Vol. 173(2003/5/11)

[今日の観察]都会のコウモリを探せ!

以前、都会で見られる野生の哺乳類のことを書きました。生息している数で言えば、ネズミ、コウモリ、モグラがトップ3になります。この中で最も観察しやすいのはコウモリです。都会にいるコウモリはアブラコウモリという種類ですが、その観察はとにかく簡単、誰にでもできます! その探し方を紹介しましょう。今はちょうどアブラコウモリも飛び回る季節です。

アブラコウモリは別名イエコウモリと言い、その名前のように住宅の雨戸のすき間、屋根のすき間など主に人工的な所を寝場所にしています。ですから、かなり密集した住宅地でも間違いなくいるはずなのです。この寝場所は、スズメの巣のある場所とよく似ているような印象が私にはあります。スズメも住宅のすき間に巣をよく作ります。ただし、スズメの巣は産卵〜子育ての時期だけしか使いませんが、コウモリは寝る場所として1年中使います。ただ、そういう場所をやみくもに探すのは効率が悪すぎますし、アブラコウモリの生活をじゃまするだけですからすすめられることではありません。もっと確実に見られる方法を探すべきです。

アブラコウモリが確実に見られる場所・時刻というのは実は既によくわかっています。だから誰でも簡単に観察ができるのです。
まず時刻。
日没時刻から30分前後が一番いい時刻です。日没時刻は新聞などで前もって確認しておきましょう。アブラコウモリは夜行性ですから、日没の頃から徐々に活動を開始します。日没から1時間ぐらいならまだ空が明るいため、アブラコウモリのシルエットがよく見えるので、その姿を確認することができます。それよりも遅くなると、暗くなりすぎるので街灯などの照明がある所でないと見えないでしょう。

次に場所です。
アブラコウモリの飛行高度は地上から最大10mといったところで、高空はあまり飛びません。その高さに障害物が無い開けた場所で、できるだけ広い所を探しましょう。障害物とは、建物や電線です。都会にはそんな場所はなさそうに思えますがそんなことはありません。よく考えてみてください、どんな都会にも必ずある開けた場所。例えばそれは学校の運動場です。何も障害物が無く、かなりの広さがあります。まさにアブラコウモリの好みの環境です。
池、川も開けた場所です。当然のことですが、こういった水場の上には電線などの障害物はありません。しかも、食べ物となる蚊のような昆虫類がたくさんいます。ですから水場の方が確実にアブラコウモリを見ることができると言えます。先ほど紹介した学校の運動場には、その隣にプールも併設されていますので、アブラコウモリが現れる可能性はより高いと考えられます。
他には公園、広場といった場所にもよく現れます。樹木(障害物)の少ない場所で探してみましょう。変わった所では、ある程度広い駐車場、駅前広場に現れることもあります。ある程度広い駐車場というのは、私が今住んでいる所の真ん前のことで、合計20台以上車を止められる広さがあります。駅前広場というのは、これまた私が住んでいるJR高円寺駅南口のことで、ここには噴水池があります。確かにどちらもアブラコウモリが現れる場所の条件に合っていますので驚くことでもないのですが、それでも意外に思える場所でした。このようなことがありますので、日没直後に屋外にいる時にはちょっと注意して空を見上げてください。

注:コウモリの中には森林の中にすむものもいます。すべてのコウモリがアブラコウモリのように開けた場所を好むわけではありません。

さて、実際にアブラコウモリが見分けられるかどうか心配な人がいるかもしれませんが、これも簡単なことです。ほとんどの鳥の活動時間は日の出から日没までと決まっていて、この日没以降の時間帯を飛ぶ鳥は都会ではあまりいません。少なくともアブラコウモリに近い大きさの小鳥はこの時間は飛ばないでしょう。
また、飛び方もひらひらと、常に方向を変えながら飛んでいます。例えて言えば、チョウのような飛び方です。この飛び方も鳥とは明らかに違います。
アブラコウモリの大きさはスズメよりも小さいのですが、翼を広げるとちょっと大きめに見えるかもしれません。そもそも、暗い場所では大きさがはっきりとはわからなくなるものですので、大きさよりも飛び方に注目した方がいいでしょう。

アブラコウモリの姿を確認できるようになれば初歩段階は終了です。次はもっと詳しく調べてみましょう。
例えば、どこに何匹ぐらい来るのか調べてみるのはどうでしょう。町内のアブラコウモリ地図を作ってみると面白いかもしれません。たくさん集まる所、あまり来ない所がをわかるでしょう。なぜそこに集まるのか、集まらないのか、理由を推理してみてください。
逆に、同じ場所で一晩中観察して、数の増減を調べるのもいいでしょう。アブラコウモリは夜の間中ずっと同じように活動しているわけではありません。
地図を作る場合にも、1ヶ所で数を数える場合にも言えることですが、季節によってアブラコウモリの数が変化する可能性もあります。長期間観察すると、また別の結果が見えてくるかもしれません。
アブラコウモリが飛んでくる方向、飛び去る方向を注意して観察して、寝場所や食べ物をとる場所を推理してみるということもできます。ただ、寝場所は住宅であることが多いので勝手に入り込むことはできませんし、あんまりじろじろ見ていると泥棒さんと間違われてお巡りさんと仲良しになれるかもしれないので、くれぐれもご注意ください。また、アブラコウモリの生活のじゃまにならないようにしてください。

最後に観察の注意点をひとつ。アブラコウモリは寒い日や雨の日は現れません。また、冬は冬眠をしますので現れません。気温が何度になったら活動をする/やめるのかを観察してみるのもいいかもしれませんね。


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