今回の話は過去にもちょっと取り上げていますが、あらためて解説することにします。
動物が何か問題を起こした時、あなたはどこへ通報しますか?
動物の問題といってもいろいろありますが、タヌキの場合だとこんな具合です。
「弱ったタヌキをつかまえた」「親からはぐれた子タヌキを見つけた」「毛が抜けたタヌキがいる」「タヌキが畑を荒らす」「タヌキが庭にフンをする」などなど…。これらのほとんどは、そのまま放置してかまわないものです。どこにも通報する必要はありません。
それでも通報するならば、適切な行政の窓口はどこでしょうか?
こういう場合、たいていの人が思いつくのは「保健所」「警察」「区市町村」「消防」といったお役所のようです。しかし、これはすべて間違っています!
順に説明していきましょう。
まず保健所です。
保健所は都道府県の管轄です。
東京都23区の場合は区が管轄しています。例えば千代田区は千代田区役所です。
千代田区
保健福祉部・千代田保健所
23区以外は複数の自治体を管轄する保健所があり、これは都の福祉保健局の管轄です。
これらのホームページ、あるいは読者の皆さまの地元の保健所のホームページをご覧になってください。大半の保健所では動物はまったく扱っていないはずです。ただ、地域によっては現在も保健所で扱っていることもあります。
扱っている・扱っていないが混在しているのには理由があります。
飼育動物についての基本的な法律、それが「動物愛護法」です。同法が2000年の改正で「動物の愛護及び管理に関する法律」と法律名が変わった後、飼育動物の担当は保健所から専門の「愛護センター」への業務移行が各地で進められました。これは飼育動物の問題を専門の部署で取り扱おうということです。多くの自治体では「愛護センター」(あるいは同等の役割の部署)への移行が完了していますが、地域によっては現在も保健所が担当している所も残っている、というわけです。大都市では「愛護センター」への移行はほぼ完了しているようです。
ですので、動物のことを保健所に持ち込むのは(だいたいの場合)正しくないのです。
もうひとつ重要なことがあります。「愛護センター」(あるいは一部の保健所)で扱うのは飼育動物のみです。野生動物はまったく扱っていません。(野生動物の担当部署については後述します。)
次に警察です。
そもそも、警察は動物の担当ではありません。困ったことに、警官の皆さんが鳥獣保護法や動物愛護法を理解してるわけではなく、見当外れの対応をすることがあります。
また、捕獲した(保護した)動物が警察に持ち込まれることがありますが、警察は動物飼育の専門家でもありません。これは素人に動物の世話をさせるようなものです。安心して任せられません。
動物を預けるならば、飼育施設と獣医師がそろっている場所、例えば動物病院に任せるべきでしょう。
次に市町村。
飼育動物の担当は都道府県が管轄する愛護センター(または保健所)、野生動物は後述するように都道府県の担当です。
つまり市町村には何の権限もありません。
そして消防です。
これはどう考えても担当ではありません。消防の仕事は消火であり救急です。人命救助といってもいいでしょう。
ただし、危険な場所にいる動物を救助するなど特殊な場合は消防隊員の技能が要求される場合があります。これは本来の職務ではありませんが、出動をお願いすべき状況もまれに発生するでしょう。その場合でも都道府県あるいは愛護センターの指示の元で作業すべきです。
「保健所」も「警察」も「区市町村」も「消防」も動物の担当ではない、ということはおわかりいただけたでしょうか。
では、正しい担当部署はどこになるのでしょうか。
飼育動物の担当は、上にも書いたように愛護センターです。ネットで調べるなら都道府県のホームページから探してみましょう。東京都の場合は東京都動物愛護相談センター(東京都福祉保健局)です。
なお、「飼育動物」というのは主にイヌ、ネコのことになります。もちろん他のペットも対象になります。
野生動物の担当は都道府県です。これは鳥獣保護法で定められています。
担当部署の名称は各自治体によって異なりますが、東京都の場合は環境局(自然環境部計画課)です。
ただし、鳥獣保護法の対象になるのは野生哺乳類と野生鳥類のみです。野生の爬虫類、両生類あるいは昆虫などはそもそも法律の対象外になってしまうのです。
魚類など水生動物(哺乳類の一部を除く)も法律の対象外で、これは漁業関連の部署の扱いになるでしょう。漁業、これはつまり産業の対象となっているわけです。
以上を簡単にまとめると、飼育動物も野生動物も、相談するならばまずは都道府県に連絡してください、ということです。
連絡先は保健所でも警察でもないのです!