[東京タヌキ探検隊!・今日の事件]タヌキの赤ちゃんを見つけたら
※2011年6月追記:改定記事を「Vol.520 [東京タヌキ探検隊!・今日の事件]タヌキ家族が現れたらどうすべきか? 」に掲載していますので、以下の記事よりもそちらをご覧ください。
5月29日夕方、ホームページ「東京タヌキ探検隊!」へのアクセス数が突然激増しました。なぜそれがわかるかというと、短時間にデータ転送量が集中すると、WEBデータを置いているサーバーの会社から自動警告メールが届くからです。これと同じようなことは今年の2月にも起こりました。その時は神田川にタヌキが落下した事件で、Yahoo!のニュースサイトからリンクされていました。
今回も同じではないかと推測して調べたところ、やはりそうでした。以下に記事を引用します。
<タヌキ>道路側溝の中から赤ちゃん8匹発見 市が保護 埼玉・行田
5月29日12時23分配信 毎日新聞
「埼玉県行田市持田3の住宅地内にある道路側溝の中から動物の泣き声が聞こえる」と27日、付近住民から行田市に連絡があった。職員が側溝のフタを開けて調べたところ、タヌキの赤ちゃん8匹が見付かった。一緒にいた親タヌキ1匹は姿を消したため、市は赤ちゃんを捕獲し、対処を検討している。
赤ちゃんは、捕獲作業を手伝った建設会社に一時保護された。体長20センチほどで短い黒い体毛に覆われ、段ボールの隅に体を寄せ合っていた。社員が牛乳を温めてペット用の哺乳(ほにゅう)ビンで与えたところ、元気に吸い始めた。
現在はリンクは消えていますが、掲載当日は「東京タヌキ探検隊!」へのリンクがありました。ニュースを読んだ読者の一部が「東京タヌキ探検隊!」にも来たのです。しかも今回は、Yahoo!のトップページにタヌキの赤ちゃんの写真が掲載されたため、さらにアクセスが多くなったようです。トップページの写真は午後10時過ぎまで掲載されていたようで、それ以後のアクセスは落ちついています。
この日の「東京タヌキ探検隊!」へのアクセス数は8000以上でした。普通なら1ヶ月かかって2000程度なので、爆発的なアクセス数だったことがわかります。
さて、ここからが本題となります。
まず基本知識から説明しましょう。
東京都23区での場合、タヌキの出産はゴールデンウィーク前後のようです。出産は年に1回だけ。赤ちゃんの数は普通4〜8頭です。
赤ちゃんは約1ヶ月は巣から出て来ません。その後、徐々に巣から離れるようになります。今回のニュースの写真のタヌキの赤ちゃんはまっ黒で、まるでぬいぐるみのクマのようです。これは間違いなく生後1ヶ月以内で、巣から離れることはできない段階です。
成長して巣を離れる距離が遠くなると、人目にもつくようになります。東京都23区では6月後半からタヌキの子どもたちが目撃されるようになります。このころには体色も成獣と同じ模様になっていますが、まだ毛が十分に伸びていないため、まるで子犬のようにも見えます。
もし、タヌキの赤ちゃんを見つけた場合、どうすればよいのでしょうか。
答は「何もしない」です。
野生動物は自力で生きていけます。その生活に人間が介入するべきではありません。これはタヌキに限らずあらゆる野生動物について言えることです。ですから、今回の事件もタヌキ家族を放置しておくのが正解でした。もし大雨が降って側溝に水があふれても、介入すべきではないでしょう。そのような場所を選んでいけない、ということを学習せねばならないからです。
今回の事件の現場の状況はまったくわからないのですが、住宅地で容易に人が近づける場所ならば、注意書きを掲示したり、ロープを張ったりして人が近づけないようにするべきでしょう。人間がひんぱんにのぞきこむような場所では落ちついて子育てもできません。
そもそも、タヌキを捕獲してはいけません。許可の無い捕獲は鳥獣保護法違反です。鳥獣保護法の担当は都道府県になります。また、野生哺乳類の行政の窓口も都道府県です。今回の事件の場合はいずれも埼玉県となります。
ですから、もし相談するなら埼玉県にすべきでした。記事によると、行田市の職員が出動したようですが、もし県との連絡・調整無しにやったとすればこれは法律違反です。それが善意のつもりであっても、です(タヌキの生活に介入することが善意にはなりませんし)。県に相談しなくても、せめて獣医師に相談すべきでした。
今回のように「野生哺乳類・野生鳥類がピンチにおちいっている(ように見える)」場合、どこに連絡すればいいのか迷う人が少なくないようですが、これはまったく悩む必要はなく、都道府県に連絡すればいいのです。たいていの人はここで間違った選択をしてしまいます。こういう時の連絡先は、市町村、警察、消防、保健所、駆除業者ではありません! 都道府県なのです!
ただ、今回の事件のような場合、都道府県の回答も「何もする必要はありません」となることでしょう。タヌキが住宅地で子育てをすることは何ら異常なことではないからです。
今回の事件は多くの人の関心を引きましたが、いろいろと間違った対応をしてしまった残念な事件だと言わざるをえません。タヌキにとっては悲しい結果です。
まあ、タヌキの赤ちゃんを見つけてしまったら誰でもびっくりしてしまうのはわかりますが、正しい対処方法について助言できる人がまったくいなかったことはとても不幸なことでした。こういうちょっとした知識をもっと多くの人に知っていただきたいです。