Vol. 318(2006/5/28)

[今日のカラス]東京カラス問題・カラス捕獲が無期限化?!

例年ならこの時期は、東京都が発表するカラス捕獲実績について論評を書く頃なのですが、今年はまだその発表がありません。ちゃんとした論評は発表がされてから書くことにします。
ところがカラス対策について、どうも何か変なことになっているらしいのです。

いつもの年と様子が違うことに気づいたのは4月下旬でした。場所は世田谷区の和田堀給水所。ここは給水所であるため普段は中に入れないのですが、桜やツツジの季節の4月〜5月上旬は昼間だけ敷地を開放しています。私はたまたま機会があってそこに入りました。そこにカラス捕獲トラップがあることは以前から知っていました。
そのカラス捕獲トラップはわかりやすい場所に置かれていて、すぐ近くで様子を観察することができました。この捕獲トラップはその時稼働していました。4月になっても稼働しているとは変だなあ、とその時思いました。なぜなら、有害鳥獣駆除というものは期限と捕獲数の上限が必ず設定されるからです。いつもなら期限は年度末の3月末のはずです。期限が来ればトラップは使われなくなるはずで、4月になっても稼働しているというのはおかしなことです(捕獲が開始されるのは夏以降)。本当はこの時点で異常に気づくべきでした。
そしてつい先日の5月下旬、今度は葛飾区の水元公園へ行ったのですが、そこでもカラス捕獲トラップがまだ稼働していました。さすがにこれは変です。5月になっても稼働しているなんてこれまでになかったことです。
そこで前月に和田堀給水所で撮った写真を確認してみることにしました。有害鳥獣駆除ではその許可証を掲示しなければならず、和田堀給水所にはそれが捕獲トラップに掲示されていて、私はその写真を撮っていたのでした(水元公園は掲示場所不明)。すると…なんと、捕獲の期間が2006年4月1日から2007年3月31日までになっているではありませんか。つまり、通年で捕獲することになっているのです。そんなことは初耳です。東京都のホームページにも掲示されていません。そういえば、いつもの年ならトラップ捕獲の開始前には報道発表があったはずですが、それもありません。いつの間に政策が変更されたのでしょうか。
過去の捕獲期間はどうなっていたかというと、次の通りです。

2001年度(平成13年) 12月〜3月
2002年度(平成14年) 9月〜3月
2003年度(平成15年) 8月〜3月
2004年度(平成16年) 7月〜3月
2005年度(平成17年) ??

だんだんと期間が長くなっています。昨年は期間不明。私も気がつきませんでした。そして今年ははっきりと通年での捕獲になっています。2005年度も実は通年捕獲だったのかもしれません…。
こういう施策が何の発表もなくいつの間にか変更されているというのはどうにも納得がいきません。もちろん、行政がやっていることを逐一公表せよ、とは言いませんが、カラス問題は賛否の分かれる件であること、またこれまでは毎年発表されてきたことを公表しなくなった、というのでは都合の悪いことを隠しているのではないか、好き勝手やりたい放題しているのではないかという疑念を抱かせるものです。
過去の発表によると、2004年度はカラス対策の中期計画の最終年でした。そうすると2005年度からはこれまでの実績を検討した上で新たな対策をたてるはず…なのですが、新政策が検討された気配はまったくありません(していたとしても公開されていない)。そして、いつの間にかトラップ捕獲が拡大されてしまったのです。

過去の報道資料を見ていてもうひとつ気づいたことがあります。それは、有害鳥獣駆除で許可された捕獲数を超えて捕獲しているのではないかという疑念です。有害鳥獣駆除では捕獲数の上限を最初に決めることになっています。無制限に駆除できるわけではないのです。今年度のその数は15000羽。過去の上限数は不明ですが、この数字を超えることはなかったと思われます。ところが、報道資料によると実際はこの数字以上を捕獲しているのです。100基も捕獲トラップを設置しているのですから、多少誤差が発生することはあるでしょう。しかし、実績は誤差などとは言えない、明らかに許可数をオーバーしたものです。ということは、後から追加で捕獲数許可数を増やしたということでしょうか。これでは捕獲トラップで捕れるだけ捕っていることと同じことになっています。
許可を出すのも、施策を実行するのも同じ東京都です。これでは歯止めも存在しないも同然で、本当にやりたい放題やっていると疑わざるをえません。

こういった期限の無期化、過剰な捕獲はおかしな施策です。いくらカラス対策という大義名分があったとしても、無制限な捕獲は鳥獣保護法の精神に反するのではないでしょうか。この異常な施策を行っている東京都の行政に対し、私は強く抗議します。


さて、最近の報道によると石原東京都知事は来年の都知事選挙に向けて立候補をにおわせているようです。私は、強引なカラス対策は石原知事またはその側近の強い意向によるものと認識しています。そうでないとしても、現在の石原知事のままではカラス対策の変更・改善は難しいでしょう。カラス対策をより良いものにするにはどうすればいいのか。それは来春の選挙では石原知事の3選を阻止することです。
本当は特定の政治家をやり玉にあげてもあまり意味はありません。世論全体にていねいに訴えることが本筋です。都知事選挙でも、より適切なカラス対策に賛同する候補者を応援すべきでしょうが、立場が悪いカラスを弁護してくれる候補者が出てくれる見込みがあるわけではありません(候補者は普通は多数の意見を重んじるものだから)。そうなると、非常にネガティブな方法ですが、少なくとも石原知事の3選を阻止するということを目標にせざるをえないのです。

現在のカラス対策では「動物→迷惑→殺せ!」という短絡思考を蔓延させかねないおそれがあります。そうではなく、「知恵でもって平和的に解決する」という方法をとるべきなのです。その方法はもちろんあります。下記の「東京カラス問題」のページをご覧ください。


資料

2004年度以降の東京都環境局の報道発表資料は以下の通りです。

2004年度(平成16年度)

16年度カラスの巣撤去事業を開始(2004年4月19日)

16年度のカラスの捕獲を開始します(2004年7月12日)

2005年度(平成17年度)

カラス対策の進捗状況をお知らせします(2005年5月10日)

歌舞伎町カラス撃退作戦開始(2005年10月25日)

カラス対策の進捗状況をお知らせします(2006年1月26日)

2006年度(平成18年度)

5月27日現在、無し


[いきもの通信 HOME]