前回に続いて狩猟免許の話です。今回は狩猟免許取得までの手順や勉強方法などについて紹介しましょう。
※以下の文章は東京都の場合のものです。自治体によっては多少の違いがありますのでご注意ください。
●試験の申し込み
まず、狩猟免許の試験のチャンスは年に1回です。東京都では区部と多摩地区それぞれ1回、計2回の受験チャンスがありますが、いずれも9月に行われるので事実上年に1度のチャンスなのです。
試験が行われるのが9月である理由は、狩猟免許の更新日が9月15日と定められていること、狩猟期間が毎年秋に始まること、という理由からと思われます。(自治体によっては7〜8月に試験があることもある、らしい。)
試験の日程は7月ごろには発表されますので、この頃は東京都のホームページで新着情報に注目します。また、猟友会が開催する講習会の案内も発表されますので、東京都猟友会のホームページもチェックします。
申し込みは、都道府県の指定の窓口に直接行きます。東京都では都庁舎(環境局自然環境部)の他、多摩環境事務所や大島、三宅、八丈、小笠原の各支庁でも受け付けています。手数料は5300円。
提出する書類には医師の診断書が必要で、これはいつも行っている近所の病院で作成してもらいました。統合失調症、そううつ病、てんかんの症状がないこと、麻薬などの中毒者でないことなどが記載されている必要があります。
狩猟免許試験の勉強のために、猟友会が開催する講習会にも参加した方がいいでしょう。
この講習会に申し込むには、まず東京都猟友会に電話して資料を送付してもらいます。それから申し込み用紙を郵送、受講料を振込するのですが、東京都猟友会は秋葉原にあり、私はちょうど秋葉原に行く機会があったので直接申し込み手続きに行きました。東京都猟友会は、ヨドバシカメラ近くの昭和通りを北に歩いていったところにあります。看板も出ているのですぐにわかるでしょう。
受講料は12000円です。
申し込み時には講習会のテキストである「狩猟読本」と「図解・狩猟免許試験例題集」をもらえます。これでちゃんと予習をしましょう、ということですね。
●講習会
講習会は東京では狩猟試験の1週間前に、試験会場と同じ場所で開催されます。試験直前、ということで、受講者の皆さんの真剣度も高かったように見えました。
東京で狩猟免許を取る人なんているの?と思われる方も多いでしょうが、講習会には約100人が来ていました。免許は全国共通なので、東京都内でしか狩猟できないわけではありません。実際にはほとんどが東京の外で活用しているものと思われます。
講習会は、午前はテキストを使ってのポイントとなることがらの講義です。鳥獣保護法に関することが中心で、話す項目も多く、かなり駆け足の内容でした。
午後は実習科目の講義です。私は「網・わな猟」なので、猟具の取り扱いを勉強しました。猟具の設置方法も実際に試してみることができます(といっても、とらばさみだけですが)。また、狩猟鳥獣の判別の講義もあります。
「銃猟」の方は銃の点検や分解組立、取り扱いなどなどやることがかなり多く、4時間かけてみっちり講義があるようです。
●試験勉強のやり方
さて、試験勉強のやり方についても書いておきましょう。私の場合は、試験前1週間で猟友会配布の例題集を一通りやっただけでした。私は動物法関係はよく知ってますし、動物についての知識もあります。よって、試験勉強は自分の知識の再確認、という感じでした。まったくの初心者が挑戦するには少々壁は高いと思いますが、それなりに知識があればそれほど難しくはないでしょう。
試験(午前の知識試験)の内容は、おおざっぱに言うと「鳥獣保護法」「鳥獣」「猟具」の3つです。
「鳥獣保護法」は、とにかくテキストと例題集をきちんと読むことに尽きます。
「鳥獣」は、狩猟鳥獣についての基礎的な知識が必要となります。例えば、分類、大きさ、生態などのことで、けっこう細かい出題もあります。これらの鳥獣について知っているならそれほど苦労はしないでしょう。鳥は、バードウオッチングが好きな人なら楽勝というレベルです。逆に、予備知識がない人にはちょっと苦しい分野かもしれません。分類の出題も普通の人には難しいかもしれません。私について言えば、キジ類の知識がないのでそこを改めて勉強しました。東京都23区内にはキジなんかいませんからね。
「猟具」についてもテキストと例題集で勉強です。これは私にとっては未知の分野です。ただ、猟具の種類は限られているのでそう難しくはありません。「網・わな猟」は猟具もシンプルでわかりやすいのですが、猟銃の場合は覚えなければならないことがかなり多くあります。銃の仕組み、メンテナンス、持ち方、休憩時の銃の置き方…等々。テキストを眺めただけでもずいぶんな量でした。
●試験当日
さて、いよいよ試験当日です。
試験会場に行くと、試験官は都の担当部局職員でした。なぜわかったかというと、カラス関係でよくマスコミに登場している方がいたからです。猟友会は試験の補助の役割を担当しているようでした。
受験者は全部で90人ほどでした。ちなみに女性はいるのかというと、数は少ないものの10人前後はいたように見えました。
まず午前は知識試験です。これは3択問題が30問あります。時間は90分。
試験終了後、30分ほどで結果発表があります。70%以上正解で合格になります。ここで合格しなければ午後の試験に進むことはできません。
結果発表は免許毎に貼り出されますので、ここで初めて「網・わな猟」の受検者数がわかりました。「網・わな猟」受験者は十数名でした。「第2種銃猟」(空気銃)は1名だけでしたので、残りの70数名は「第1種銃猟」ということになりますね。前週の講習会での様子からは、「網・わな猟」受験者のうち半分ほどは既に第1種銃猟免許を持っている方のようでした。
午後は最初に適性試験があります。視力はおなじみの検査装置を使います。聴力は特に装置は使わず、通常の聴力があれば問題ないようです。運動能力は、簡単な動きをやってみるだけのものです。
次は技能試験です。網・わな猟の場合は、「猟具の判別」「猟具の架設」「鳥獣の判別」を行います。1人ずつ部屋に入って試験をこなします。これらすべてで10分もかからない程度です。
午後の試験は以上で終了。私は順番が早かったので早々に帰ることができました。第1種銃猟の方はもっと課目が多く、時間もかかるようです。
合格発表は同じ週の金曜日にあります。郵便での通知を希望した人には前日に結果が届きました。私は金曜にさっそく都庁に行って、免許の交付を受けました。
というのが狩猟免許試験取得までの流れです。
狩猟試験は、普通は合格率は90%程度という比較的やさしい部類に入るものですが、まったく予備知識がない人にとっては少々難度が高いと思います。また、狩猟免許ははっきりとした使用目的がない場合はまったく無用のシロモノです。資格マニアのような人がいるかもしれませんが、免許を行使しないのなら初めから免許を取るべきではないと思います。
猟銃を所持する場合は別の法律(銃刀法)でさまざまな制約が課されることになります。この点からも、必然性の無い免許取得はおすすめしません。