Vol. 393(2008/1/20)

[今日のいきもの]シジュウカラは「四十雀」・名前に数字がついた鳥

私は昨年40才になりました。
40才といえば、黒澤明監督の映画「用心棒」の名セリフを思い出します。主人公の侍が名前を聞かれてこう答えます。
「ん?…俺か。俺の名前は桑畑三十郎。もうそろそろ四十郎だがな。」
いや〜、名セリフ。
これが自然関係、特に野鳥関係の人になるとこうなります。
「私も今年でシジュウカラ(笑)。」
わからない人には理解できないギャグですね。

シジュウカラはスズメ大の鳥で、都市でもよく見られる種類です。東京都23区内でも普通に見られます。胸の黒い模様は「ネクタイ」と言われることもあります。鳴き声はいろいろあるのですが、春先に「ツピツピツピ」と大きな声で鳴くのはよく知られているのではないでしょうか。
さて、そのシジュウカラですが、漢字で書くと「四十雀」と書きます。40のスズメなのです。「私も今年でシジュウカラ」というのは「40」をひっかけてのしゃれなのです。ですが、「四十雀」というのは「40才になったスズメがシジュウカラ」という意味ではありません。これは「シジュウカラはスズメ40羽の価値がある」という意味なのだそうです。ええ〜?、シジュウカラにはそんな価値があるかな〜、という疑問があるのですが、皆さんはどう思われますか? 20雀ぐらいだ、とか、いや12.75雀である、とかいろいろ見解がでそうですね。しかし、それよりも価値の単位として挙げられたスズメがなんだかかわいそうに思えるのですが…。

シジュウカラに似た名前の鳥に、ゴジュウカラがいます。漢字で書くと、ご想像の通り「五十雀」となります。シジュウカラより価値があるから「50雀」というそうです。 山の方に行かなければ見ることはできないので、確かにシジュウカラより価値があるかもしれません。
「雀(カラ)」の名前がつく鳥は他にもコガラ、ヤマガラなどがいます。分類上ではスズメ(ハタオリドリ科)とは異なる鳥たちですが、昔の人はスズメと同じぐらいの大きさの小型の鳥をまとめて「カラ」にしてしまっていたようです。

数字そのものが名前になった鳥もいます。その名も「ジュウイチ(十一)」。なぜ「ナンバー11」なのかというと、鳴き声が「ジュウイチ」だからです。ストレートな命名ですね。直球すぎるぐらいです。ジュウイチはホトトギスの仲間で、山地に夏やって来る夏鳥(渡り鳥)です。私はまだ鳴き声を聞いたことがないのですが、いつか聞いてみたいものです。

モズは漢字で「百舌」と書きます(「鵙」とも書く)。二枚舌もびっくりの百枚舌なのです。その意味は文字通り他のいろいろな鳥の鳴きまねをすることからきています。バードウォッチャーは鳴き声から鳥の種類を判別することがよくあるのですが、鳴きまねをするモズはまぎらわしい鳥です。

ヤイロチョウ(八色鳥)は、これもまたその名の通り「8色の鳥」という意味です。これは実際に写真を見ていただくとよくわかるカラフルな鳥です。ただ、今数えてみると、黒、白、茶、緑、青、赤、の6色ぐらいしか判別できません。実際は何色なのでしょうねえ。単に「たくさんの色」を「八色」と例えたのかもしれません。
ヤイロチョウは夏に飛来する夏鳥です。

サンコウチョウ(三光鳥)も名前からは3色の鳥のように思えますが、そうではありません。花札とも関係ありません。これは「太陽」「月」「星」という空に輝く3つの光を指しています。それがなぜサンコウチョウと関係があるのかというと、その鳴き声が「月(ツキ) 、日(ヒ)、星(ホシ)、ホイホイホイ」と聞こえるからなのです。
サンコウチョウも夏に飛来する夏鳥です。

ミツユビカモメ(三指鴎)は名前の通り3本指のカモメ…と言いたいところなのですが、これにはちょっと解説が必要です。鳥は基本的に4本指です。前向きに3本、後ろ向きに1本の指があるのが普通です。ところが、後ろ向きの1本が短くなっているグループも存在します。それがカモメです。他にもカモやツル、シギ、チドリもそうですね。ミツユビカモメの場合は、その後ろ向きの指が退化してしまって無いように見える(実際にはわずかに見えるようです)、つまり前向きの3本しかないのでミツユビ、というわけです。
鳥の後ろ向きの指は木の枝にとまる時に重要な役割があります。つまり、前向きの指と後ろ向きの指で枝をがっちりつかむことができるのです。ですから、後ろ向きの指が短い鳥たちは木の枝にとまることができないか、できたとしても安定性が高いとは言えません。「松に鶴」(松の木の枝にツルがとまっている)という言葉がありますが、これは現実には不可能な光景なのです。これは実際にはコウノトリなのだろうと言われています。カモ類は時々水面近くの低い木の枝にとまっていることがありますが(例えばオシドリ)、枝をつかんでいるのではなく、枝の上でバランスを保っているだけです。
後ろ向きの指が短いのは、その指の必要性が少ない生活をしてきたために、どんどん短くなる方向に進化してきたから、と説明できるでしょう。動物のフォルム(形状)にはそれなりの意味があるのです。

ゴイサギは「五位鷺」と書きます。なぜ「5位」なのかと言うと…これについては「Vol.312[今日のいきもの]ゴイサギの首は短いか」で書いていますので、そちらをご覧ください。


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