Vol. 72(2000/12/10)

[今日の本]世界鳥類和名辞典

世界鳥類和名辞典

[DATA]
監修・著者:山階芳麿(やましな・よしまろ)
発行:大学書林
価格:30,000円
初版発行日:1986年5月31日
ISBN4-475-00115-3

[SUMMARY]鳥類9021種記載の辞典

鳥類9021種(絶滅種、疑問種を含む)の学名、英名、和名、分布を分類順に収録した辞典。亜種についてはその数だけを表記。

[COMMENT]国外の鳥のことを調べたい!

以前、「世界哺乳類和名辞典」という本を紹介しましたが、今回の「世界鳥類和名辞典」はその鳥類版といえるものです。9000種の鳥の名前がひたすら続く本(図版は一切無い)ですが、類似書がほとんど無いだけに貴重な本です。出版は1986年と古いため、現在店頭ではまずお目にかかれないでしょう。私がどこで入手したかというと、こういう時はいつも頼りにしている神保町の理系専門古書店です。いつも助かってます。感謝です。

この本がとても有益なのは、国外の鳥の情報が得られるためです。日本で売られている鳥の本は国内で見られる種だけをとりあげたものがほとんどです。これはバードウオッチングで使用される機会が現実的に多いためにそうなってしまったようです。逆に、世界の鳥を幅広く取り上げた本はほとんどありません。そのため、国外の鳥について調べようとすると極端に資料が少なくなってしまうのです。例外はペンギンぐらいでしょうか。カイツブリって国外にもいるんだっけ?とか、ペリカンの仲間は何種類だったかな?とか、ワライカワセミはカワセミとどれぐらい近縁なのかな?とかを調べようにも、資料がほとんど無いというのが現状なのです。この本があればこういった疑問もすぐに解決できるわけです。図版や外見的特徴の説明がまったく記載されていないのは残念ですが、それでも十分満足できる情報量です。
これが哺乳類ならば、そもそも国内で見られる種類が少ないため(それでも188種(亜種を含む・クジラ目は含まない)もいるのですが)に、世界中の哺乳類をとりあげなければ十分な図鑑はできません。そのため、哺乳類図鑑は自動的に国際的な内容になります。
国内に生息する種類ばかりがとりあげられる分野は、鳥の他にも昆虫があります。ただ、昆虫は国外にも注目すべき種類が多くいるので、鳥よりも国外に目が向けられていると言えるでしょう。

この本を買ったことで、私の動物資料はさらに充実したことになります。哺乳類、鳥類の分類学はこれでほぼベストです。となると、次に欲しいのは爬虫類と両生類の分類辞典です。意外に思われる方もいるかもしれませんが、そのような本は日本にはないのです(主要な種だけをとりあげたものなら無いわけではありませんが…)。なにしろ、分類上の論争がまだ多かったり、和名が統一されていなかったりと未解決の問題が多いのがこの分野なのです。それでもなんとか分類辞典を出版して欲しいと願うのですが、売れそうもない本ではそれも無理かもしれません。


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