Vol. 520(2011/6/26)

[東京タヌキ探検隊!・今日の事件]タヌキ家族が現れたらどうすべきか?

東京都23区内某所でタヌキ家族が現れた、とニュースが数日前に報道されました。
私のところにも取材申し込みがあったのですが、あいにくパート仕事で忙しく取材を受けることはできませんでした。

マスコミの報道は時間や字数の都合などでどうしても簡略化された内容になりがちです。そこで、今回のような場合の対処方法や知識をここでまとめておきます。

以前にも「いきもの通信 Vol.455[東京タヌキ探検隊!・今日の事件]タヌキの赤ちゃんを見つけたら」で同じことを書きましたが、それを見直してさらに情報を追加しました。

簡単にまとめたものとしては「東京タヌキタイムズ」2009年6月号に書いてありますのでそれもご覧ください。


まず最初は東京都23区のタヌキについて。
東京都23区にタヌキが約1000頭程度生息している、ということについてはここであらためて説明することでもありません。目撃情報が多いことはこれまでの報告書に書いた通りで、少なくとも数百頭が生息しているのは疑いのないことです。

これだけの数のタヌキはある日突然現れたのではありません。もうずっと以前からそこに生息していたのです。それはつまり継続的に繁殖ができていたということになります。

次はタヌキの繁殖について。
タヌキは年に1回出産します。子の数は4〜8頭が普通ですが、10頭以上産む例もあります。
出産の時期は、東京都23区の場合5月上旬ごろと推測されます。これは目撃情報とタヌキの成長の様子を照らし合わせることである程度の推測ができています。
出産し、子育てする場所を「巣」と呼びますが、タヌキは建物の床下を巣にする例があります。ただし、最近の建物は床下に入り込む隙間がありませんので巣になることはまずありません。床下に潜り込みやすいのは古い建物です。空き家であれば人間に遠慮する必要はありませんのでタヌキにはさらに好都合です。また、高齢者の1人暮らしなどもタヌキは神経質にならずにすみますので好条件と言えます。
23区内では他には暗渠、側溝、木の根元のうろなどを巣にした例があります。このように普通は人目につかない場所を選びますのでなかなか気づかれません。タヌキの繁殖は気づかれない例が非常に多いのです。

以上のように、「東京都23区にタヌキ家族が現れた!」というのは普通の当たり前のことであり、異常現象などではありません。


では、私たちはどう対応すればいいのでしょうか。
その簡潔な答えは「何もしなくていい」です。これを説明していきましょう。

野生動物は人間とは関係なく生きています。野生動物に対して人間が介入するのはよくありません。自然のままの状態を維持していくことが必要とされるのです。
しかし、人間と野生動物はまったくの無関係というわけにもいきません。農作物を食べる農業被害、クマが人を襲う人身被害などはあちこちで発生しています。このような何らかの被害が発生する場合は、何らかの対策は必要です。時には殺処分が選択されることもあるでしょう。ただし、その対策も自然への影響を少なくするためには殺傷よりも被害防止のための予防対策の方を優先すべきでしょう。
タヌキの場合、重大な害が発生することはまずありません。ですから、タヌキとの共存は可能なはずです。これまでもタヌキとの共存はできていました。誰にも気付かれずに東京都23区で1000頭も生息していたのですから。これらかも共存を続けることは可能なはずです。

エサを与える必要もありません。これまで人間がエサを与えなくても生きてこられたのですから今さら必要はないのです。
それにエサやりも厳密には野生動物への介入になります。エサやりによってタヌキの生存がより容易になると、生息数がさらに増える可能性が考えられます。それは自然界のバランスをくずすということではないでしょうか。

法律的な点からも見ていきましょう。
野生哺乳類、野生鳥類についての法律は鳥獣保護法です。
鳥獣保護法では野生哺乳類、野生鳥類の捕獲殺傷を原則禁止しています。捕獲等が許可されるのは狩猟の場合、有害鳥獣駆除の場合、学術研究の場合などに限られています。無許可の捕獲殺傷は鳥獣保護法違反になります。
「有害鳥獣駆除」も有害ならなんでも認められるわけではなく、経済的被害、人命に関わる被害といった重大なものに限られます。「道路をタヌキが歩いていた」程度では駆除の対象にはなりません。「タヌキが出産した」というのも自然界では普通のことであり、何らかの害が発生しない限り駆除対象ではありません。

鳥獣保護法関連の行政の窓口は東京都の環境局です。対処方法などはそちらにおたずねください(他道府県の場合も同様で、道府県庁に担当部署が必ずあります)。保健所、警察、消防署、区市町村は適切な窓口ではありませんので気をつけてください。


参考記事:いきもの通信 Vol. 461[今日の勉強]動物問題の窓口は保健所でもなければ警察でもない

東京都の環境局も、タヌキの出産に関しては「何もする必要はない」と回答するはずです。

タヌキには害はない、と書きましたが、大問題ではなくても小問題は発生します。
まず、生ゴミをあさりに来る可能性があります。これにはゴミにネットをかぶせたり、金属製のカゴに入れたりするなど対策をお勧めします(カラス対策と同じ方法です)。
靴やサンダル、ゴルフボールなど口にくわえやすいものはイヌのようにくわえて持っていってしまうことがあります。これらは庭からは片付けるべきです。

また、野生動物は何らかの感染症を持っていても不思議ではありません。さわったりしないようにしてください。


タヌキ家族が居着くのは仕方ないにしても、いつまでも居座るのか心配な方もいるでしょう。
タヌキは10月ごろまで家族で行動します。ただし、だんだんと夜行性になり、行動範囲も広がり、ばらばらに行動しだすので目撃する機会は徐々に減っていくでしょう。
10月になると親離れして周辺に散っていきますので目撃することはほとんどなくなります。
秋以降はまた元の静かな状態に戻るでしょうから、それまでちょっと我慢してください。


タヌキの子どもだけが現れ、親が見あたらない、という状況もまれに発生しますが、この場合も何もしない方がいいです。親はおそらくすぐ近くにいるはずです。昼間なら巣で寝ているのかもしれません。夜ならば人間から隠れて、どこかから子どもたちを見守っているかもしれません。
よほどの事情がない限り放置しておくべきです。


最後にもうひとつ注意点ですが、タヌキが子育て中であることはマスコミには知らせない方が無難です。タヌキがいるということが近所に広まって騒動になったりするおそれがあるからです。
また、マスコミは動物の専門家ではありません(動物番組のスタッフであっても)。タヌキの生態を理解せず、無理にせまろうとすると、タヌキは巣を放棄してしまうおそれもあります。

都会でのタヌキの出産・子育てはまだ詳細に観察されたことがありません。東京タヌキ探検隊!にとっても最重要課題です。ですので、マスコミにしらせるよりも東京タヌキ探検隊!にしらせていただくようお願いします。東京タヌキ探検隊!はタヌキや住民やご近所に十分配慮した上で調査活動を行います(配慮の結果、調査は困難という結果になる可能性はかなりあります)。
ぜひご協力ください。


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