いきもの通信 Vol.447[今日のいきもの]東京都23区天然記念物巡りの旅・その2 

Vol. 447(2009/3/15)

[今日の天然記念物]東京都23区天然記念物巡りの旅・その2

さて、前回に続き東京都23区内の天然記念物巡りを続けましょう。残り3つの天然記念物はすべてJR山手線の内側にあります。都心部にも天然記念物があるとは驚きです。


●旧白金御料地

「旧白金御料地」といっても、たいていの人はどこのことだかわからないでしょう。「自然教育園」と言えばわかるでしょうか。
JR目黒駅から東へ歩いていったところにあるのが自然教育園です。正式な名前は「国立科学博物館附属自然教育園」。国立科学博物館は上野の本館が有名ですが、自然教育園はその付属施設なのです。
「白金御料地」とは大正6年にこの場所が宮内庁の管轄下になった時の名称です。戦後に文部省管轄となり、すぐに天然記念物指定がされます。
白金御料地の前の明治〜大正時代は軍の火薬庫でした。その前の江戸時代は高松藩主の下屋敷でした。さらにさかのぼって15世紀初頭ごろ(室町時代)に「白金長者」と呼ばれた人物がここに屋敷を構えていたそうです。
このように江戸時代まではこの一帯は開発された地域であったはずですが、その後はほとんど手がつけられることなく、現在はちょっとした森林になってしまっています。大正6年は1917年ですから、100年ほどで現在の森林ができあがったということになります。もちろん以前からの大木も残っています。
自然教育園は自然が豊かなので自然観察にはいい場所です。メインは野鳥または植物でしょうか。観察会などの行事も開催されているのでそれに参加するのもいいでしょう。
ホームページには見頃情報も載っていますので、事前にチェックしてから出かけるといいでしょう。

なお、一般・大学生は入場料300円です。小・中・高校生は無料です。夜間は閉園していますし、休園日もありますのでお出かけ前にホームページで必ずチェックしましょう。

指定当時の説明文(下記)によると、戦後すぐの頃はタヌキが生息していたことがわかります。現在もこの環境ならタヌキが生息していてよさそうですが、残念ながら私の所には目撃情報は伝わってきていません。国立科学博物館なら何か知っているはずですが…。

入口の案内板。

中央の池の風景。

水鳥の沼の風景。

(2009年11月撮影)


文化庁・国指定文化財等データベースより

旧白金御料地
(きゅうしろがねごりょうち)
東京都港区白金台五丁目、品川区上大崎二丁目
管理団体:(国立科学博物館)
指定年月日:1949.04.12(昭和24.04.12)

この地は松平讃岐守の下屋敷の跡で古く白金長者の居地であつたと伝えられる。明治以後は海軍火薬庫に充てられ、ついで皇室御料地に帰属したが、最近国有地になった。
久しく公開されなかつたために幸ひ開発の厄を兔れ、よく旧状を保持していて、中央西寄りにある池とそれを囲む斜面には旧武蔵野植物群落の一部を示す約200余種の植物が生育し、とりわけ、伊勢、紀伊以西だけに存しているハマクサギの老木、中華民国の中部及び九州に分布する。トラノヲスズカケと本邦特産のミヤマカタバミの群落は最も貴重であつて、殊にミヤマカタバミの大群落は他にその比を見ないほどの大群落をなしている。更に地域の北辺に沿う長い土塁上に繁茂するシヒノキの並木は巨樹として価値あるもの10数本を含み最大の樹は樹令500年以上と推定され昭和10年指定された海軍大学校正門前のシヒノキをしのぐ。これらシヒノキの延々として連る景況は偉観であり類例稀である。又ここにはタヌキの野生を見るが、その鳥界は種類に富み明治神宮内苑と並んで都内屈指である。池にはオシドリが生息するばかりでなく、毎年多数のコガモが渡来越冬してなごやかな景観を呈する。殊に自然を特色づけるものは昆虫類で食飼としての植物が豊富なために種類もきわめて多く、中にはヒナカマキリ、アカスジキンカメムシ、ジウジナガカメムシ、イトカメムシ、カツコウムシ、シナノクロフカミキリ、シラホシカミキリ、ヤハズカミキリ、キマダラカミキリ、イタヤカミキリ、ヒメナガカミキリ、クシヒゲユメツキ、ヒメトラハナムグリ、クロハナムグリ、ガガンボモドキ、ヒメカマキリモドキ、マダラウスバカゲロウ、オオヘビトンボ等の山地性並に南方系の種類を産し、動物地理学上興味深いものがある。なお、蝶類は凡そ30種を数え山地性のキンモンスズメモドキも見られ、直翅類のうち鳴く虫はスズムシ、マツムシ、クツワムシ等16種に及び、又フサヤスズムシの如き珍種も産している。思うに昔の自然をしのぶに足りる武蔵台の一角として学術上重要なものである。
白金長者は御府内備考によれば、その祖を柳下上総助といい応永年間に京都から下つてここに居を構えたと伝えられる。域内には谷状に入込む低濕地に臨んだ台地上に館の遺構が存し、主なものを挙げれば、中央南寄りには、高さ2間半ほどの土塁が矩形状に残り、一部には外掘も認められる。又地域の北辺を限る長い土塁は台地から延びて低湿地の出口を横切り、規模きわめて雄大、土塁上のシヒノキの樹令から見て中世に属するものであることは明かであり、館の外囲の施設かとも推定される。白金長者の伝説と史実との関係については、なお明かでなく、且土塁も破損されているところもあるが、すべて開発された都心附近にこのような館跡があることは、この地方の沿革を知る上に注意すべきである。


交通機関:
JR目黒駅、東急目黒線・目黒駅、都営三田線(東京メトロ南北線と共用)・目黒駅・白金台駅下車。いずれも徒歩10分もかからない。


●善福寺のイチョウ

善福寺のイチョウは東京都内で最大とされるイチョウで、幹周り10.4m、樹齢750年以上とのことです。
まずは、その善福寺に向かって歩いていくことにしましょう。ところが…。

なんなのでしょう、この光景は?
善福寺の背後に巨大な高層ビルが立ちはだかっているではありませんか。寺の雰囲気も、天然記念物のありがたみもぶち壊しにするような眺望です。写真ではビルの左下にある、背の高い黄葉した木がその天然記念物のイチョウです。いくら東京が大都会といっても、これはかなりひどい景色ではないでしょうか。

イチョウそのものは堂々たる風格です。黄葉のピークを狙って出かけたかいがありました。

このイチョウは枝が下に垂れ下がっていることから「逆さイチョウ」とも呼ばれるそうです。

案内板。

なお、このイチョウは墓地の中にありますので、きゃあきゃあ騒ぐ観光気分での見物はやめるべきでしょう。

善福寺の本堂前からの風景。やはり背後のビルが異常な威圧感で圧迫してきます。上の方が太くなっている構造がそれをますます増長しているように思えます。参道の方向と一致する場所にこのような高層ビルを建てたのは景観上の大失敗だと思います。

(2009年11月撮影)


文化庁・国指定文化財等データベースより

善福寺のイチョウ
(ぜんぷくじのいちょう)

東京都港区元麻布一丁目
管理団体:東京都(昭3・2・9)
指定年月日:1926.10.20(大正15.10.20)

天然紀念物調査報告(植物之部)第六輯 二一頁 參照
天然紀念物解説 一七五頁
世ニ逆銀杏ト呼ブ、公孫樹 Ginkgo biloba L. ノ一大樹ニシテ幹ニ沿フテ根元ヨリ一ノ枝ヲ出ス地上五尺ノ高サニ於テ此ノ枝ヲ併セ測ルトキハ幹圍三丈一尺アリ幹ヨリハ多數ノ乳ヲ垂下セリ本樹ハ雌株ナリ


交通機関:
東京メトロ南北線・麻布十番駅、都営大江戸線・麻布十番駅下車。いずれも徒歩10分かからない。


●江戸城跡のヒカリゴケ生育地

江戸城といえば現在は皇居・北ノ丸公園がある東京の中心地です。そんな都会のど真ん中に天然記念物があることを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。知られていないのには理由があって、その場所が一般には公開されていないからです。文化庁・国指定文化財等データベースの説明によると、「厚生省の所管地で、立ち入りは禁止されている」とのこと。これでは実物を見ることはできません。
それでも実際に現地の様子を見に行くことにしました。正確な場所はわからないものの、説明文などから推理すると、北ノ丸公園の西側、千鳥ケ淵に面した石垣ではないかと考えられます。その石垣の上には遊歩道があり、石垣を眺めることができる場所が何ヶ所かあります。

北ノ丸公園の石垣。この石垣の隙間のどこかにヒカリゴケが生息しているのだろうか…。

別の石垣。

千鳥ケ淵の対岸から見た北ノ丸公園の石垣。写真の中央を左右にのびているのがその石垣である。

実物を確認することができない謎の天然記念物といったところですが、こうでもしないと保護できないのでしょうね。

(2009年11月撮影)


文化庁・国指定文化財等データベースより

江戸城跡のヒカリゴケ生育地
(えどじょうあとのひかりごけせいいくち)

東京都千代田区北の丸公園
管理団体:(環境省)
指定年月日:1972.06.14(昭和47.06.14)

江戸城跡(特別史跡)のうち、北ノ丸公園の堀に面する一帯の石垣の間隙にヒカリゴケが生育していることが、昭和44年5月、近くに居住する石川幸八郎氏によって発見された。ヒカリゴケは、従来、長野県佐久市の岩村田ヒカリゴケ産地(大正10年)、埼玉県の吉見百穴ヒカリゴケ発生地(昭和3年11月)の2件が指定されており、このほか地方公共団体の条例による指定地(たとえば北海道羅臼町の洞穴)がある。だいたい中部以北に分布している。薄暗い洞穴内で適当な湿度・温度・光量その他微妙な条件のもとで自生するものであり、東京都内ではもちろん、このような都心に生育することはきわめて珍しい例である(厚生省の所管地で、立ち入りは禁止されている)。


交通機関:
東京メトロ東西線・半蔵門線・九段下駅、都営新宿線・九段下駅下車。西側石垣へは徒歩15分ぐらい。


これで東京都23区内の天然記念物をすべて見ました。最近は街歩きというレジャーが定着してきたようですが、天然記念物という視点は珍しいのではないでしょうか。興味のある方は天然記念物巡りにチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。
東京都23区内の5つの天然記念物を1日で踏破することは不可能ではありませんが、石神井公園や自然教育園の景色をたっぷり楽しむには2回に分けて訪問するのがいいでしょう。前回紹介した練馬区の2つ、今回紹介した都心部の3つ、と分けるのが効率がいいと思います。


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