Vol. 320(2006/6/11)

[OPINION]自然の音に耳をすませて

最近、iPodに代表される携帯オーディオを持っている人はとても多いようですね。通勤の時に観察するとあちらにもこちらにもイヤホンをしている人がいます。若い人だけでなく、けっこう年配のおじさんおばさんがイヤホンを耳にしている姿もよく見かけるようになりました。かつてのウォークマンの時でもここまでは普及していなかったように思います。やはりiPodは画期的な製品だったと言えるでしょう。携帯オーディオはiPodだけではないのですが、観察したところによると半分以上はiPodのような印象があります。本体はポケットに入っているのになぜわかるのかって? イヤホンでわかるんですよ。iPod付属のイヤホンをそのまま使っているのですぐにわかるのです(私は絶対に付属イヤホンは使わない主義)。ちなみにソニーの場合はリモコンの形状ですぐにわかります。
私もiPodは持っています。携帯オーディオ製品はいろいろとありますが、私はMacユーザーなのでiPodが最適の選択なのです。iTunesもバージョン1の頃からのヘビーユーザーです。家での作業中はたいてい音楽を聴いています。

そんな私ですが、屋外ではiPodは絶対使わないことにしています。
バードウォッチングが好きな方はその理由はおわかりでしょう。屋外ではあちこちから鳥の鳴き声が聞こえてくるからです。野鳥観察というとまず双眼鏡を首からぶら下げた姿が連想されるのが普通なのですが、実際は双眼鏡を使う前に、鳥を見つけ出さなければなりません。適当に双眼鏡をのぞいていれば鳥が見えるというものでもないのですよ。鳥を探すには、肉眼で探すのは当然ですが、鳴き声の方向を頼りに探すこともあります。鳥の姿が見えなかったとしても、鳴き声からその鳥の種類はわかりますので、鳴き声に注意するのは自然観察の定跡です。
でも街中には鳥なんかいないだろう? と思われる方もいるでしょう。またまたいつもの私の口癖ですが、街中には動物なんていないという思い込みは捨ててください。スズメ、ハシブトガラス、キジバトといったおなじみさんはいつもいますし、ツバメ、ヒヨドリ、ムクドリ、メジロ、オナガなどなど、住宅街にはたくさんの鳥たちがやって来ます。街中でもよく耳をすましていれば、スズメの巣やねぐら、ツバメの巣などを発見することができるはずです。
鳥の他には虫の鳴き声も聞こえてきます。夏のセミはうるさいだけかもしれませんが、これもよく聞いてみると鳴き声からセミの種類を聞き分けることができます。ニイニイゼミなんかは声量も小さくてメリハリのない鳴き方ですので、意識して聴かないとわかりにくこともあります。
秋になればコオロギの仲間たちが鳴きます。コオロギも種類によって鳴き声は違うのですよ。小さな声で「チ・チ・チ・チ…」と鳴くのはカネタタキ。これは静かな環境でないと聞こえてきません。

このように、外の世界ではあちらでもこちらでも動物たちの声が聞こえてくるのです。イヤホンで耳をふさいでしまって聞き逃すのはとてももったいないことです。

さすがにビル街の雑踏、地下道、地下鉄の中では動物の声は聞こえません。しかし、耳で空間を感じているのは確かです。イヤホンで音楽を聴きながら雑踏を歩くと、どうも歩きにくいと感じることがあると思いますが、それは周りの音から空間を感じることができなくなるからでしょう。自然環境が豊かな場所でも、草原のように開けた場所と森の中では耳で感じる空間は違って聞こえるものです。そういう空間認識力をきたえるためにも、外ではとにかくイヤホンはしないことにしています。
みなさんももっと外の音を聞いてください。自然が好き、アウトドアが好きと自称するならば、屋外でイヤホンをするなんてやってはいけないことだと思いますよ(笑)。

そんな私でも外でiPodを使う例外があります。それは新幹線の中。私は実家が福岡ですので新幹線で帰省します。東京から博多まで約5時間(昔は7時間、だったかな)、その間はずっと閉じた空間にいなければならないわけです。しかも自然環境の音は聞こえてきません! これはかなり苦痛で、眠るか音楽でも聞いて気をまぎらわせるしかないわけです。これは飛行機や高速バスでも同じです。こういう状況なら携帯オーディオを使ってもOK! ただし、まわりに迷惑にならないように音漏れには注意しましょう。


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