[東京コウモリ探検隊!]アブラコウモリの超音波を録音してみた。そして長時間録音してみると…
東京コウモリ探検隊!は今年も相変わらず参加者が集まりませんでした。
参加者を増やすならばコウモリ調査の面白さをアピールしなければなりませんが、そのためにはいろいろな材料を準備しなければなりません。
例えば写真、動画などはとても効果的です。ですがコウモリは小さくて暗い場所をひらひら飛ぶので撮影が非常に困難です。コウモリを発見することはそれほど難しいことではないので、やはり本物を見ていただくのが一番です。
コウモリならではの材料もあります。それは超音波です。バットディテクターを使えばコウモリの超音波を聞くことができます。
バットディテクターについては既に紹介済みですのでそちらをご覧ください。
コウモリの超音波はいつでもどこでも聞けるものではありません。コウモリがいなければ聞くことはできません。そのため人に聞かせるには録音したデータを用意しておく必要があります。
録音装置としては最近は「ボイスレコーダー」がよく使われています。もともとは取材や会議の録音に使用するためのものですが、それ以外の場面でももちろん使用できます。
昔々ならカセットレコーダーを使うところですが、この10年ほどでボイスレコーダーは高性能化、小型化、長時間録音など飛躍的に進歩しています。
私が買ったのはオリンパスの「WS-805」という製品です。
選んだ理由は、Amazonで安かったからです(笑)。最近のボイスレコーダーは最低限の仕様はクリアーしているので性能的には問題ありません。細かいスペックはあまり見ずにAmazonで購入しました(メモリー容量、録音形式など最低限のスペックは見ていますよ)。
さっそく現場で録音してみました。録音データをパソコンにコピーして波形を見てみるとこんな感じになります。
(使用アプリ=WavePad(Macアプリ))
1秒間に10〜12回ほどクリック音を発声しています。耳で聞いている限りではそんなに細かくクリック音を出しているとはわかりません。
このクリック音の間隔は一定ではなく、少し長くなったり短くなったりしているのが動物らしい感じがします。
アブラコウモリの観察で重要なことのひとつが定点観察です。
定点観察は宮本はやらないことにしています。というのは、私の第一の目的は東京都23区全域での生息分布を調べることですので、1ヶ所にとどまっていることはできないからです。
ですが、例えばある場所でコウモリがいつ現れて、いつ去っていくのかを知るには定点観察が必要になります。定点観察も重要なことなのです。
定点観察で大変なのは、長時間観察をしなければならないことです。日没から夜明けまでじっと空を見つめているなんてことは苦行でしかありませんし、毎日毎日実行するなんて不可能です。そこで観察を自動化する必要があるわけです。
映像を記録するのはいろいろと難しそうです。視野が広く、暗く遠くを飛ぶ小さなコウモリを映すことができる撮影機材というのはなさそうです。
超音波ならそういう障害はありません。が、センサーカメラのように超音波を何日間も録音するような記録装置はAmazonを探しても見つかりません。
しかしよく考えてみると、手元の道具だけで簡単にできてしまうことに気付きました。バットディテクターとボイスレコーダーをつなげばいいのです。
そこでボイスレコーダーのマニュアルを読み直してみました。メモリー容量は十分で、MP3形式ならば一晩は確実に録音できます。バッテリーも一晩ぐらいは持ちます。バットディテクターのバッテリーは数十時間は使えることがわかっています。
ということは、夕方に録音を開始し、朝終了ということが可能なのです。本当は1週間ぐらい放置したまま録音できればいいんですが、まあ、とにかくやってみましょう。
さっそく試してみました。こんな感じです。
屋外に出しっぱなしにはできないので、網戸越しに録音しました。
まずは19時から24時までの5時間の録音をしてみました。
パソコンでデータを見ると…ほら、やっぱり何も録音されていない(笑)。
何ヶ所か突き出ているのはおそらくノイズでしょう。
しょうがないなあ、でもまあ念のためざっと波形をチェックしておくか…。
(録音全体を実時間で聞くことは時間の無駄ですので、音量が強い箇所だけをチェックしていきます。)
なんと、アブラコウモリの超音波が録音されているではありませんか!!
確かにアブラコウモリのクリック音です。しかも3回も録音されています。
すぐにクリック音は消えてしまったので、どうやら近くを通過しただけだったようです。実は自宅前では昨年、今年とアブラコウモリを目撃したことはなく、「コウモリはいないのかも…」と思っていました。川や池もなく、大きな緑地もないのにコウモリは来ていたのです。
※追記
この録音の2日前にも同じように録音を試してみたのですが、その時は音量レベルの設定に失敗したと思い込んでいました。後日、調べてみるとちゃんと録音されており、なんと一晩に23回もアブラコウモリが飛来していたのでした。16時から5時まで、各1時間に少なくとも1回は飛来していました。ところが2日後はたったの3回(24時までですが)。短期間に行動パターンが変わってしまうという実例になったのでした。
とりあえずこの方法でも簡易定点観測装置として使えることがわかりました。装置も録音方法も特に難しいものではありませんので、興味のある方は挑戦してみてください。あちこちで試してみるといろいろなことがわかってくるでしょう。
ボイスレコーダーは買う前にカタログで仕様をよく読んでおきましょう。特に録音可能時間とバッテリー持続時間に注意が必要です。どちらも十数時間あることを確認しましょう。最近の製品ならたいていのものがOKだと思います。
MP3形式(128kbps)で録音してもデータがかなり大きくなることには注意してください。13時間録音すると、800MBほどになります。
この簡易装置には欠点もあります。それを克服するのはかなり難しいのですが、もっと良いものを作るためにも今後の課題を書いておきたいと思います。
・バッテリーの長時間化=少なくとも1週間放置できるようにしたい。
そうなると録音データが巨大になってしまうのが問題だが…。数時間程度でファイルを分割保存できればデータ処理がやりやすくなるでしょう。
・パッケージ化=現状では線をつないだりあれこれ設定したりと準備がややこしいです。スイッチひとつで稼働できるようにしたいものです。
・データ処理の自動化=音声データからコウモリの超音波を自動検出できると便利です。
皆様からもっといいアイディアが出てくることを期待したいと思います。