いきもの通信 Vol.274[今日のカラス]検証・カラス捕獲トラップ 2005年版 

Vol. 274(2005/7/10)

[今日のカラス]検証・カラス捕獲トラップ 2005年版

今年はいろいろと忙しくて遅くなってしまいましたが、毎年恒例の東京カラス問題の現状を見ていくことにしましょう。
昨年度の東京都のカラス捕獲実績については5月上旬に発表されました。
その前年よりも発表がずいぶん遅かったため、行政側にとって不利な結果が出ているのではないかと私は疑ったほどです。その結果を見てみると、

平成16年度の捕獲数16167羽(15年度の実績より減少)
生息数19800羽(前年度比15%減)

というものでした。私の予想よりもいい数字だなと思いました。しかし、15年度は2月で目標の捕獲数を早々と達成したのに対し、16年度は(おそらく)3月末までがんばっても前年度の数字には追いつけなかったと思われます。つまり、カラスの捕獲効率が悪くなっているということです。

カラス捕獲の過去の実績をあらためて表にしてみるとこのようになります。

生息数 捕獲数
平成13年度(2001年度)
36400
4210
平成14年度(2002年度)
35200
12050
平成15年度(2003年度)
23400
18761
平成16年度(2004年度)
19800
16167

たしかに生息数は減っていますが、この数字をもう一度よくご覧になってください。4年間の捕獲数の合計は51188羽になります。捕獲開始時の生息数は36400羽でした。つまり、捕獲数だけからいえばもう東京のカラスはゼロになっているはずなのです。しかし現実はようやく半減できた程度なのです。これは何を意味しているのでしょうか。まず、カラスの増殖が多いということです。カラスは当然のことながら毎年のように卵を産み、子を育てますから捕獲しただけでは数は減りません。また、都外からの流入も当然考えられるでしょう。

さて、今年もまた同じことを言いますが、カラス捕獲が生息数減少に本当に効果があるのかどうかは疑問があります。ゴミ対策も同時に進んでおり、そちらの方が効果があるのではないかとも考えられるからです。実際、ゴミ管理がうまくいっている地域ではカラス被害は減っているといいます。カラス問題の最大の焦点はゴミ被害にあります。ゴミ管理によってゴミ被害が減少するのであれば、それでカラス問題は解決したようなものです。わざわざカラスを捕獲する必要はないわけです。


カラスに関して、もうひとつ東京都の資料を紹介しましょう。昨年の夏に発表されたものです。時期的にはずれていたのでこの発表を知ったのは今年になってからでした。
この資料の注目点は、主な冬場のねぐらごとの生息数の変動についても書かれていることです。全体としては生息数は減少していることが読み取れますが、単純に減少しているばかりではないこともわかります。逆に増えているところとして、葛飾区の水元公園で急増しているのが目立ちます。水元公園へは私も行ったのですが、確かに以前より数が増えていると感じていました。
ところで、この統計全体を見ると奇妙なことに気づきます。それは、これら40ヶ所のねぐらの生息数の合計が、そのまま東京都のカラスの生息数になっているということです。カラスは確かに冬季に集団ねぐらを形成することが知られていますが、都下のねぐらがこれら40ヶ所だけというのはありえないことです。この他にも小規模のねぐらが各地に散在しています。つまり、この統計の正確さには疑問があるのです。そもそも、平成11年以前の生息数も調査方法が異なっていたはずで、過去のデータを同列に扱うことはできないはずです。
とにかく、東京都発表の生息数は過少であることは間違いなく、実数はもっと多いと思われます。カラスは減っているのではなく、小規模なねぐらに分散していると仮定すれば、東京都での生息数は実はほとんど減少していないのかもしれません。こういう基礎データが疑わしいようでは都の施策そのものも正当性が疑われます。東京都環境局はどこまでカラスを理解して取り組んでいるのでしょうか。私は依然として都の施策に疑念を持たざるを得ません。


カラス問題についての私の主張は既に繰り返し述べてきたことです。下記の「東京カラス問題」のまとめページもご覧ください。

追記:(2005年9月7日)

2005年8月24日付け朝日新聞別刷り「be on Sunday」のトップ記事に東京都23区内の場所不明のカラスのねぐらが紹介されていますが、この場所は大田区中央5丁目です。翌週9月4日付けでは「見に行く人がいると近所迷惑なので場所は伏せました」と言い訳していますが、それは都当局の考えの受け売りに過ぎません。この場所は公開された情報(このページで上に紹介したページ)から容易に探しだせます。秘密にするほどの情報ではありません。マスコミは行政の言うことを鵜呑みにせず、批判的な眼を持ってほしいものです。


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