Vol. 268(2005/5/22)

[今日のテレビ]「トリビアの泉」は実は動物番組なのだ?

「トリビアの泉」を取り上げる? 動物番組でもないのになぜ? と思っている方いませんか? そんなあなたはこの番組を見ていませんね。実はこの番組は「隠れ動物番組」なのです。

この番組のおかげで「トリビア」(trivia=複数形。単数計はtrivium)という言葉は一般用語として定着した感があります。この番組以前にトリビアという言葉を知っていた人はかなり少なかったでしょう。
私にとって「トリビア」というと、アメリカの有名なマンガ「Peanuts」でスヌーピーとウッドストックが楽しんでいた「トリビア・クイズ」が最初の出会いでした。このトリビア・クイズというのは、
「××という映画で主人公が飲んでいたバーの名前は?」とか
「××年、大リーグチーム○○の二塁手は?」
といった細々とした知識をお互いにクイズにして楽しむ、というものでした。これはアメリカ人のトリビアですから、日本の、しかも子供だった私にはさっぱり面白さはわからなかったのですが、当人たち(スヌーピー&&ウッドストック)は楽しそうだなあ、と思ったものです。
時は流れて数年前のこと。新聞のテレビ欄に「トリビア」と書かれた深夜の新番組を発見しました。その時思わず「へえ〜」と言ったかどうかはもう記憶にありませんが(笑)、それが「トリビアの泉」だったのです。記念すべき第1回放送を私は見ました。面白いなとは思いましたが、それっきり見ることはありませんでした。
ところが、この番組は意外に人気が高かったらしく、間もなくめでたく夜9時放送に昇格、視聴率ランキングの上位常連になったのでした。なんでそんなに視聴率が高いんだろう、と思って再びこの番組を見るようになったのは昨年の夏ごろからだったでしょうか。それでもしばらくは見たり見なかったりだったのですが、あることに気づいてからは毎週欠かさず見るようになったのでした。その「あること」とは何か。それは「トリビアの泉」のトリビアとも言える法則だったのです。そのトリビアとは、

「トリビアの泉」では毎回1つは動物トリビアが登場する
 (へーへーへーへーへーへーへーへーへーへー)

ウソだと思ったら毎週見てください。まれに動物トリビアが無いことがありますが、ほぼ毎回登場するのです。最近の動物トリビアの実例を挙げてみましょう。

「ゴリラのドラミングはグーでなく、パー」
(映像をよく見ていればわかることなんですが、誤解が多い)

「ワシとタカの区別は適当」
(鳥の常識です。詳しくはこちらで。)

「ジンメンカメムシがいる」
(これも有名な昆虫なんですがねえ)

「頭が大きすぎて甲羅に入らないカメがいる」
(オオアタマガメのことです。これもカメの常識)

「チーターは走りながら方向転換する時、しっぽを振る」
(これもよく知られていることだと思ってましたが。これは力学的にも理に適ったことです)

「沖縄のマングース対ヘビのショーは今はマングースとウミヘビの水泳大会になっている」
(これは知りませんでした。動物愛護法の改正で動物対決は動物虐待にあたるとされたからということのようです)

「フグの毒の単位は『マウスユニット』」
(これはマルチメディア図鑑シリーズを担当する時に習ったような…。ネズミ単位なんてなんとわかりやすい…)

「バードウォッチングの専門誌の『2005年 読者が選ぶ好きになれない鳥』第1位はカラス」
(専門誌とは「birder」のことです。ちなみに好きな鳥は1位カワセミ、2位ヤマセミ、3位オオタカ。嫌いな鳥は1位カラス、2位ドバト、3位ムクドリだそうです。コアな(熱心な)バードウォッチャーの割には平凡なランキングですね)

と、まあこんな具合です。私から見れば、9割以上は知っていることばかりで、特に勉強になるというわけではありません(←自慢(笑))。それでもこの番組を見る理由は、「世間的にはどういう動物トリビアが面白がられるのか」「他の種類のトリビアと比べて動物トリビアはどう見られているか」ということを観察することにあります。自分が当たり前のこととして知っている知識が、世間一般ではどの程度浸透しているのかを測るモノサシになっているわけですね。
ああ、こんなトリビアでもけっこう受けるんだな、とわかれば、それを自然観察会の時に話すネタにもなりますし、私の仕事の話をする時にちょっとした話題提供にもなります。番組のトリビアをそのまま使うこともありますが、類似のトリビアを話したりすることもあります。そういう意味では私のようなハイレベルの人にもお勧めしたい番組です。

毎回必ず登場する動物トリビアですが、では他にはどんなジャンルがあるのかな、と注意して見ていたことがあります。が、どうも法則性らしきものはあまりないようなのです。比較的よく登場するのは、「歴史上の人物トリビア」「芸能人トリビア」「スポーツ・トリビア」「人体の不思議トリビア」「日本語トリビア」といったものでしょうか。ですが、これらは登場頻度が高いとはいえ、毎回のように登場するものではありません。どうやら制作側も動物トリビアを意識して取り上げているのではないかと思われます。登場する動物も特定のグループ(例えば哺乳類)に集中するということはなく、分類学的にもまんべんなく分散しています(「トリビア」だからそうならざるを得ないのかもしれません)。
まあ、動物というものは哺乳類で5000種、鳥類で10000種、動物界全体では何百万種という種類がおり、それぞれが独特の形態、生態を持っているわけです。つまり動物はそれ自体がトリビアの宝庫であるわけです。だからこそこの「いきもの通信」のネタも途切れることがないのです。

「トリビアの泉」はもっと動物のことを知りたい人にお勧めできる優良な動物番組です。この番組を見て、どんどん(無駄な)動物の知識を増やしていってください。


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