[今日の勉強]Apeの惑星
映画「猿の惑星」(1968年)といえば名作とされるSF映画です。昔、旧シリーズ5作を深夜番組で見たことがありますが、そのストーリーの展開にはドキドキしたものです。
ところで、この映画の英語タイトルは「Planet of the Apes」です。「Planet of the Monkeys」ではありません。「サル=monkeyじゃないの?」と不審に思う方は多いでしょう。
apeとmonkeyは似ているようですが同一ではありません。monkeyはサル全般(霊長目)を指します。apeは「類人猿」のことです。類人猿とはサルの中でも分類上「ヒト」に近いグループを指します。具体的にはチンパンジー、ボノボ(ピグミーチンパンジー)、ゴリラ、オランウータン、テナガザル科(フクロテナガザルやクロテナガザルなど9種)のことです。
オランウータンとゴリラについてはさらに細分化したグループを種とするか亜種とするかで議論がわかれていますが、ここでは一括して扱うことにします。
チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは「猿の惑星」にも登場していますし、動物園にもいるよく知られた存在です。
ボノボは以前はピグミーチンパンジーと呼ばれていました。チンパンジーによく似ていますが別の種とされています。テナガザルも動物園で見たことがある人はいるでしょう。長い手で樹木の枝を渡っていきます。また、独特な声でも有名です。
類人猿の特徴はサルの中でも特に知能が高いことです。類人猿の中で、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンは分類的に人間と非常に近く、つまり共通の祖先から分岐していった「親類」と言える存在です。ヒトとチンパンジー・ボノボの共通祖先が分岐したのが500万年前、ヒト・チンパンジー・ボノボの共通祖先がゴリラと分岐したのが650万年前、ヒト・チンパンジー・ボノボ・ゴリラの共通祖先がオランウータンと分岐したのが1300万年前とのことですから、長い地球の歴史上ではヒトとこれら類人猿はつい最近分岐したばかりなのです。
ですから、ひょっとしたら類人猿たちがより高い知能を身につけて人間並みの文明を築き、さらに人間を駆逐してしまうかもしれない…というSF的設定も成り立つのです。天才チンパンジーとして知られる「アイ」は限定的ながら言葉を理解してることがわかっています。実際に動物園でゴリラやチンパンジーを観察すると、中に人間が入っているのではないか?と思ってしまうこともあるほどです。現実にはある日突然、類人猿が人間並みの知能を持つことは不可能ですが。
類人猿の特徴としてはもうひとつ、「尾が無い」ということもあります。ニホンザルも尾が無いように見えますが、短いながらも尾はあります。ニホンザルははオナガザル科に属し、類人猿とは関係ありません。(尾が短いオナガザルというのも変な感じではありますが(笑)。)
映画「Planet of the Apes」は「monkey」ではなく「ape」を使うことによって「ただのサルじゃなくて類人猿が登場するのだよ」とタイトルで主張しているのです。