Vol. 395(2008/2/3)

[今日の観察]冬の水辺のミステリー

その1・水辺に残された痕跡

冬の水辺は鳥の観察にはちょうどいい場所です。1月のあるとても寒い日、私は東京都23区内某所の水辺を歩いていました。そこで私が発見したものは…。


まずはこれです。水に接した草原のあちこちに、何かの断片が落ちているのです。写真を見ればその正体は簡単にわかるでしょう。アメリカザリガニの体の一部です。アメリカザリガニ・バラバラ殺人事件なのです(人じゃないけど)。
まずは被害者の状態を見てみましょう。見つかる断片はハサミの部分ばかりです。胴体部分はほとんど見つかりません。犯人は胴体だけを食べているようです(写真右下が唯一見つかった頭部)。近くを調べると、水際の土に穴があいています。これはアメリカザリガニの巣穴です。被害者はここから引きずり出されたようです。
犯人は水辺にいる、ザリガニを丸のみできるぐらい体の大きな、そして動物食の動物でしょう。そして、すぐ近くに今もいるはずです!

周囲をぐるりと見回してみると…そこにはダイサギ(写真奥)とコサギ(写真手前)がいます。少し離れたところにはアオサギもいます(東京都23区内でこの3種がそろっている場所はなかなかないので、場所を特定できる人がいるかもしれません)。これらのサギはいずれも水辺にいて、体も大きく、動物食です。しかも長く細いくちばしはザリガニを巣穴から引きずり出すのに好都合です。容疑者はこの3種と考えられます。
では、真犯人は誰でしょうか。答えは…このうちの特定の誰が犯人というのではなく、全員が犯人ではないかと思われます。なにしろこのサギたちは生活場所も食べるものもよく似ていて、どのサギがアメリカザリガニを食べても不思議ではないからです。一般的な傾向としてはダイサギとアオサギは魚が好きで、コサギはエビ、カニなど小型のものが好きなようです。ただし、それ以外のものも当然食べます。どのサギもアメリカザリガニを食べる可能性はあります。
アメリカザリガニの断片をもう一度見直してみましょう。ハサミの断片ばかりが残っているのはなぜでしょうか。サギは(サギに限らずたいていの鳥もそうですが)食物を丸のみします。つまり、アメリカザリガニを丸ごと食べてもいいはずで、なぜハサミだけが残されるのか不思議です。食べる時にたまたまハサミが落下しているとは思えません。口に入れる前に、脚なども使ってハサミをちぎっているのでしょうか。サギがザリガニを食べている場面に出くわしたことがないのでよくわかりませんが、偶然のことではないでしょう。機会があればじっくり観察してみたいと思いますが、なかなか近くで観察できないのが難題です。それにアメリカザリガニがいる場所というのも最近はとても少なくなってしまいました。


さて、そこから少し進んだ場所で、別のモノを発見しました。

地面に白い痕跡があります。こういう場合、おそらく鳥のフンだろう、とすぐに想像できます。しかし、鳥のフンにしては大きめのようです。カラスやヒヨドリのフンも大きいのですが、それよりも大きいのです。それに、カラスなどなら同じ場所にフンがいくつも落ちているものですが、この場合はひとつの大きなフンの跡のように見えます。それに、カラスなどのフンはたいてい木の下にあります。木の枝にとまった鳥がフンを落とすからです。ところがこの場所には木はありません。この場所についてもう少し説明しますと、浅い水路がある場所です。
犯人はまだ近くにいる、と推理してまわりを見回してみると…コサギが何羽もいます。ダイサギも1羽います。うーん、どうやらここの犯人もやはりサギたちのようです。

鳥のフンは固形物であるフンと液体である尿が1つの排出口から出てくるので、人間など哺乳類とは少々違うものです。フンの方は、消化器官を経由してきた排出物で、これは哺乳類と本質的には同じです。もう一方の尿についてですが、鳥には膀胱がありません。そのため哺乳類と異なり、尿酸成分がそのまま排出されます。尿が白いのは尿酸の色なのです。鳥の排出物が白いのはこのためです。
サギの場合は尿が多く、写真のようなまっ白な痕跡が残ります。サギ類を長時間観察していると、きっと排尿している場面を目撃することができるでしょう。ダイサギならば、20〜30分も見ていれば1度は目撃できるはずです。その尿は、まっ白な液体が勢いよく出されるものです。私も最初に見た時にはびっくりしたものです。もうちょっと固体っぽいのが、ぽとり、と落ちるのかと想像してしまいがちですが、実際には「白いおしっこ」なのですから。


水辺のミステリーは次回も続きます。
次回登場するのは緑色の謎の痕跡です。


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