Vol. 581(2014/7/13)

[東京コウモリ探検隊!]コウモリ観察にナイトビジョンは使えるか?[結論]使えません!

タイトルですべてを語ってしまいましたが、そういうことです(笑)。

では、順番を追って説明しましょう。

今年のアブラコウモリ探索でバットディテクターを導入したことは既に書いた通りです。バットディテクターはコウモリ観察には非常に有効な道具です。
ですが、超音波は聞こえるが、姿が見えない…ということもよくありました。すぐそこにいるのに見えない、というのはもどかしいことです。
そうこうしているうちに思いついたのが「暗視装置」を使うことです。ネットで早速調べてみるといろいろな種類があることがわかりました。高いものから安いものまで…。
ちなみに暗視装置は一般的には「ナイトビジョン」と呼ばれることが多いようなので、以下ではそう書くことにします。

さっそくナイトビジョンを買って試したいところですが、(貧乏なので)そう高価なものは買えません。調べてみると「トイザらス」(楽天市場店)で「ナイトビジョン赤外線スコープ」なるものを売っていることがわかりました。値段は1万円もしません。東京コウモリ探検隊!の隊員が買うかもしれないことを考えると、なるべく安い方がいいでしょう。また、もしこの商品が使えなければ、他の高額な商品もおそらく使えないだろうことも予想していました。とにかく試してみないことには何もわかりません。
ということでこれを購入しました。

外見はこんな感じです。


いろいろなスイッチ類がついているようですが、ほとんどダミーです(笑)。
実際に使えるのは上面中央に並んでいる「電源」「色変化(色フィルター?)」「近距離/長距離モード」「フォーカス(ダイヤル)」「アジャスター(ダイヤル、接眼部のモニターの左右位置の調整)」だけです。
対物側のセンサーは単眼です。真ん中の筒状のものがそれです。左右に2つあるのは赤外線ライトです。
接眼側には縁にゴムがついていますが、眼鏡をかけていると邪魔なので外しています。簡単に外れます。
それにしてもでかいです。コウモリ調査で荷物が増えるのは本当は歓迎できません。

で、さっそく実地で使ってみたわけですが…。

まず最初にわかったのが、視野角が非常に狭いことです。横20度ぐらいしかありません。これは「手を伸ばして握りこぶし1つ=10度」換算で求めています。
むむう…。20度は狭いです。
相手が動かない動物ならそれでもいいのですが、コウモリはあちこちひらひらと素早く飛び回ります。20度の枠の中にそう簡単に入ってくれるはずがありません。多数のコウモリが高密度で飛んでいればいいのですが、現実は1頭か2頭が飛んでいるということがほとんどです。

もうひとつ、赤外線ライトが10mも届かないらしいこともわかりました。カタログスペックでは15mとなっています。
もし赤外線ライトが遠くまで届くならば、ちょっと離れて観察すればコウモリを確認できるかもしれません。ですが、10mも届かないようではその手も使えません。

つまり、これなら肉眼の方がまし!という結論になったのでした。

ということは、高額なナイトビジョンも役には立たないだろうことも推測できます。他のナイトビジョン製品も視野角が狭いからです。
例えば2倍、5倍といったの倍率のナイトビジョンがありますが、これはつまり視野角が狭くなること(=見える範囲が狭くなること)を意味します。コウモリ観察では広角の視野が必要なので、方向性が逆なのです。

せっかくのナイトビジョンだから星空を見るとどうだろう、と試してみましたが…星もよく見えません。光害の少ない場所ならもっときれいに見えるのかもしれませんが、東京都心ではダメなようです。

ナイトビジョンが期待外れだったのは残念ですが、バットディテクターという確実にコウモリを探知できる道具があれば問題ありません。当分はバットディテクターのみでの調査となるでしょう。
コウモリ観察に使えるナイトビジョンというのは技術的に難しいものなのでしょうか。そのようなナイトビジョンは軍事的な需要がありそうですから、いずれはそれが民生用として安価な製品が出てくるかもしれません。それまで気長に待つことにしましょうか。


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