです。
まあ、私が「動物がもっとよくわかる動物園ツアー」をやってもいいんですが、どうでしょうか。希望者いますかね?


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