いきもの通信 Vol.396[今日の観察]冬の水辺のミステリー/その2・謎の緑色の物体 

Vol. 396(2008/2/10)

[今日の観察]冬の水辺のミステリー

その2・謎の緑色の物体

さて、前回に続き東京都23区内某所の水辺を歩いていきましょう。
ある場所では、水辺に接してちょっとした草原がありました。腰をかがめながら草に覆われた地面を探してみると…ありました、ありました。

緑色の物体があちらこちらに落ちています。鮮やかな緑色もあれば黒っぽくなった緑色もあります。前回の話を読めばもう見当はついていると思いますが、これもまた何かの動物のフンなのです。そのフンを落とした犯人もすぐ近くにいるはずです。またその場を少し離れて様子を見てみました。

間もなく上陸してきたのはヒドリガモの群れでした。その様子を観察すると、地面の何かを食べているようです。写真では非常にたくさんのヒドリガモが見えます。ヒドリガモはどちらかといえば夜行性なので昼間から上陸する姿を見るのはやや珍しいことです。しかし、この現場は平日の昼間はほとんど人が来ない場所なのです。だからヒドリガモは安心して上陸しているのです。来訪者が多い土曜・日曜ではこのような光景は見ることができないはずです。
ヒドリガモは主に植物食ですので、上陸して草を食べているものと推理できます。その草の色が排泄物にも残っている…つまり、謎の緑色の物体の正体はヒドリガモのフンなのです。

ここで、前回の話を思い出してください。鳥の尿は尿酸のために白く見える、という説明をしました。しかし、ヒドリガモのフンは白くありません。これはなぜなのでしょうか。
フンをよく見ると、白い部分があるものもあります。ですから尿はやはり白いはずです。ということは、ヒドリガモの緑色のフンは消化器官を通過してきた固形物が主で、尿成分はほとんどついていないと考えられます。ヒドリガモも尿が無いわけではないでしょう。その頻度が少ないか、どこか別の場所で排泄しているのでしょう。私がどこかに見落としているのかもしれません。
それでも、この緑色のフンからは、「鳥の排泄物=白色」と決めつけてはいけないことがわかります。


さて、また別の場所に移動しましょう。この場所は並木の下にちょっとした草地があります。ここも水場のすぐそばですので、ヒドリガモのフンを簡単に発見することができました。そして、さらに別のモノを発見することもできました。

ヒドリガモのフンとは違い、どうも水っぽいもののようです。ひょっとして、下痢をしたヒドリガモのフンなのでしょうか? いやいや、その推理は短絡すぎます。別の動物のフンと考えた方がいいでしょう。
そこでまたまた、離れて様子をみることにしました。しばらくすると、黒い鳥が水面を泳いできました。そして、上陸すると先ほどの場所に行って地面の何かを食べています。

写真では手前にドバトが写っていますが、その奥にいる黒い鳥がその鳥です。この鳥は「オオバン」という種類です。体はまっ黒、くちばしと頭の一部が白色です。普段は水面を泳いでいるので上陸する姿を見たことがない方がいるかもしれません。
オオバンの様子を見ていると、やはり草を食べているようです。先ほど見つけたフンらしきものも濃い緑色をしていました。あれはどうやらオオバンのフンだったようです。オオバンのフンはヒドリガモより水っぽいのですね…。


バードウォッチングとか動物とかの観察というと、動物そのものを追いかけることばかりに熱中してしまいがちです。それはそれで大切なことです。特に初心者はホンモノそのものをしっかりと見てほしいです。しかし、ある程度慣れてくれば、もっと別の切り口から迫ってみるのも面白いことです。
食い散らかしやフンのような普通なら見向きもしないものでも、きちんと向かい合ってみると気付かなかった面が見えてくるものです。


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