いきもの通信 Vol.300[OPINION]学校の動物は幸せか? 

Vol. 300(2006/1/22)

[OPINION]学校の動物は幸せか?

子どもの頃は全然気にしていなかったことが、大人になるとはっきりと認識できるようになるということがあります。生活のいろんな場面でそういうことは起こりうるのですが、私の場合、学校の飼育動物の問題がそのひとつでしょうか。

日本全国のたいていの小学校ではなんらかの動物を飼育していることと思います。私の場合はニワトリとウサギだったかな?…。まあ、当時(昭和50年前後)としては標準的なものだったと思います。確か飼育委員かなにかがあって、掃除とかエサやりとかをしていたような記憶があります(それともクラス持ち回りの当番だったか?)。当時の私は特に動物に関心があったわけではなく、特に何も思わずに過ごしていました。
雑草を引っこ抜いて柵越しに与えたりとか、その程度のことです。

大人になった現在では、野生動物のことも飼育動物のことも、あるいはさまざまな動物事件のことも知るようになりました。ペットの問題では「適正な飼育ができているか」ということは現在では重要な問題になっていることも当然知っています。しかし、学校の飼育動物というのは接する機会がないためにあまり考えることもありませんでした。

昨年10月、読売新聞に次のような記事がでました(オンライン版2005年10月11日付け)


大阪府教育委員会が大阪市を除く府内自治体にアンケートをとったところ、半数以上の自治体で休日(土曜、日曜、祝日)にエサを与えていない学校があることがわかった。「休日の前にエサや水を多めにやる」「前日に対応する」との回答が多かったが、「特になし」「原則なし」というものもあった。いずれにせよ多くは休日は放置しているものと推測されている。


指摘されてみれば、ああやっぱり、と思わずにはいられない報道です。確かに休日の世話は誰がしているのでしょう。私の頃は土曜も学校はありましたが、今は多くが週休2日です。たいていの動物にとっては1日飲まず食わずでも大変なのに、土日2日間を耐えるというのはかなりのストレス、劣悪な環境と言っていいでしょう(エサを多めにしてもすぐに全部食べてしまうだろうから意味がない)。
先生が面倒を見てくれるというわけではなさそうです。やはり多忙なのでしょうか。用務員さんというのは休日はいないのでしょうか。近くの住民にボランティアを依頼するという方法もあるでしょう。ちょっと考えただけでもこのような対策方法があるにもかかわらず、アンケート結果はそうなっていないということは、何かの事情があって実現できないということなのでしょう。これが自分のペットなら手間ひまかけてやるのでしょうが、学校の動物は個人の所有物ではありませんし、イヌやネコとは違った連中なので愛着がわきにくいということがあるかもしれません。本当はやればできるんだけど、「少々放っといても大丈夫だろう」ということで優先順位が低くなっているとも考えられます。
理由はともかく、このままでは学校の動物の福祉は低下する一方になるおそれがあります。関係者は真剣にこの問題に取り組んでほしいものです。

しかしながら、私はさらに踏みこんだ提案をしてみたいと思います。それは、「そもそも学校で動物を飼う必要があるのか?」ということです。
なぜ学校で動物を飼育するのか? 飼育には意味があるのか? よく考えてみると学校の動物に何の意味があるというのでしょう。
動物の専門家が何をバカなことを言っているのだ、と不思議がる方がいることでしょうが、この問いかけは真面目なものです。「動物を飼うことは情操教育になる」と思う人は多いでしょうが、本当にそうでしょうか。動物がいなくても情操教育はできるでしょう。また、すべての子どもが動物に関心があるわけではありません。動物嫌いな子にとっては動物なんかいない方が幸せでしょう。飼いたいという意思も無いのにしぶしぶ動物の世話をするというのでは教育的効果は望めません。さらに、不適切な飼育環境にある動物を見せて、「ああ、こんなてきとーな飼い方でもいいんだ」などと勘違いされては情操教育にもなりません。
もし、子どもたちが積極的に飼おうという気持ちを持つことができたならば、その場合は動物が効果的な意味を持つでしょう。でもそうではない押しつけならやめた方がいいでしょう。
教育関係者の皆さん、このことは真剣に考えてください。

学校の動物飼育のもうひとつの問題点は、野生動物への視点を欠いていることです。世の中には飼育動物だけではなく野生動物も存在しています。飼育動物さえいれば動物の勉強はOK、ではないのです。ペット飼育が普通になる一方、身近な自然環境さえ見えなくなってしまった現代社会では、野生動物のことを意識的に勉強する必要こそあると思います。
動物の飼育にかける費用を、自然観察教育のために使っても損になることはないでしょう。むしろずっと効果的かもしれません。関心を持たない子どもには効果は望めませんが、それは飼育動物でも同じことです。
(興味のない人にいかに関心を持ってもらうか、というのは深遠な問題で、私も答えは持ち合わせていませんし、すぐに結論が出るようなものでもありません。これは私にとっての宿題です。)

いずれにせよ、学校の動物たちが幸せに暮らせるようになることを願わずにはいられません。


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