Vol. 225(2004/6/20)

[今日の事件]鳥インフルエンザ騒動を総括すると 2003年度版

さてさて、鳥インフルエンザがマスコミに登場しなくなってからずいぶん時間がたってしまいました。今回は鳥インフルエンザ騒動について総括しておきましょう。


今回の鳥インフルエンザ騒動、そして同様にSARS騒動についても言えることですが、「いったい何が危険なのかわかりにくかった」というのが大多数の方々の感想ではないでしょうか。私もまったく同感です。特に鶏卵、鶏肉などのニワトリ関連商品は食べても安全なのかどうか、食品業界やマスコミの説明を聞いてもわかりづらかったのではないでしょうか。結局のところ、業界やマスコミの説明を信じるしかないのですがね。
ただし、今年の知識・経験が来年も役に立つと思うのは大間違いだということは忘れないでください。来年現れる鳥インフルエンザ・ウィルスはまた異なった感染力を持つ可能性はとても高いです。もし、感染力が強く、症状も重い場合、今年と同じ程度の対策では大流行を阻止できないでしょう。
「去年はこうだったから」と過去の経験に安心することなく、最新の情報には注意を払うようにしてください。


鳥インフルエンザ騒動の多くは「感染症」つまり人間生活にかかわるものと受け止められていました。しかし、実際に感染しているのは鳥を中心にした動物でした。ですから、この騒動は動物事件なのだと考えた方がいいとも考えられます。

動物事件的に見ると、今回の騒動は「動物が悪役にされてしまう」構図となっています。
そもそも、鳥インフルエンザは鳥が主な感染ルートです。感染ルートの詳細は結局はわからずじまいでしたが、鳥が関係していることは否定できないことです。感染したカラスが死亡したために、媒介者としてカラスが疑われたこともありました。それでも、鳥が不当に悪役の汚名をきせられることはありませんでした。
ただ、このパニックがカラス問題で苦闘している東京で発生した場合、「カラスをもっと殺せ」という大合唱になりかねない恐ろしさが予感されます。もし、感染力が異常に強かったならば、事実関係を無視してこのようなパニックが本当に起こるかもしれません。
もしそのようなことになっても冷静に考えてみてください。カラスが危険というならばスズメやドバトやカルガモだって同じぐらい危険と想定すべきなのです(ハクビシンが危険ならイヌやネコも危険なのです!)。それでもあなたはスズメを、カルガモを殺しますか? 鳥を殺さなくても問題を解決する方法はないのでしょうか? こういう時こそ、反射的な(あるいはヒステリー的な)反応を抑えて、落ちついた状況分析が求められるのです。

実際問題として野鳥による感染が疑われる場合、まずやるべき対策のひとつは「エサを与えない」ということです。エサをあげないで餓死させようというのではありません。エサを与えると、過剰に野鳥が集まり感染の可能性を増やしてしまうからです。そして、その中心にいる人間にも感染するおそれがあるのです。
エサやりの危険性については今回の騒動でも注意すべき点でしたが、このことを指摘したマスコミは無かったように思います。
まあ、あれだけ騒がれたのですからエサやりに集まる鳥を不気味に思う人もいたかもしれません。ところがエサやりをする人間にはそういう想像力が無いらしく、いまだにエサを与える人が絶えません。これは不思議な現象です。

なお、鳥インフルエンザに関係なくエサやりはそもそもすすめられることではありません


最後に、次の冬に向けての心構えを復習しておきましょう。

・ウィルスは常に変異しており、過去の経験・教訓が役に立たないことがある。最新の情報に注意するように。

・「確実な情報」と「根拠の無い噂」はきちんと区別しよう。信頼できる情報源を識別できるよう、日頃からメディアの信頼度を自分で格付けしておくのも良い。


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